夫婦で見直したい育児・家事の時間管理

働き方改革でも重要なポイントのひとつとして挙げられている、女性の社会進出。日本の人口が減っていく中で、総人口の約半数を占める女性が社会で労働力として活躍することの重要性は非常に大きいですよね。

しかしその一方で、女性本人に労働意欲があるにも関わらず、保育所の不足によって産後の職場復帰が叶わないなど、家事・育児の負担が大きく女性にのしかかっている日本の一般的な家族形態の中では、女性の結婚・出産後の働き方が制限されてしまっていることも事実です。

今回は、イギリスのエコノミスト誌で紹介された欧米諸国での事例を取り上げながら、夫婦の育児分担・時間管理を考え直すことのメリットについて考えてみたいと思います。

 

育児分担のバランス

世界各国で女性の社会進出が促されていますが、未だに多くの国で女性が家事・育児の責任とやりくりの大半を担っているというのが現状です。実際のところ、ほとんどの国が最大で3カ月の産休を母親たちに提供する一方で、父親たちに2週間以上の育児休暇を提供する国は、世界中に十数か国しかないそうです。

日本の場合、厚生労働省が平成30年に発表した調査結果によると、2015年の10月から2016年の9月の間に出産した女性のうち平均でおよそ8割が産休・育休を取得した一方で、男性の場合は全体のおよそ5%に留まったそうです。政府は2020年までに男性の育休取得率を13パーセントにすることを目標にしています。
これを踏まえ、一部の企業、例えばハウスメーカーの積水ハウスなどではすでに対策が始まっていますが、男性社員の育児休暇の取得を促すため、スムーズな引継ぎを実施するための研修などの取り組みを企業主体、男性主体で行うことが求められています。

 

男性が育児休暇を取得することのメリット

では実際に、男性が育児休暇を取得することにはどのようなメリットがあるのでしょうか。
例えば北欧の国デンマークでは、全体の90%以上の父親たちが2週間以上の育児休暇を取得しています。そのような国での事例から、父親たちに新生児の面倒を見る機会を与えることによって長期的なメリットがもたらされることがわかってきたので、その一部を紹介します。

 

メリット➀父親たちの育児意欲の向上

育児休暇が取得されやすいアメリカ、オーストラリア、イギリス、デンマークでの事例によると、育児休暇を取得した父親たちはより育児に積極的になる傾向があることがわかりました。

長い育児休暇が明けた後も、例えば、子どもにごはんを食べさせたり、積極的に着替えを手伝ったり、一緒にお風呂に入ったり、休日には遊んだり、といったことが積極的に行われているのだそうです。中でもイギリスの育休を取得した父親たちの間では、取得しなかった父親たちに比べて、幼い子どもに本の読み聞かせをする人の割合がおよそ30%も高くなりました。

 

メリット②子どもの学習能力の向上

オスロ大学が行った調査によると、父親が育児休暇を取得した子どもたち、特に娘たちは、中等教育での成績がより良かったそうです。この傾向は特にビジネスの世界で成功している父親の子どもの間で強く、これはより裕福な父親ほどより長い育児休暇を取得できることと関係があると考えられています。

 

メリット➂母親のキャリア形成への影響

育児の責任のほとんどが母親によって担われる場合、母親の賃金が下がるという傾向があります。産休や育休によって長期間職場から姿を消すことで、就労経験や昇進の機会が失われていることは想像に難くありませんね。男性も育児の責任をきちんと担うことで、このような女性のキャリア形成への悪影響は弱めることができます。

実際に男性の育児休暇の取得が積極的に促されているスウェーデンでは、男性の育児への関与が高まった結果、女性の賃金と幸福度が向上したという研究結果も出ています。例えば、母親が育児休暇明けに職場復帰するタイミングで父親が育児休暇を取得する、という例もあり、このようなケースでは、母親が仕事のペースを取り戻すにあたり非常に大きなメリットがありますよね。

 

仕事と育児と時間管理

女性も男性も、1日に与えられた時間は24時間です。そして育児のタイミングは、会社での将来的な出世に向けて業務に邁進したい時期と重なってしまうことが多いというのが実情です。その中で、日本をはじめとする多くの国では、女性が社会で活躍する機会を逃しながら育児や家事の責任を負う、という図式が長い間続いてきました。OECDが行った調査では、日本では、女性が1日あたり平均148分を家事などの無償労働に費やす一方で、男性が費やす時間は14分に留まるという結果も出ています。

 

北欧諸国では、夫婦共働き、子どもが小さいうちは保育園に預けて働く、家事と育児の責任は半分こ、という図式が標準になってきています。しかしそんな北欧の国スウェーデンでさえ、先ほど挙げたOECDの調査で、女性が1日あたり平均120分家事などに時間を費やす一方で、男性は93分に留まっています。この差を埋めるべく、お互いの行動予定をオンラインで共有できるGoogleカレンダーなどを利用して、密に連絡を取り合うことで保育園のお迎えの分担をしたり、夫婦で不満を打ち明け合う話し合いの機会を積極的に設ける、という地道な努力を行う夫婦も多いようです。

 

今回見てきたように、男性が育児により積極的に参加することで生まれるメリットはたくさんあります。1日30分からでもいいので、男性が子どもとふれあい、育児の責任をともに担う時間、もしくは、家事の負担を妻と分け合う時間を持つことをはじめてみてもいいのかもしれません。

 

近年、女性のキャリア形成のためには男性の育児への参入が非常に重要であるとし、父親たちに働きかける制度を作る国が増えており、日本もそのうちのひとつになろうとしています。男性が育児や家事にも意識や関心を向け始めること、そして、女性たちからも積極的に声を上げていくことが非常に重要なのではないでしょうか。

 

参考記事

TimeCrowdに戻る