WBSとは?導入の目的や作成のメリット・手順を徹底解説

プロジェクトを円滑に進行するためには、プロジェクトの全体感の把握や、タスクの明確化・工数管理などに役立つWBSの作成が必要不可欠です。

しかし、WBSの作成経験がないプロジェクトマネージャーの方のなかには、下記のような悩みを抱えているケースも多いのではないでしょうか。

  • そもそもWBSとは何かわからない
  • 作成するメリットを知りたい
  • 具体的な作成手順を知りたい

本記事では、WBSの基礎知識や作成するメリット、具体的な作成の手順について解説します。WBSの作成を考えている方は、ぜひ参考にしてください。

▼そもそも工数管理とは何か、その重要性を知りたい方は下記記事も参照にしてください

WBSとは

WBS(Work Breakdown Structure)とは、プロジェクト全体の作業を分解し、構造化するためのフレームワークです。

  • Work:仕事
  • Breakdown:分解
  • Structure:構造化

「Work」「Breakdown」「Structure」の3つの単語の頭文字を組み合わせた言葉で、プロジェクトを計画する際に、プロジェクト全体の進捗やタスクを管理するPM(プロジェクトマネージャー)によって作成されるのが一般的です。

WBSを作成する目的

WBSを作成する最大の目的は、プロジェクトを完了するまでのタスクを全て洗い出すことで、プロジェクト全体を可視化し、作業を漏れなく進めるためです。

プロジェクトを完遂するためには、多くの細かな作業が発生します。これら一つひとつの作業をあらかじめ把握しておくことで、作業の優先順位を付けることや、適切な人員配置などに役立ちます。

WBSを作成せずにプロジェクトを開始すると、作業の漏れが発生し、スケジュールが完遂できない・遅延が発生するといったリスクがあります。プロジェクトを高いクオリティで、スケジュール通りに遂行するためにWBSの作成は必要不可欠と言えるでしょう。

WBSとガントチャートの違い

ガントチャートも、WBSと同じくプロジェクト計画時に作成されるフレームワークです。

出典:Microsoft

しかし、WBSはタスクを細分化してまとめたものであるのに対して、ガントチャートは細分化されたタスクのスケジュールまでグラフで可視化したものを指します。プロジェクトの進捗確認まで的確に行いたい場合はガントチャートの方が適しているといえるでしょう。

WBSを作成するメリット

WBSを作成する大きなメリットは、以下の4つです。

  1. プロジェクトの全体像が明確になる
  2. やるべきタスクが明確になる
  3. スケジュールが組みやすくなる
  4. プロジェクトの運用・管理がしやすくなる

1. プロジェクトの全体像が明確になる

WBSでは、プロジェクト完遂までの全タスクを構造化して捉えていきます。まずは粒度の大きいタスクを洗い出し、洗い出されたタスクを更に分解し、粒度の細かいタスクとして一枚の大きなツリーとしてまとめます。

このように一枚のツリー構造にすることによって、プロジェクトの管理者だけでなく、タスクの実行に関わる各ステークホルダーもプロジェクト全体のイメージを掴みやすくなります。

2. やるべきタスクが明確になる

やるべきタスクの洗い出しを行い、可視化することによって、PM(プロジェクトマネージャー)が全体像を把握できるだけでなく、各タスクを担当するメンバーの役割が明確になります。

3. スケジュールが組みやすくなる

細かいタスクを全て洗い出すことによって、どれくらいの人員や工数が必要なのかを把握することができます。WBSをもとにガントチャートを作成することで、プロジェクト完遂までのスケジュールを組むことができます。

4. プロジェクトの運用・管理がしやすくなる

WBSをメンバー全員に共有し更新することで、タスクの進捗状況などをリアルタイムで把握できます。期日まで終了していないタスクなどに関しては、WBSを見るだけで把握し、必要に応じてアラートをかけることができるので、プロジェクトマネージャーの負担を減らすことができるでしょう。

WBSの種類

WBSの種類には、「成果物を軸とするWBS」と「プロセスを軸とするWBS」の2種類があります。

前者の成果物を軸とするWBSは、Webサイトの構築やアプリ開発など明確な成果物がある短期的なプロジェクトで用いられ、具体的なコンポーネント(構成要素)からプロジェクトを定義します。

後者のプロセスを軸とするWBSでは、店舗の売上を昨年の10%アップするなど、成果物が明確でない中長期的なプロジェクトに用いられ、プロジェクトの階層やフェーズの観点から定義します。プロジェクトを完了するために、個別の部門で行うべきタスクを動詞形式で表していくのが一般的です。

WBSの作成ステップ

ここからは、具体的にWBSの作り方について、4つのステップに分けて解説していきます。

  1. プロジェクト完了までの全タスクを洗い出す
  2. タスクの優先順位を決める
  3. 作業を構造化する
  4. 担当者とスケジュールを決める

STEP1:プロジェクト完了までの全タスクを洗い出す

まずは、プロジェクト完了までに必要な全てのタスクを明確にしていきます。要件定義や構造設計など、詳しいタスク内容を洗い出し、更に細分化していきます。この際に、タスクを漏れなく追加すること、そして作業内容の重複を避けることに注意しましょう。

ただし、非常に細かいタスクに関しては、WBSには含めないことをおすすめします。WBSの階層が深くなりすぎ、プロジェクトの全体感の把握を妨げるためです。

STEP2:タスクの優先順位を決める

タスクの洗い出しが終わったら、一つひとつのタスクの優先順位を決めましょう。例えば、Web開発において要件定義や構造設計、情報整理が済んでいない段階で、デザインやコーディングを進めることはできません。

他のタスクを進めるために、完了しておかなければならないタスクなど、タスク同士の相互関係を意識して、作業の順序を明確にします。

STEP3:作業を構造化する

STEP2に続いて、洗い出した全てのタスクを構造化して一枚のツリーにまとめます。この際に、タスクの親子関係が成立しているか、並列するタスク同士に違和感がないかを確認するようにしましょう。

STEP4:担当者とスケジュールを決める

最後に、担当者とスケジュールを決定します。担当者はタスク一つにつき、必ず一人以上の担当者を決めておくことが大切です。担当者が決まっていないと、責任の所在が不明確になり、ミスやトラブルを招きかねません。

また、各部署や外部のステークホルダーとスケジュールの調整を行います。スケジュール管理は、WBSで完結することもできますが、ステークホルダーが多く煩雑になる場合には、別途ガントチャートを作成しましょう。

WBSを作成する際の注意点

WBSは、プロジェクト開始すぐに着手するタスクから、プロジェクト終盤で取り掛かるタスクまで、タスクごとに時系列に差が生じます。

将来的なタスクに関しては、いつ開始できるか明確でない、開発の経過によって仕様変更が発生する可能性があるなど、WBS作成時点では明瞭でないことが多くなります。そのため、WBSは計画時に作って終わりではなく、作業経過とともに、情報を更新していくことが求められます。

また、WBS計画時に漏れがあったタスクに途中で気がつき、追加の工程が発生し、スケジュールに遅延が発生するケースはよく見られがちです。タスクを漏れなく洗い出すとともに、余裕のあるスケジュールを組むことが大切です。

まとめ

本記事では、WBSの基礎知識から、導入のメリットや目的、そして具体的な作成方法について解説しました。

WBSは、プロジェクトの円滑な進行や、ステークホルダーとの調整・認識共有などに役立つフレームワークです。タスクの抜け漏れや優先順位に注意し、WBSを作成することで、高いレベルでプロジェクトを遂行することができるでしょう。

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