原価率とは?出し方と業種別の目安、原価の中身から考える下げ方

決算書に出てくる原価率が高いのか低いのか、判断する基準がないまま眺めている。業種の平均値を調べても、自社と同じ条件で計算された数字なのか確信が持てない。原価率という指標には、こうしたもやもやが付きまといます。

この記事では原価率の計算方法と業種別の目安を、公的統計から算出した数値で整理します。そのうえで、原価の中身が業種によってまったく違うという事実を起点に、人の時間が原価の大半を占める会社での下げ方までを扱います。

原価率とは?売上原価率との違いとこの記事の対象

原価率とは、売上高に対して売上原価がどれだけの割合を占めるかを示す指標です。売上原価率と呼ばれることもありますが、指しているものは同じです。

原価率が低ければ、売上のうち手元に残る利益の幅が広いことを意味します。ただし低ければ低いほど良いという単純な話ではありません。原価を削った結果として品質やサービス水準が落ちれば、次の受注につながらなくなります。

業種によって原価率が指すものが違う

注意したいのは、原価率という同じ言葉が、業種ごとにまったく違う中身を指している点です。

飲食業で原価率と言えば、多くの場合は売上に対する食材費の割合を指します。製造業では、材料費・労務費・経費を積み上げた製造原価が対象になります。一方で受託開発やコンサルティングのように在庫も仕入もない業種では、原価に占める人の時間の比重が大きくなります。

この記事は主に、サービス業・受託業(受託開発、Web制作、広告、士業、コンサルティング、BPOなど)を対象に書いています。飲食業の食材原価率や、製造現場の歩留まり改善については本記事では扱っていません。

原価率の出し方と計算方法【計算例つき】

原価率の計算式はシンプルです。

原価率(%)= 売上原価 ÷ 売上高 × 100

売上高1,000万円、売上原価550万円の場合、原価率は 550 ÷ 1,000 × 100 = 55% となります。

売上原価の求め方

分子になる売上原価は、モノを扱う業種では棚卸を使って求めます。

売上原価 = 期首棚卸高 + 当期仕入高 − 期末棚卸高

期首に在庫として持っていた分と当期に仕入れた分を足し、期末に売れ残った分を差し引く。これで当期に売れた分の原価が出ます。

ただしこの式が使えるのは、在庫として数えられるものを扱っている場合に限られます。棚卸のない業種では分子の作り方そのものが変わるため、この点は後半で改めて取り上げます。

原価率から販売価格を逆算する

原価率は、目標を決めて価格を設計するときにも使えます。原価が30万円で原価率を60%に収めたい場合、必要な売上高は 30万円 ÷ 0.6 = 50万円です。見積もりの下限を決める目安として使う考え方です。

原価率と粗利率・人件費率の違い

原価率と粗利率は、同じものを裏表から見た指標です。合計すると必ず100%になります。

原価率 + 粗利率 = 100%

原価率と粗利率の関係。売上原価55%と粗利45%、売上原価60%と粗利40%のいずれも合計は100%になる

原価率55%なら粗利率は45%、粗利率が40%なら原価率は60%です。どちらか一方が分かればもう一方も分かるため、原価から粗利率を計算することも、粗利率から原価を逆算することもできます。

人件費率とは分子が違う

混同しやすいのが人件費率です。人件費率は人件費を売上高で割った指標で、分子に入るのは人件費だけです。

一方の原価率は、分子が売上原価です。売上原価に人件費が含まれるかどうかは業種と会計処理によって変わるため、原価率と人件費率は重なる部分もあれば、まったく別の数字になることもあります。人件費の水準そのものを見たい場合は、人件費率や労働分配率のほうが向いています。

業種別の原価率の目安【一次統計から算出】

業種別の原価率を、中小企業庁の中小企業実態基本調査(令和7年確報、令和6年度決算実績)の統計表から算出しました。法人企業の売上高と売上原価をもとに算出した、業種別の一覧です。

