粗利率とは?計算式と目安の考え方、人件費が原価の会社の改善方法

粗利率の計算式そのものは、割り算がひとつあるだけです。それでも自社の粗利率を出そうとすると、多くの受託型の会社が最初の一歩で止まります。売上高はわかっても、売上原価にいくらを入れるべきかが決まらないからです。

在庫も仕入もない会社の売上原価は、どの時間を原価とみなすかという自社の判断で決まります。この記事では計算式と読み方を押さえたうえで、原価の大半が人件費になる会社が粗利率をどう出し、どう上げていくかを扱います。

粗利率とは?計算式と出し方、粗利・売上総利益の関係

粗利率は、売上高のうちどれだけが粗利として残ったかを示す割合です。付加価値の大きさや価格設定の妥当性を測る指標として使われます。

パソコンで数値を確認する様子

粗利・粗利益・売上総利益は同じもの

まず言葉を整理します。粗利、粗利益、売上総利益は、どれも同じものを指しています。

  • 粗利(粗利益・売上総利益)= 売上高 − 売上原価

決算書では売上総利益と表記され、現場では粗利と呼ばれることが多い、という違いだけです。読んでいる資料によって呼び方が変わるので、同じものとして扱って差し支えありません。

粗利率の計算式と数値例

粗利率は、粗利を売上高で割って100を掛けます。

  • 粗利率(%)= 粗利 ÷ 売上高 × 100

具体的な数値で見てみます。あるWeb制作案件で、売上が800万円、売上原価が500万円だったとします。

項目 金額
売上高 800万円
売上原価 500万円
粗利 300万円
粗利率 37.5%

粗利は 800万円 − 500万円 = 300万円。粗利率は 300万円 ÷ 800万円 × 100 = 37.5% となります。

Excelで計算する場合も同じです。売上高と売上原価の列を用意し、粗利の列に差額、粗利率の列に =粗利/売上高 を入れて表示形式をパーセンテージにすれば足ります。難しいのは計算ではなく、売上原価の欄に入れる数字を決めるところです。

原価率との関係 — 原価から粗利率を逆算する

粗利率と原価率は、足すと100%になる関係にあります。

  • 原価率(%)= 売上原価 ÷ 売上高 × 100
  • 原価率 + 粗利率 = 100%

先ほどの例なら、原価率は 500万円 ÷ 800万円 × 100 = 62.5% で、粗利率37.5%と足して100%になります。この関係を使えば、原価率がわかっているときは 100 − 原価率 で粗利率が出ますし、逆に目標の粗利率から許容できる原価の上限を逆算することもできます。

たとえば粗利率40%を確保したい800万円の案件であれば、売上原価は 800万円 × (1 − 0.4)= 480万円 が上限になります。見積もり時にこの計算をしておくと、投入できる工数の上限が金額で見えるようになります。

営業利益率との違い

粗利率と混同されやすいのが営業利益率です。粗利で差し引くのは売上原価だけで、販売費及び一般管理費は含めません。

  • 粗利 = 売上高 − 売上原価
  • 営業利益 = 粗利 − 販売費及び一般管理費

つまり粗利率が高くても、販管費が重ければ営業利益は残りません。粗利率は本業の稼ぐ力を大まかに見る指標で、最終的な儲けは営業利益以降で判断する、という役割分担になります。粗利率が高いこと自体は、最終的な利益が残ることを保証しません。

粗利率の目安 — 業種平均と比べても答えが出ない理由

自社の粗利率を出したあと、多くの人が次に探すのは業種別の平均値です。ただ、平均と比べても自社の良し悪しはあまり判断できません。理由は3つあります。

業種によって水準がまったく違う

小売業のように商品を仕入れて売る業態と、受託開発のように人の時間を提供する業態では、そもそも原価の構造が違います。数字の水準が違うものを並べても、比較の意味は薄くなります。

同業でも売上原価の範囲が揃わない

受託型のビジネスでは、これが最も大きな問題になります。人件費のどこまでを売上原価に入れるかは会社ごとの判断で、そこが揃っていない限り、同業他社の粗利率と自社の粗利率は比較できません。

案件に直接かかった時間だけを原価に入れる会社と、営業や管理の時間も含めて原価に入れる会社では、同じ収益構造でも粗利率の水準が変わります。どちらが正しいという話ではなく、条件が違うという話です。

なお、どの費用を売上原価に計上するかは会計処理の判断を含みます。自社の処理を変える場合は、顧問税理士や会計士に相談することをおすすめします。

公表統計は中小企業全体の平均値

業種別の粗利率は、中小企業庁の中小企業実態基本調査などで公表されています。最新のものは令和7年調査(令和6年度決算実績)の確報で、2026年6月29日に公表されました。確報は毎年6月下旬に公表されるサイクルです。

ただしこれは中小企業全体を集計した平均で、企業規模や契約形態の違いを吸収した数字です。自社の業種の水準を大まかに知る用途には向いていますが、自社が良いのか悪いのかを判定する基準にはなりません。

