図解でわかる、
人件費から考える採算管理

その案件、本当に儲かっていますか?
プロジェクト型ビジネスで採算を左右する最大のコストは、人件費——つまり「かけた時間」です。
本ガイドは、時間(人件費)の観点から、収益構造ごとのつまずきポイントを整理します。

収益構造 — 4つの類型

あなたのビジネスはどの型?
収益構造によって、採算管理で見るべきポイントは大きく変わります。

タイムチャージ型 弁護士・税理士・コンサル 実績時間 × 単価で請求。
働いた時間が、そのまま売上になる。
月額固定型 SES・顧問・保守運用 月額固定で請求。
時間をかけるほど、利益率は下がる。
案件固定型 Web制作・受託開発・建築設計 案件・成果物単位で固定。
超過した時間のぶん、利益が削られる。
成果報酬型 広告運用代行・営業代行 成果指標に連動。
かけた時間と報酬が、直接つながらない。

気になる型を選ぶと、以降のセクションも同じ型に合わせて切り替わります。

収益構造ごとの典型課題

型によって、つまずくポイントは変わります。

請求漏れ
原因 記録が曖昧・粒度が粗い 電話対応・メール確認・移動時間など「請求しづらい」時間を記録していない
症状 実働に対して過少請求 本来請求できるはずの稼働が抜け落ち、売上が目減りする
放置すると 年間の機会損失が積み上がる 1件あたりは小さくても、年間で見ると数百万円規模の逸失利益になりうる
案件別収益が不明
原因 案件ごとの工数を分けていない 複数案件を掛け持ちしており、どの案件に何時間使ったか不明
症状 どの案件が儲かっているか不明 売上は見えても、案件ごとの時間単価の実態がわからない
放置すると 単価見直しの根拠が持てない 値上げ交渉にデータがなく、低単価案件を続けてしまう
実稼働コストの超過
原因 月額内の実稼働コストを把握していない 月額固定のため売上は安定しているが、裏側のコストを見ていない
症状 特定顧客に時間を取られすぎる 「対応範囲」が曖昧なまま拡大し、月額以上の稼働が常態化
放置すると 利益率が静かに悪化し続ける 売上は安定しているように見えて、実質赤字の契約が増えていく
契約改定の根拠不足
原因 契約更新時の実績データがない 稼働実績を定量的に示すデータが蓄積されていない
症状 値上げ交渉の根拠がない 「業務量が増えた」と感覚で伝えても、顧客に納得してもらえない
放置すると 不採算契約が固定化する 数年間同じ金額のまま、業務量だけが膨らんでいく
見積と実績のズレ
原因 見積が経験則・勘頼み 過去の実績データがなく、類似案件の工数を正確に参照できない
症状 修正・間接工数で予算超過 制作・開発以外の工数(レビュー・修正・会議)が見積に含まれていない
放置すると 赤字案件が繰り返される 見積の学習サイクルが回らず、同じパターンの赤字が発生し続ける
赤字案件の発見遅れ
原因 進行中の予算消化率が見えない 案件の途中で「今どれだけ予算を使ったか」をリアルタイムに確認できない
症状 赤字に気づくのが完了後 納品・請求の段階ではじめて「工数がオーバーしていた」と判明する
放置すると 手を打つタイミングを逃し続ける 途中でスコープ調整すれば防げた赤字が、毎回事後発覚になる
投入効率が不明
原因 投入時間を計測していない 成果で報酬が決まるため、時間を計測するインセンティブが薄い
症状 成果あたりのコスト効率が不明 案件Aと案件B、どちらが効率的かを比較できない
放置すると 非効率な案件に過剰投資し続ける 成果が出ていても、投入時間に見合わない案件にリソースを割き続ける