業種 原価率
全業種合計 74.8%
建設業 74.9%
製造業 79.1%
情報通信業 55.1%
(うち情報サービス業) 53.5%
運輸業、郵便業 75.9%
卸売業 85.6%
小売業 70.5%
学術研究、専門・技術サービス業 45.5%
宿泊業、飲食サービス業 34.0%
(うち飲食店) 36.6%
サービス業(他に分類されないもの) 56.8%

仕入れたものをそのまま売る卸売業が85.6%と高く、専門・技術サービス業は45.5%と低い。40ポイント以上の開きがあります。

ただしこの差は、業種ごとの効率の良し悪しをそのまま表したものではありません。そもそも何が原価に含まれているかが業種によって違うためで、その中身は後半で分解します。

同じ統計の産業中分類まで下りると、より近い業種の数値も確認できます。職業紹介・労働者派遣業は57.6%、映像・音声・文字情報制作業は59.4%、広告業は71.9%、総合工事業は77.8%です。

同じ業種でも原価率の平均値がバラつく理由

業種別の平均値を複数の記事で見比べると、同じ業種なのに数字が違うことがあります。主な要因として次の3つが挙げられます。

調査の対象企業が違う

経済産業省の企業活動基本調査(2025年確報、2024年度実績)で学術研究、専門・技術サービス業の原価率を計算すると80.1%になります。同じ業種が、先ほどの中小企業実態基本調査では45.5%でした。

35ポイント近い差の主な要因は、調査対象の違いだと考えられます。企業活動基本調査は従業者50人以上かつ資本金3,000万円以上の企業を対象としており、小規模な事業者は含まれていません。企業規模が変われば、外注の使い方も人件費の計上方法も変わります。

調査年度と速報・確報の違い

統計は年度ごとに更新され、速報と確報でも数字が動きます。引用元の年度が揃っていない記事同士を比べると、それだけで差が出ます。

収録されている業種の構成が違う

大分類でひとくくりにされた業種は、中に性質の違う事業がまとめて入っています。情報通信業のなかでも、通信業の原価率は65.2%、情報サービス業は53.5%と開きがあります。

こうした事情があるため、他社平均との比較だけで自社の原価率の良し悪しを判断するのは難しいところです。統計は自社がどのあたりの水準にいるかを掴む参考として使い、判断の基準は自社の過去実績と案件ごとの分布からつくるほうが確実です。

原価率の中身は業種で別物 — 原価の内訳を分解する

ここが原価率を考えるうえで最も重要な部分です。中小企業実態基本調査には、売上原価の内訳として商品仕入原価・材料費、労務費、外注費が業種別に収録されています。売上原価に対する各費目の比率を計算すると、業種ごとの構造がはっきり分かれます。

業種 原価率 仕入・材料費/原価 労務費/原価 外注費/原価
卸売業 85.6% 93.4% 0.5% 0.8%
小売業 70.5% 94.0% 1.1% 0.8%
製造業 79.1% 58.4% 15.4% 8.9%
総合工事業 77.8% 21.8% 10.2% 51.8%
情報サービス業 53.5% 16.6% 32.5% 33.3%
技術サービス業 49.9% 12.8% 40.1% 34.8%
職業紹介・労働者派遣業 57.6% 7.4% 80.0% 2.8%

※各費目は売上原価の一部項目のため、内訳の合計と売上原価は一致しません。

業種別に見た売上原価の内訳。卸売業は仕入・材料費が93.4%で労務費0.5%、職業紹介・労働者派遣業は労務費が80.0%

卸売業では原価の93.4%が仕入原価で、労務費は0.5%しかありません。原価率を下げようとすれば、仕入単価の交渉や在庫の管理が打ち手になります。

一方の情報サービス業は、労務費32.5%と外注費33.3%を合わせて65.8%、つまり原価の3分の2近くが人の費用です。職業紹介・労働者派遣業では労務費だけで原価の80.0%を占めます。ここで仕入単価の交渉をしても、動かせる部分がほとんどありません。

原価率という同じ指標を使っていても、削る対象が正反対だということです。サービス業・受託業では、原価率は実質的に人の時間の使い方を映した指標だと考えたほうが実態に近くなります。