比べるべきは自社の過去と、案件ごとの分布

外部の平均値よりも、次の2つのほうが判断に使えます。

  1. 自社の過去実績 — 昨年度、前四半期と比べて上がっているか下がっているか
  2. 案件ごとの分布 — 同じ社内でも粗利率の高い案件と低い案件があり、その差はどこから来ているか

業種別の目安をどうしても押さえたい場合は、原価の内訳指標である人件費率のほうが業界比較に使いやすい面があります。

サービス業の売上原価は「直接工数 × 時間単価」で決まる

ここが受託型のビジネスで粗利率を出すときの本題です。

小売業や製造業であれば、売上原価は仕入伝票や材料費として外から入ってきます。ところが在庫も仕入もない会社の場合、売上原価の中身は自社の人の時間です。つまり売上原価は、伝票から拾ってくる数字ではなく、自分たちで作り出す数字になります。

ホワイトボードにフロー図を書く様子

原価になる時間と、ならない時間を分ける

計算の骨格はシンプルです。

  • 案件の売上原価 = その案件に直接かかった時間 × メンバーの時間単価

問題は、どの時間を直接かかった時間と数えるかです。実務では次のように切り分けると整理しやすくなります。

区分 具体例 扱い
直接工数 設計、開発、デザイン、原稿執筆、クライアント打ち合わせ 案件の売上原価
間接工数 社内会議、採用、営業活動、経理処理、勉強・調査 販売費及び一般管理費

この切り分けを決めておくと、粗利率の数字がぶれなくなります。逆に切り分けが曖昧なままだと、月によって原価の範囲が変わり、粗利率の推移を追っても意味を読み取れません。

時間を記録していないと原価が出せない

裏を返すと、案件ごとの時間が記録されていない会社は、案件別の粗利率を計算する材料を持っていないことになります。経理が案件別の原価を出そうとしても、配賦の根拠が作れません。

売上は請求書から集計できるのに、原価だけがわからない。この非対称が、粗利率を案件単位で見られない一番の理由になっている会社は少なくありません。

全社の粗利率では判断できない — 案件別に分解する

全社の粗利率が25%だったとします。この数字から次の打ち手を決められるでしょうか。

実際には、粗利率40%の案件と、粗利率がマイナス5%の案件が混ざって平均25%になっている、というケースがよくあります。平均値を眺めている限り、伸ばすべき案件も止めるべき案件も見えてきません。

壁に資料を貼って案件を確認する様子

会社全体が黒字なら問題ない、という状態の危うさ

受託開発を手がける株式会社CloudQは、TimeCrowd導入前、会社全体の収支は管理していたものの、案件ごとの収支状況までは管理していなかったといいます。同社の担当者は当時の問題意識をこう振り返っています。

しかし、これから会社規模を拡大していくためには、受託開発の他にも取り組まなければならないことがあります。受託開発をより効率的に行わなければならない一方で、そもそも「どの案件が赤字なのか」がわからない状況では、何も見直すことができません。

案件ごとの稼働時間を可視化したあとは、想像以上に時間をかけていたタスクが判明したそうです。時間を延長している会議や、カレンダーに記載されていない会議など、管理者側で把握できていなかった部分が見えたといいます。業務内容を見直した結果、会社全体の開発効率が15%改善したと報告されています。

案件別の粗利率の出し方

案件単位で見る場合の式は、全社の粗利率と同じ形です。

  • 案件別利益率(%)=(案件売上 − 投入人件費)÷ 案件売上 × 100

投入人件費は、前のセクションの直接工数 × 時間単価で求めた金額です。これを案件ごとに並べると、平均値では見えなかった分布が出てきます。粗利率の高い案件の共通点、低い案件の共通点を探すところから、改善の議論が始まります。

粗利率が下がる4つの原因

案件ごとの粗利率が出せるようになると、低い案件の原因を追えるようになります。受託型のビジネスで多いのは、次の4つです。

1. 見積もり時の想定工数が甘い

受注時点で原価が過小に見積もられていれば、どれだけ順調に進んでも粗利率は計画を下回ります。過去の類似案件の実績時間と比べる習慣がないと、見積もりは感覚に頼ることになります。

工数超過率((実績工数 − 見積工数)÷ 見積工数 × 100)を案件ごとに振り返ると、自社の見積もりが何割ずれる傾向にあるかが見えてきます。

2. 進行中にスコープが膨らんだ

追加の要望を都度受け入れていくと、売上は変わらないまま投入工数だけが増えます。契約時点の粗利率が悪くなかった案件が、終わってみると赤字になっているケースの多くはこれに当たります。

3. 稼働率が低い

正社員の人件費は、案件があってもなくても発生する固定費です。そのため、請求につながる時間が総労働時間のうちどれだけあるかが、粗利率を直接動かします。

  • 稼働率(%)= 請求可能時間 ÷ 総労働時間 × 100

工場や設備の稼働率とは分母も分子も違う指標なので、混同しないよう注意が必要です。人の稼働率の見方と危険水準については、後述の採算管理ガイドで整理しています。

4. 請求できていない時間がある

作業したのに請求していない時間があると、その分は原価だけが計上されます。契約範囲外の対応、小さな修正依頼、時間を延長した打ち合わせなどが積み上がっている状態です。