関連指標・KPI一覧

型ごとに、見るべき指標は変わります。

請求カバー率 請求時間 ÷ 実稼働時間 × 100

実働のうち何%を請求できているかがわかる。100%に近いほど請求漏れが少ない。

80%以下 → 2割の稼働が未請求。年間換算で大きな逸失利益

案件別 実効時間単価 案件売上 ÷ 案件投入時間

案件ごとの実質的な時間単価がわかる。契約単価と比較して安売りしていないか判別できる。

契約単価の80%以下 → 間接工数が多すぎる、または請求漏れ

顧客別LTV 顧客からの累計売上 − 累計投入コスト

長期的にどの顧客が収益に貢献しているかがわかる。注力先の判断材料になる。

LTVが低下傾向 → 単価据え置きで工数だけ増えている可能性

稼働率 請求可能時間 ÷ 総労働時間 × 100

労働時間のうちどれだけが売上に繋がっているかがわかる。営業・管理業務の比率も見える。

60%以下 → 非請求業務が多すぎる。体制の見直しが必要

契約別利益率 (月額報酬 − 月間投入コスト)÷ 月額報酬 × 100

その契約が利益を生んでいるかがわかる。コスト側の変動がそのまま利益率に反映される。

20%以下 → 稼働コストが月額に接近。実質赤字の手前

顧客別 月間稼働時間 顧客に投入した月間の合計時間

月額に対してどれだけの稼働を投入しているかがわかる。対応範囲の肥大化を検知できる。

想定稼働の120%超 → 対応範囲が契約を超えている

顧客別LTV 顧客からの累計売上 − 累計投入コスト

長期的にどの顧客が収益に貢献しているかがわかる。契約改定の優先順位をつけられる。

LTVが低下傾向 → 稼働量だけ増えて月額が据え置き

実効時間単価 月額報酬 ÷ 月間投入時間

月額契約の実質的な時間単価がわかる。同じ月額でも稼働が増えると単価は下がる。

目標単価の70%以下 → 契約金額の見直しが急務

案件別利益率 (案件売上 − 投入人件費)÷ 案件売上 × 100

その案件が儲かったかどうかがわかる。赤字案件を特定し、次の見積に活かせる。

20%以下 → 利益がほぼ出ていない。0%以下は赤字

工数超過率 (実績工数 − 見積工数)÷ 見積工数 × 100

見積に対してどれだけオーバーランしたかがわかる。見積精度の改善ポイントが見える。

20%超 → 見積手法の見直しが必要

予算消化率 消化工数 ÷ 見積工数 × 100

案件進行中に予算をどれだけ使ったかがわかる。進捗率と比較して「イエローフラグ」を検知できる。

進捗率より20pt以上先行 → 赤字リスク。即座にスコープ確認

損益分岐点 固定費 ÷(1 − 変動費率)

何時間(何円)で黒字転換するかがわかる。案件開始前のGo/No-Go判断に使える。

見積工数の80%時点で到達しない → 利益が薄すぎる案件

時間あたり成果額 成果報酬額 ÷ 投入時間

1時間の投入でどれだけの成果報酬を得られたかがわかる。案件間の効率比較ができる。

目標値の50%以下 → その案件への投入配分を見直す

案件別ROI (成果報酬額 − 投入コスト)÷ 投入コスト × 100

投入リソースに対してどれだけリターンがあったかがわかる。案件の継続・撤退判断に使える。

100%以下 → 投入コストを回収できていない

プロセスフロー × 収益構造

採算管理の5ステップは共通でも、型によって力点は変わります。

見積
案件の規模感をざっくり把握する。
記録
稼働時間がそのまま請求額になる。記録の精度が、ここでの収益を左右する。
集計
記録をまとめて請求書を作成する。記録が正確なら、ほぼ自動で完了する。
分析
顧客・案件ごとの収益性を把握する。低単価の案件が見えてくる。
改善
必要に応じて単価を見直す。
ポイント

タイムチャージ型は「記録」が最重要。記録した時間がそのまま請求額になるため、記録の精度が売上に直結します。

見積
月額に見合う稼働量を想定する。
記録
実際にどれだけ稼働したかを把握する。
集計
月額と実コストを突き合わせる。
分析
契約ごとに利益が出ているかを確認する。赤字契約があぶり出される。
改善
稼働実績データを根拠に契約金額を改定する。ここで採算を立て直す。
ポイント

月額固定型は「改善(契約改定)」が最重要。全ステップをまんべんなく回したうえで、データを根拠にした契約見直しにつなげます。

見積
ここで案件の損益がほぼ決まる。過去実績をもとに精度を高める。
記録
進行中の予算消化率を把握する。
集計
見積と実績を突き合わせる(予実対比)。
分析
赤字が確定する前に早期判断する。イエローフラグを検知する。
改善
スコープ調整や追加見積で軌道修正する。
ポイント

案件固定型は「見積」が最重要。見積の精度で案件の損益がほぼ決まるため、過去実績を見積に反映する仕組みが効きます。

見積
投入量を見立てる。
記録
投入時間を記録する。
集計
投入時間を集計する。
分析
時間あたりの成果効率を案件間で比較する。
改善
効率の低い案件のアプローチを変える。投入配分を最適化する。
ポイント