サービス業の売上原価は、誰の人件費を入れるかで決まる

前のセクションで見た労務費の比率は、業種ごとの人件費の多さをそのまま表したものではありません。人手を多く使う業種でも、その人件費が売上原価ではなく販管費に計上されていれば、原価の内訳には現れないからです。

つまり人の費用が原価の中心になる業種では、次の問いが避けられません。誰の人件費を売上原価に入れ、誰の人件費を販売費及び一般管理費に入れるのか。ここの扱いが原価率の水準を左右します。

人件費の置き場所で原価率は変わる

同じ統計で飲食店を見ると、労務費が売上原価に占める割合は3.8%です。ところが販管費の人件費を売上高で割ると28.3%になります。飲食店で働く人の人件費は、売上原価ではなく販管費に計上されているということです。

学術研究、専門・技術サービス業のなかの専門サービス業では、原価率が20.5%まで下がる一方、販管費の人件費が売上高の28.6%を占めます。原価率が低いのは効率が良いからではなく、人件費を原価に入れていないためだと読めます。

人件費を売上原価に入れるか販管費に入れるかで原価率が変わることを示した図。飲食店は原価率36.6%で販管費の人件費28.3%、専門サービス業は原価率20.5%で販管費の人件費28.6%

つまり原価率の水準は、人件費をどこに置くかという処理の違いでも動きます。他社と比べるときにこの前提が揃っていなければ、比較そのものが成立しません。

直接工数と間接工数で切り分ける

実務上の整理としては、売上に直接紐づく作業の時間を売上原価、社内業務や営業、移動などの時間を販管費として扱う考え方があります。案件のために動いた時間かどうかで線を引く方法です。

ただし人件費を売上原価に含める範囲は会計上の論点でもあり、業種や事業の実態によって判断が変わります。決算書への計上方法については税理士や会計士に相談したうえで方針を決めるのが確実です。

この切り分けを実際の数字に落とすには、誰がどの案件に何時間使ったかという記録が必要になります。工数データがないままでは、案件ごとに原価を配分する根拠を作れません。

全社の原価率では判断できない。案件別で見る

決算書から出てくる原価率は、全案件を合算した平均値です。この数字だけを見て手を打とうとすると、行き先が見えません。

全社の原価率が70%だったとして、その内訳が原価率40%の案件と原価率120%の案件の混在だった場合、平均の70%はどちらの実態も表していません。改善すべき対象は後者の案件であって、全社の数字を眺めていても特定できません。

全社平均の原価率70%の内側に、原価率40%の案件と120%の案件が混在している様子を示した図

コンテンツマーケティング支援を手がける未知株式会社でも、導入前は同じ課題を抱えていました。同社の執行役員は、全体の原価は把握できていた一方で、顧客ごとの1記事あたりの原価までは見えていなかったと振り返っています。記事作成はリサーチ・記事構成・執筆・確認・校正・入稿・画像選定と工程が分かれています。各工程の担当者も違うため、1記事あたりの人件費を把握する難易度が高かったといいます。

工程ごとに工数を記録するようになってからは、顧客ごとの人件費が見えるようになり、工数がかかりすぎている案件を特定できるようになりました。

原価率が高くなる原因【サービス業の場合】

原価の中身が人の時間である場合、原価率が想定より高くなる要因は物販とは違うところに現れます。主なものとして次の5つが挙げられます。

見積もり時の想定工数が甘い

受注段階で置いた工数が実際の作業量に足りていないケースです。同じ種類の案件で繰り返し起きているなら、見積もりの前提そのものを見直す余地があります。

スコープが膨らんでいる

契約時の範囲を超えた作業が積み上がっているパターンです。追加の依頼を都度受けているうちに、当初の想定を超えた工数が投入されます。

手戻り・やり直しが発生している

一度作ったものを作り直した時間は、そのまま原価に乗ります。仕様の確認漏れやレビューの遅れが原因になっている場合、工程の順序を変えることで減らせることがあります。

外注比率が上がっている

社内で対応しきれず外注に回した分は外注費として原価に入ります。内製と外注のどちらが安いかは、社内の人件費を工数ベースで換算して初めて比べられます。

単価の低い案件が増えている

原価が同じでも売上が小さければ原価率は上がります。分子ではなく分母側の問題なので、原価を削る方向では解決しません。

原価率を下げる方法 — 原価の中身から考える

一般的な原価率の下げ方として挙げられる仕入単価の交渉や在庫管理は、在庫を持たない業種には当てはまりません。原価の中身が人の時間である場合の打ち手は次のようになります。

