EVM(アーンドバリューマネジメント)とは?指標や導入のメリット、おすすめのツールを解説

プロジェクトの進捗を管理する際に、スケジュールだけを管理しているとコストがかさんでいることに気がつかず、赤字になってしまう可能性があります。赤字を防ぐには、プロジェクトの途中で常にコストを監視し続ける必要があるでしょう。

プロジェクトのコスト管理で活用できる手法が、今回ご紹介する“EVM”です。EVMとは、プロジェクト管理をスケジュールだけでなく、コストや出来高の指標を取り入れて行う手法のことです。

本記事では、EVMについて以下の項目を解説します。

  • EVMのメリット・取り入れるべき理由
  • EVMの構成要素・計算できる7つの数値
  • EVMにおすすめのツール

具体例を交えて解説しますので、ぜひ参考にしてください。

EVMとは

EVM(Earned Value Management)とは、プロジェクトをさまざまな指標で管理・分析する手法のことです。主に以下の指標が用いられます。

  • コスト
  • 出来高
  • スケジュール

従来のプロジェクト管理とは異なり、スケジュールのみを軸にするのではなく、コストや出来高などの多角的な視点でプロジェクトを管理する点が特徴です。プロジェクトが赤字にならないように、コストの調節や将来の予測ができる点がメリットとして挙げられます。

プロジェクト管理にEVMを取り入れるべき3つの理由

EVMをプロジェクト管理に取り入れるべき理由は、以下の3つがあります。

  • コスト単位のプロジェクト管理で赤字を低減
  • 現状を客観的に把握
  • 精度の高い将来予測

コスト単位のプロジェクト管理で赤字を低減

プロジェクトは「スケジュール通りに」「高品質で」終わらせただけでは、決して成功とは言えません。赤字にならないように(収支が合うように)コストを管理して目標を達成しなければいけないのです。EVMではコストが指標として加わるため、赤字が発生しないようにコストを調整できます。

現状を客観的に把握

EVMでは、以下の数値を算出してプロジェクト管理を行います。

  • プロジェクト計画時の出来高とコストの予測
  • プロジェクトの実際の出来高(進捗)とコスト

EVMを活用することで計画時に予測していた出来高やコストを、現時点での数値と比較できるので、現状を客観的に把握することが可能です。

精度の高い将来予測

EVMでは、人件費や原材料費といった投入コストを指標に含めます。プロジェクトの予算を決定したり、予算内におさまるかどうかを予測するのに活用できます。

EVMの4つの構成要素

EVMには、以下4つの構成要素があります。

  • PV:計画時の予算
  • AC:実際のコスト
  • BAC:完成時の総予算
  • EV:実際の出来高

PV:計画時の予算

PV(Planned Value)は、任意の時点までに投入が予測されるコストの合計です。人件費・設備費・材料費などがこれにあたります。任意の時点までに消費したコストがPVを上回っている場合、コストが超過していると判断できます。

AC:実際のコスト

AC(Actual Cost)は、任意の時点までに投入したコストの合計です。人件費・外注費・諸経費などが該当します。プロジェクトが計画通りに進んでいる場合、PVとACは同じ数値になります。

BAC:完成時の総予算

BAC(Budget at Completion)は、プロジェクトの目標達成に必要とされる予算の総合計です。

EV:実際の出来高

EV(Earned Value)は、実際の作業の完了度合いを、金額に換算して割り出したものです。

<計算式>

  • EV=作業完了率×BAC

例として、以下のプロジェクトにおいて3ヶ月時点でコストが予算を上回っているかどうかを、PV・AC・BAC・EVを元に計算します。

<プロジェクト開始前の情報>

  • プロジェクト名:アプリ開発
  • プロジェクト期間:6ヶ月
  • BAC(完了時の総予算):300万円

<プロジェクト開始後3ヶ月時点の情報>

  • 作業完了率:40%
  • AC(実際のコスト):200万円
  • 作業完了率(40%)×BAC(300万円)=120万円(EV)

40%完了時点でのEVは120万円ですが、実際にかかっているコスト(AC)は200万円です。

作業を40%完了するためにあてられるべき予算が200万円なのに対して、実際にかかっているコストは120万円なので、コストが予算を80万円オーバーしていることがわかります。

EVMで算出できる7つの数値と計算方法

EVMでは、プロジェクトにおける以下7つの数値を計算できます。

  • CV:コスト差異
  • SV:スケジュール差異
  • CPI:コスト効率指数
  • SPI:スケジュール効率指数
  • ETC:残作業コスト予測
  • EAC:完了時コスト予測
  • VAC:完了時コスト差異

CV:コスト差異

CV(Cost Variance)は、予算と実際のコストの差額を指します。

<計算式>

  • CV=EV-AC
    ※CVがプラスなら予算内におさまっており、マイナスなら予算をオーバーしていることになります。

<例>

  • EV(実際の出来高):120万円
  • AC(実際のコスト):200万円
    →120万円−200万円=−80万円

SV:スケジュール差異

SV(Schedule Variance)は、スケジュールの進捗状況を、金額ベースで割り出したものです。任意の時点における、実際の出来高(EV)と計画時の出来高(PV)との差でもとめられます。

<計算式>

  • SV=EV-PV

<例>
プロジェクト3ヶ月時点

  • EV(実際の出来高):120万円
  • PV(計画時の出来高):150万円
    →120万円(EV)−150万円(PV)=−30万円(SV)