どれも1件あたりは小さいため、記録がないと積み上がっていること自体に気づけません。

粗利率を上げる方法 — 人件費が原価の会社の利益率改善

粗利率の改善策として一般的に挙げられるのは、仕入価格の交渉や在庫管理の徹底、製造工程の効率化です。ただ、在庫も仕入もない受託型のビジネスでは、これらはほとんど当てはまりません。原価が人の時間である会社の打ち手は、主に次の4つです。

1. 工数データを根拠に単価を上げる

値上げが通らないのは、金額の根拠を示せないからという面があります。実績の工数データがあれば、どの作業に何時間かかっているかを提示したうえで単価の話ができます。

SORA株式会社では、顧客ごとの人件費を把握して手を打つべき顧客を明確にし、導入後に売上が20%増加したと報告されています。ただし同社の代表取締役は、闇雲に請求金額を上げたわけではないと述べています。なぜ時間がかかったのかを打刻データから分析し、自社都合で時間をかけていた場合は追加請求を行わない、という運用をしているそうです。

2. 直接工数そのものを減らす

同じ成果を短い時間で出せれば、原価が下がって粗利率は上がります。手戻りの削減、テンプレート化、レビュー体制の見直しなど、案件の進め方そのものを変える打ち手です。時間の記録があれば、どの工程に時間が集中しているかを起点に議論できます。

3. 請求につながらない時間を減らす

稼働率を上げる打ち手です。社内会議の時間、報告資料の作成、契約範囲外の細かな対応などを洗い出し、削るか、請求対象に含めるかを判断します。固定費である人件費を回収できる時間が増えれば、そのぶん粗利率は改善します。

4. 粗利率の高い案件・業務に時間を寄せる

案件別の粗利率が並んだら、時間の配分そのものを組み替える選択肢が出てきます。ヴァンテージIT株式会社では、記録したデータをもとに時間の使い方を見直し、顧客と自社の成長につながる業務により多くの時間を割けるようにしたそうです。同社の事業部責任者は、利益ベースで約400万円/月(1人あたり約60万円/月)の成長につながったと述べています。

どの打ち手が効きやすいかは、収益構造によって変わります。タイムチャージ型なら請求可能時間の管理が中心で、月額固定型では契約条件の見直しが論点です。案件固定型では、見積もり精度と工数超過の検知が効きます。

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粗利率を継続的に見る仕組みのつくり方

粗利率は、一度計算して終わりでは意味を持ちません。案件が動いている最中に見えていないと、手を打つ余地がなくなります。

複数人でパソコンを開いて数値を確認する様子

記録 → 集計 → 判断の流れをつくる

必要なのは3つの段階です。

  1. 記録 — 誰がどの案件に何時間使ったかを、日々の業務の中で記録する
  2. 集計 — 時間単価を掛けて案件別の投入人件費に変換し、売上と並べる
  3. 判断 — 案件別の粗利率と、進行中案件の工数消化ペースを定期的に確認する

記録を後追いの入力に頼ると、原価の精度が落ちます。作業の開始と終了をその場で打刻する形にしておくほうが、集計をそのまま原価計算に使えて確実です。TimeCrowdのようなリアルタイム打刻のツールでは、メンバーごとに時間単価を設定しておけば、記録した時間が案件別の人件費として自動で金額換算されます。

終わってから気づく状態を抜け出す

案件が終わってから粗利率を計算しても、分かるのは結果だけです。進行中に見るなら、工数の消化ペースと進捗の乖離を追うのが実務的です。予算の消化が進捗を上回っていれば、その時点で粗利率は計画から離れ始めています。

まとめ:粗利率は案件別に見て初めて動かせる

粗利率の計算式と、受託型のビジネスで押さえるべき点を整理します。

  • 粗利率(%)= 粗利 ÷ 売上高 × 100。粗利は 売上高 − 売上原価 で、粗利益・売上総利益も同じものを指す
  • 原価率 + 粗利率 = 100%。目標の粗利率から許容できる原価の上限を逆算できる
  • 業種平均との比較では判断できない。人件費のどこまでを売上原価に入れるかが会社ごとに違うため、比べるなら自社の過去実績と案件ごとの分布
  • 在庫も仕入もない会社の売上原価は、直接工数 × 時間単価。原価になる時間とならない時間の切り分けを先に決める
  • 全社平均ではなく案件別に見る。粗利率40%とマイナス5%が混ざって平均25%になっている状態では、打ち手が決まらない
  • 改善は単価・直接工数・請求につながらない時間・案件構成の4方向。仕入交渉や在庫管理は当てはまらない

計算式を知ることと、自社の粗利率を案件単位で出せることの間には、時間の記録という距離があります。まずは案件ごとにどれだけの時間が投入されているかを把握するところからです。

自社の収益構造ではどの指標を見て、どの打ち手を取るべきかを整理したい場合は、以下のガイドが参考になります。

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