直接工数を減らす

同じ成果物をより少ない時間で仕上げられれば、そのまま原価が下がります。狙いどころは、手戻りの削減と作業の標準化です。どの工程に時間が偏っているかが分かれば、削る対象が具体化します。

受託開発を手がける株式会社CloudQでは、稼働時間を見直した結果として開発効率を15%改善しました。タスクごとの時間を見たところ、予定を延長している会議や、そもそもカレンダーに記載されていない会議があり、管理者側で把握できていない時間が見つかったといいます。

外注と内製を工数ベースで比べる

外注費が原価を押し上げている場合、内製に戻す判断もあり得ます。ただし社内で対応する場合の人件費を工数から換算しないと、どちらが安いのか比較になりません。

案件ごとの投入工数に上限を設ける

着手前に、この案件に使える時間の上限を決めておく方法です。上限を超えた時点で気づける状態にしておけば、赤字が確定する前に対応を検討できます。

案件の受け方を見直す

原価率が構造的に高い案件が一定数あるなら、受注の条件そのものを見直す選択肢もあります。単価の引き上げや契約形態の変更は、分母側から原価率を動かす打ち手です。

原価率を継続的に見る仕組みのつくり方

棚卸をもとに計算する原価率には、決算や月次の締めが終わってからしか出てこないという弱点があります。問題が見つかるのは、その案件が終わったあとです。

案件の途中で原価率を把握するには、原価の元になるデータを日々の記録から積み上げる形にしておく必要があります。

工数を記録して案件別に集計する

誰がどの案件に何時間使ったかを記録し、メンバーごとの時間単価を掛ければ、案件別の人件費が出ます。TimeCrowdのように作業の開始と停止をその場で打刻できるツールを使えば、思い出しながら入力する方式より原価の精度が保ちやすくなります。

案件やクライアント単位でタスクを束ねておけば、案件別・顧客別の原価が自動的に集計されます。売上に紐づく作業と社内業務をタスクの分類で分けておけば、直接工数と間接工数の切り分けもそのまま数字になります。

予算と実績を比べて崩れる前に気づく

案件ごとに工数の予算を置いておくと、消化のペースが進捗を上回った時点で気づけます。予算の6割を使った段階で作業が3割しか進んでいなければ、そのまま進めれば原価率が想定を超えることが分かります。

工数予算の消費60%に対して作業の進捗が30%にとどまり、30ポイントのズレが生じている状態を示した図

終わってから赤字だったと知る状態から抜け出すには、この比較を月次より短い間隔で回せる状態にしておくことが効きます。

まとめ:原価率は中身を見ないと下げられない

原価率は売上原価を売上高で割った指標で、粗利率と足すと100%になります。計算式そのものは単純ですが、実務で使うには次の3点を押さえておく必要があります。

  • 業種平均との比較には限界がある。調査対象の企業規模や人件費の計上方法が揃っていないため、水準を掴む参考として使い、判断基準は自社の実績からつくる
  • 原価の中身は業種で別物。卸売業は原価の93.4%が仕入、情報サービス業は労務費と外注費で65.8%を占める。削る対象がまったく違う
  • 全社の原価率は平均値でしかない。案件別に分解して初めて、手を打つべき対象が見える

人の時間が原価の大半を占める業種では、原価率を下げる作業は工数を見直す作業とほぼ同じ意味になります。まずは自社の原価の内訳を確かめ、案件別に原価を出せる状態をつくることから始めると、打ち手が具体化します。

原価を記録するところから始めたい場合は、テンプレートを使うと手を動かしやすくなります。

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