この場合、プロジェクト3ヶ月目時点では150万円分の作業を完了している必要があります。しかし実際には120万円分しか完了していないので、30万円分のスケジュール差異があるという計算になります。

CPI:コスト効率指数

CPI(Cost Performance Index)とは、任意の時点における、出来高とコストの比率を示す数値です。

<計算式>

  • CPI=EV÷AC
    ※CPIが1なら計画通り、1以下ならコスト超過していることになります。

<例>
プロジェクト3ヶ月時点

  • EV(実際の出来高):120万円
  • AC(実際のコスト):200万円
    →120万円÷200万円=0.6(CPI)

上記の場合、CPIが1を下回っているため、当初の予定よりもコストが超過していることがわかります。

SPI:スケジュール効率指数

SPI(Schedule Performance Index)とは、スケジュールの進み具合について、計画時と現状を比較して予定通りかどうかを把握するための数値です。

SPIが1以上なら計画通り、1以下ならスケジュールが遅延しているという計算になります。

<計算式>

  • SPI=EV÷PV

<例>
プロジェクト3ヶ月時点

  • EV(実際の出来高):120万円
  • PV(計画時の出来高):150万円
    →120万円÷150万円=0.8

上記の場合、プロジェクト3ヶ月時点で150万円分の作業を進めている必要があります。しかし実際には120万円分の作業しか終えていないため、スケジュールが遅延していることがわかります。

ETC:残作業コスト予測

ETC(Estimate To Complete)は、完成時の総予算(BAC)と実際の出来高(EV)の差額から、プロジェクト完了までに必要な作業量を金額換算した数値のことです。

<計算式>

  • ETC=(BAC-EV)÷CPI

<例>
プロジェクト3ヶ月時点

  • BAC(完成時の総予算):300万円
  • EV(実際の出来高):120万円
  • CPI(コスト効率指数):0.6
    →(300万円-120万円)÷0.6=300万円(ETC)

上記の場合、プロジェクトの目標達成までに残り300万円分の作業量が必要という計算になります。

EAC:完了時コスト予測

EAC(Estimate At Completion)は、プロジェクト完了までにかかると予測されるコストの合計です。実際のコスト(AC)と、残作業コスト予測(ETC)の合計でもとめられます。

<計算式>

  • EAC=AC+ETC

<例>
プロジェクト3ヶ月時点

  • AC(実際のコスト):200万円
  • ETC(残作業コスト予測):300万円
    →200万円+300万円=500万円(EAC)

上記の場合、現状のペースだとプロジェクトの目標達成までに500万円のコストがかかる見込みになります。

VAC:完了時コスト差異

VAC(Variance At Completion)は、当初予定していた総予算と、完了時のコスト予測(EAC)の差額でもとめられる数値です。

プラスなら予算内、マイナスなら予算を超過している計算になります。

<計算式>

  • VAC=BAC-EAC

<例>

  • BAC(完成時の総予算):300万円
  • EAC(完了時コスト予測):500万円
    →300万円−500万円=−200万円

上記の場合、200万円の予算を超過していることがわかります。

EVMにおすすめのツール2選

EVMを活用するには、ITツールを導入するのがおすすめです。本記事では、おすすめの2つのツールをご紹介いたします。

  • LycheeRedmine
  • TimeKrei

Lychee Redmine

出典:Lychee Redmine

Lychee Redmineは、ガントチャートを用いてプロジェクト管理ができるツールです。ほかにもカンバンボード・ダッシュボード・レポートなど、プロジェクト管理に活用できるさまざまな機能を取り揃えています。

EVM機能も搭載しており、コストや出来高管理を計算するとともにグラフにしてレポーティングすることが可能です。

プロジェクトの進捗管理と、EVMを1つのツールで行いたい場合におすすめです。

参照:Lychee Redmine EVM(出来高管理)

Time Krei

出典:Time Krei

TimeKreiは、WBSやガントチャートを使ってプロジェクト管理ができるツールです。ほかにもコストパフォーマンス分析機能が充実しており、EVM機能も搭載しています。

原価構成比率や稼働率分析の機能もあるので、コスト管理を綿密に行いたい場合におすすめのツールです。

参照:Time Kreiの機能

まとめ:プロジェクトの人件費管理にはTimeCrowdがおすすめ

EVMを活用することで、プロジェクトの収支管理を厳密に行うことができるでしょう。

しかし、なかには「管理をすること自体に手間や時間をかけたくない」という企業様もいらっしゃると思います。

そのような企業様にはTimeCrowdのような、従業員がワンクリックで操作をするだけのシンプルなコスト(人件費)管理方法がおすすめです。

TimeCrowdトップページ画像

TimeCrowdでは、従業員がタスクごとに打刻したデータをもとに「どの業務に・どれくらいの時間(人件費)をかけたのか」を自動で算出することが可能です。

下記のようなレポート画面から、プロジェクトごと・タスクごと・従業員ごとの数値を確認できるため「必要以上に人件費がかかっていないか」をリアルタイムで確認できます。

とくにコストの中でも人件費の占める割合が高い、下記のようなプロジェクト型の企業様におすすめのツールです。

  • Web制作
  • コンサル
  • システム開発
  • 人材派遣 など

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