成果報酬型は前半3ステップが薄め。時間ベースの管理よりも、成果を出すためのアプローチ改善が焦点になります。

主な打ち手

採算データを見たあとに取れるアクション。
あなたの型を選ぶと、関係する打ち手が表示されます。

1
価格改定
工数データを根拠に、単価や月額の見直しを相談する

こんなとき:実効時間単価が目標を大きく下回っている

具体的には

直近6ヶ月の実効時間単価(売上÷投入時間)を算出し、目標との乖離が大きい顧客に、データを添えて改定を相談する。

直近半年の平均は月80時間で、時間あたり単価が基準を下回っています。来期から月額を改定させていただけないでしょうか。

プロセス:改善アクション 関連KPI:実効時間単価/契約別利益率
2
工数是正
非コア業務を削減し、コア業務の比率を上げる

こんなとき:稼働率が60%以下/非コア業務が工数の40%以上

具体的には

直近1ヶ月の工数をカテゴリ別に分解し、非コア工数が多ければ削減策を実行する。

例:週5時間の定例会議を隔週+非同期報告に切り替えて週2時間に削減。1ヶ月後に再計測して効果を確認する。

プロセス:改善アクション 関連KPI:稼働率/工数超過率
3
イエローフラグ対応
赤字が確定する前に異常を検知し、スコープ調整を相談する

こんなとき:予算消化率が進捗率を20pt以上上回っている

具体的には

予算消化率と進捗率を週次で確認し、消化率が先行していたら原因を特定する。赤字が確定する前に顧客へ連絡するのがポイント。

当初見積の120%に達しています。残りのスコープを絞るか、追加のお見積を出すか、ご相談させてください。

プロセス:分析・判断 → 改善 関連KPI:予算消化率/案件別利益率
4
契約条件見直し
稼働実績を根拠に、契約範囲や金額の再定義を協議する

こんなとき:月間稼働が想定の120%超を3ヶ月以上続けている

具体的には

直近6ヶ月の月間稼働を一覧化し、契約時の想定との乖離を算出。改定の選択肢を整理して、データとともに相談する。

契約時の想定は月40時間でしたが、直近の平均は月65時間です。対応範囲か月額の見直しをご相談できればと思います。

プロセス:改善アクション 関連KPI:契約別利益率/顧客別LTV
5
外注管理最適化
外注先の工数とコストを可視化し、内製/外注の配分を見直す

こんなとき:外注コストが予算想定を超えている

具体的には

外注先ごとの金額と成果物を一覧化し、可能なら工数も計測。内製と外注のコストパフォーマンスを比較する。

例:ある外注のデザイン工程が内製の1.5倍かかっていたため、次案件から内製に切り替えた。

プロセス:集計・可視化 → 改善 関連KPI:案件別利益率
6
見積精度改善
過去の見積と実績のズレを分析し、次の見積に反映する

こんなとき:工数超過率が常に15%以上/赤字案件が四半期で2件以上

具体的には

完了案件の見積工数と実績工数を工程別に比較し、ズレのパターンを見積テンプレートのバッファ係数に反映する。

例:「修正対応」が毎回見積の1.4倍だったため係数を組み込み、超過率が15%→5%に改善した。

プロセス:見積 関連KPI:工数超過率/案件別利益率
7
請求書の自動作成
工数データをそのまま請求書に変換し、請求漏れと月末作業を減らす

こんなとき:月末の請求書作成に毎回半日以上かかる

具体的には

記録データをCSVエクスポートし、請求書テンプレートに流し込む。案件名・工数・単価が自動反映され、転記ミスがなくなる。

例:手作業で集計していたチームが、CSV連携で請求書作成を「半日→15分」に短縮した。

プロセス:請求・振り返り 関連KPI:請求カバー率/月末処理工数

時間の記録は、採算管理だけじゃない

採算管理で使う「時間の記録」。
実はこの同じデータが、組織のさまざまな場面で活きてきます。

① 同じ記録が、チームごとに違う用途で活きる

時間データは多目的。見方を変えるだけで、各チームの関心に応えられます。

この案件、儲かってる? 採算管理
改善は効いた? 改善効果の測定
見積はなぜズレる? 見積精度の向上
誰の負荷が高い? 育成・配置
どこに時間が偏ってる? リソース最適化
正しく請求できてる? 請求・契約管理
▲ 同じ記録を、関心に応じて使い分け
時間データ — 全社共通の基盤

「誰が・いつ・何に・どれだけ」を、部門や職種を問わず同じ粒度で記録できる唯一の単位。

② 全社の共通言語になる

同じ「時間」という単位を持つことで、組織として次のことが可能になります。

部門間の対話が成立する

単位が同じだから、チームをまたいで比較できる

経営が全社を俯瞰できる

どこに何時間投下されているかが見渡せる

間接部門の貢献も見える

直接利益につながらない働きも、時間なら可視化できる

③ 検知と原因特定が同時にできる

「どの工程に・どれだけ」が見えるため、異常の検知と原因特定が1ステップで進みます。

1 検知

設計工程が見積の1.5倍ペース、と途中で気づく

2 原因特定

「設計工程」がそのまま原因の所在を示す

3 アクション

スコープ調整やリソース追加をすぐ判断できる

採算管理を続けるための仕組み

考え方がわかっても、日常業務で続けるには仕組みが必要です。
時間記録データを活用した実現パターンを、段階別に紹介します。

手軽に始める
スプレッドシート連携

記録した時間データのCSVをスプレッドシートやExcelに取り込み、既存のフォーマットのまま採算を管理する。

しっかり可視化
データポータル連携

時間データをデータポータル(旧Looker Studio)に接続し、案件別・メンバー別の採算ダッシュボードを構築する。

完全にカスタマイズ
専用ダッシュボード

自社の収益構造や運用フローに合わせた専用ダッシュボードを構築する。KPIアラートや請求書連携にも対応可能。

カスタム構成は、TimeCrowdのサポートオプションとしてご相談いただけます。自社の採算管理にどの構成が合うかわからない場合も、お気軽にお問い合わせください。

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