大規模なプロジェクトを計画・進行する際は、精度の高い管理を行う必要があります。そこでおすすめなのが“PMBOK”というフレームワークです。
PMBOKでは、プロジェクトマネジメントの手法を「10の知識エリア」「5つのプロセス」「3つのパート」に分けて定義しており、プロジェクトマネジメントに関する知識体系として、世界中で参照されています。
本記事では、PMBOKについての概要や活用時の注意点についてご紹介いたしますので、ぜひ参考にしてください。
▼プロジェクトマネジメント(管理)の概要については下記記事でも解説しているので、あわせて参考にしてください
目次
PMBOKとは
PMBOKとは、プロジェクトマネジメントの知識や手法を体系化したものです。1987年に初版が発行され、数年に1度のペースで改定されています。最新版は2021年に発行された第7版です。
PMBOKでは、プロジェクトのQCD(品質・コスト・納期)を、プロセス管理によって維持することを目的にしています。以下のように細分化されており、それぞれの箇所に必要な知識や手法が体系的にまとめられています。
- 10の知識エリア
- 5つのプロセス
- 3つのパート
プロジェクト管理の基礎を体系的に学びたい人や、数百人規模の大規模プロジェクトを管理するプロジェクトマネージャーにおすすめの基礎知識です。
PMI・PMPとは
PMBOKに関連の深いキーワードとして「PMI」と「PMP」が挙げられます。
PMIは、PMBOKを監修している機関で、正式名称は「Project Management Institute:プロジェクトマネジメント協会」です。アメリカに本部があり、PMBOKはプロジェクトマネジメントの世界標準として知られています。
PMPは、PMIが提供している認定試験です。プロジェクト管理の経験や知識があることを証明できる試験で、プロジェクトマネジメントの実務経験がないと受験できません。また、PMIを取得したあともCCRプログラムに参加し、3年おきに資格を更新する必要があります。
参照:Project Management Professional (PMP)®
PMBOKの10の知識エリア
PMBOKの10の知識エリアでは、マネジメントの種類を10に分類して、それぞれのマネジメントに必要な知識がまとめられています。
- 統合マネジメント
→プロジェクトの方針を決定し、全体を管理します。以下の9つのマネジメントを統合してプロジェクトを遂行するための活動です。 - スコープマネジメント
→プロジェクトのスコープ(範囲)を定め、目標達成のためのタスクと成果物を定義します。要求事項の収集・WBSの作成・成果物の検証などが含まれます。 - スケジュールマネジメント
→タスクや所要時間をもとにガントチャート等でスケジュールを作成・管理します。遅延が生じた際は迅速な対処が必要です。 - コストマネジメント
→予算を設定し、予算を超過しないようコストをコントロールする活動です。 - 品質マネジメント
→プロジェクトのプロセスや、成果物の品質を管理します。成果物の品質が顧客の要求を満たしているかを検証するのも役目です。 - 資源マネジメント
→プロジェクトに必要な人材や資源を調達し、チームを編成する活動です。人材育成や資源の使用状況の管理も含まれます。 - コミュニケーションマネジメント
→ステークホルダーと円滑にコミュニケーションをする分野です。プロジェクトに関わる情報を生成・収集・配布・保管・検索・廃棄する役割があります。 - リスクマネジメント
→トラブルやリスクを予測・分析する活動です。リスクとは、プロジェクトに影響する不確定要素のことです。リスク予防と対処法の対策を立て、リスクをコントロールします。 - 調達マネジメント
→プロジェクトに必要な資源を、外部の仕入れ先と契約して選定、調達する活動です。仕入れた資源の納品進捗を管理したり、納品物を検収したりするのも役割です。 - ステークホルダーマネジメント
→顧客やチームメンバーなど、プロジェクトに関わる利害関係者(ステークホルダー)を管理します。プロジェクトに必要な情報を収集・保管・伝達する活動です。
▼WBSやガントチャートについては、下記記事で解説していますので、あわせて参考にしてください
PMBOKの5つのプロセス
PMBOKの5つのプロセスでは、プロジェクトのプロセスを5つのフェーズに分類して、それぞれのフェーズで必要な知識がまとめられています。
- 立ち上げ
→プロジェクトの認可を取得する段階です。プロジェクトの目的・目標・予算・成果物などを定義し、プロジェクト憲章の作成やステークホルダーを特定します。プロジェクト憲章とは、プロジェクトの管理者や権限、目的などを定めた計画書のことです。 - 計画
→プロジェクトの具体的な計画を立てるプロセスです。プロジェクトの流れや実際のタスク、人材を明確にします。 - 実行
→計画にもとづいて人材や資源を調達し、プロジェクトを実行するプロセスです。 - 監視・コントロール
→プロジェクトの進行を監視、コントロールするプロセスです。遅延や差異が発生した際は修正します。 - 終結
→成果物やプロセスを検証し、プロジェクトを完了します。また、プロジェクトのデータを今後に活かせる形で保存することも必要です。
PMBOKの3つのパート
PMBOKの3つのパートでは「何をもとに・どんなツール(方法)で・何を作るか」についての知識がまとめられています。
- 入力
設計書、計画書など - ツールと実践実技
入力したものをもとに成果物を作成 - 出力
成果物
PMBOKを活用する2つのメリット
PMBOKでプロジェクトマネジメントの知識を学ぶことには、以下2つのメリットがあります。
- 世界標準のフレームワーク
- プロジェクトのプロセスを管理しやすくなる
PMBOKはアメリカの機関で監修されたものであり、現在では世界中でプロジェクトマネジメントの基礎として参照されています。PMBOKを学ぶことで、世界標準のプロジェクト管理を学べます。
PMBOKという共通のフレームワークがあることで、プロジェクトのプロセスを管理しやすくなるという点もメリットです。社内でフレームワークを共有することにより、認識のずれやタスクの抜け漏れ防止につながります。
PMBOK導入によって、QCDのみを管理するのではなく、そこに至るプロセスを管理できるようになります。プロセス管理によって、プロジェクトにおける課題や改善点を洗い出しやすくなるという点もメリットです。
PMBOK活用時の3つの注意点
PMBOKを活用する際は、以下3つの点に注意が必要です。
- あくまで参考として用いる
- 中規模・小規模プロジェクト管理には不向き
- 「人」に関するマネジメント手法ではない
PMBOKはあくまで知識体系なので、そのまま現場に適用できるわけではありません。参考として用いて、あとは現場に合わせて細部を調整する必要があります。
また、数百人規模の大がかりなプロジェクトを前提としているので、小規模なプロジェクト管理や複数のプロジェクト並行にそのまま適応することは難しいです。
ただしPMBOKから必要な箇所だけを参照し、中規模・小規模プロジェクトに適用することは可能なので、PMBOKを学ぶことは決して無駄ではありません。
一方で、PMBOKはプロセス管理の手法についての知識なので、人に関するマネジメント手法を学ぶことはできません。人についてのマネジメントについては、別途学ぶ必要があります。
まとめ|プロジェクトのコストマネジメントにはTimeCrowdがおすすめ
PMBOKは、QCDを維持しながらプロジェクトをスムーズに遂行して、成功に導くための参考になる知識体系です。世界標準であるPMBOKは、プロジェクトマネジメントの基礎を学ぶのに役立ちます。
しかし、あくまで知識体系に過ぎず、そのまま現場に適用できるわけではありません。実際の現場でプロジェクトをスムーズに遂行するには、現場に合わせた調整が必要です。そのためには、まずは現在の業務状況を正確に把握することが重要です。
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