組織の規模が変わるにつれて、業務属人化の壁に直面している企業も多いのではないでしょうか。
最初のうちは少人数で、みんながすべての業務に取り組める状況でも、次第に人数が増えるに従い分業制となり、ブラックボックスとなる業務も増えてくるものです。
本記事では、業務属人化のもたらすリスクや原因、解消方法について解説いたします。経営者や管理職など、組織を持つ立場の方はぜひ参考にしてください。
業務属人化とは
業務属人化とは、業務を担当できるメンバーが決まっており、そのメンバーに該当の業務が任せっきりになってしまう状況のことです。
業務の状況がブラックボックスとなり、他のメンバーからは詳細がわからなくなるため、一般的にはネガティブな言葉として使われます。
一方で、最初は専門知識のある担当者が業務を属人化して進めたほうが、かえって成果が上がるケースもあります。そのため、本来的には「属人化」そのものは決してネガティブな言葉ではなく、組織のフェーズに応じて使い分けが求められるということです。
ただし多くの現場では、ある程度のオペレーションが定められているケースが多く、業務属人化はネガティブな言葉として使われることがやはり多いでしょう。実際に、株式会社NEXERとオクトパスによる調査では、業務属人化により「業務の引き継ぎが困難である」と感じている企業は52.8%もあるようです。
参照:【“業務の属人化”その影響とは?】52.8%が、業務の属人化で「業務の引継ぎが困難」と回答
そのため、本記事では業務属人化のネガティブな側面を中心に解説します。
業務属人化の原因
業務属人化が起こる場合、主に下記のような原因が考えられます。
- 業務の専門性が高い
- リモートワークで業務状況が見えづらい
- 進捗共有の時間が取れない
- 評価制度が個人主義である
業務の専門性が高い
業務内容が専門的な場合、業務属人化は起こりやすくなります。
たとえばエンジニアなどの技術職では高度なスキルが求められるため、技術継承がしづらく、業務が属人化しているケースが多いでしょう。同様のスキルを持った人材が少なく、新たにメンバーを採用して属人化を防ぐことも容易ではありません。
また、デザイナーなどの業務を定型化できない職種でも業務属人化は発生します。その他にも、たとえば大企業で社内調整を行うヒューマンスキルも専門性が高い(代替ができない)スキルのひとつであると言えます。
このように、特定の専門性が求められる業務では、業務属人化が発生しやすい傾向があります。
テレワークで業務状況が見えづらい
近年ではテレワークが普及したことで、メンバーの業務状況が不透明になり、業務属人化が進んでしまうケースがあります。
今までは容易にできていた業務進捗の連絡が、オンラインでは再現が難しく、コミュニケーションのとり方に頭を悩ませる企業が増加しています。
しかし、働き方の多様化が求められる世の中で、これからはテレワークを中心としたワークスタイルが世の中のスタンダードになる可能性もゼロではありません。そのため、テレワークでも支障が出ないように、お互いの業務状況を常に可視化できる環境づくりが重要になります。
共有の時間が取れない
自分の担当業務に追われてしまい、余裕を持って業務に取り組めていない場合、共有が後回しになりがちです。上司も部下の状況を確認する余裕がなく、結局「誰が・何をしているのか」わからないというケースもあります。
最悪の場合、特定の業務が遅延することでプロジェクト全体に遅れが生じたり、クレームに繋がったりする恐れがあるため注意が必要です。
一方で、共有そのものに時間がかかることは本末転倒のため、できるだけ手間のかからない仕組みを作る必要があります。
評価制度が個人主義である
個人の成果に評価比重がある場合、チームプレーが疎かになりがちです。
これはとくに営業のような成果を図りやすい現場で起こる向があります。案件固有の情報が残されておらず、担当者が不在になると案件の背景や状況、クライアントとの関係性などがわからず、トラブルが発生してしまうのです。
スキルやナレッジを共有したり、マニュアルを残したりなど、このような組織全体のパフォーマンスが上がる取り組みが行われていない場合、業務の属人化が起こりやすくなるため注意が必要です。
業務属人化のリスク
業務属人化には、下記のようなリスクがあります。
- 業務効率の悪化
- 業務品質の悪化
- 働き方改革が進まない
- ノウハウやナレッジが蓄積されない
業務効率の悪化
業務が属人化が進んだ結果、かえって組織全体の業務効率が悪化する恐れがあります。
たとえば、メンバーAさんとBさんの2人がいて、業務①と②があるとします。
2人ともが業務①と②のスキルを持っていれば、お互いに助け合いながら業務を進められます。しかし、業務①をできるのがAさんだけで、Bさんはできない、つまり業務属人化した状態では、仮にBさんが業務②を早く終わらせたとしても、業務①を手伝うことができないため、Bさんには手待ち時間が発生してしまいます。
このように、業務属人化が進むことで組織全体の業務効率に悪影響を及ぼす可能性があります。
業務品質の悪化
業務属人化のリスクとして、業務品質の悪化が挙げられます。個人のスキルに頼ることで、品質の基準が個人に依存してしまうためです。
また、担当のメンバーが欠勤した場合には、品質を管理できる人がいなくなります。異動や退職などがあった場合には、さらに品質の維持が困難になるため、業務属人化は大きなリスクのひとつと言えるでしょう。
働き方改革が進まない
業務属人化は業務量の偏りを生み出します。特定のメンバーに負荷が偏ることで、長時間労働の原因となる恐れがあります。
また、先述したように業務効率や業務品質が向上しなければ、全社的に長時間労働が蔓延することも考えられます。離職率が高まり、さらなる悪循環に陥る恐れもあるため注意が必要です。
ノウハウやナレッジが蓄積されない
業務が属人化していても、問題なくオペレーションが回るケースもあります。
しかし、ノウハウやナレッジが社内で蓄積されず、さらなる発展や効率化が生まれづらくなるというリスクもあります。
とくに市場変化が激しい分野では、ひとつひとつの業務改善の差が勝負を左右するものです。業務を担当していたベテラン社員が抜けて、経験の浅い若手社員に引き継がれることになれば、技術力の差で遅れをとる可能性もあります。
一見、今は問題ないように見えても、中長期的に見れば大きなリスクになるため、早めに対策を検討したほうがよいでしょう。
業務属人化の対策や解消法
業務属人化を解消するには、主に下記の方法が挙げられます。
- 業務担当・業務時間を見直す
- マニュアル・品質規格書を作成する
- 情報共有の仕組みを作る
- 定期的にチェックを行う
- コミュニケーションの頻度を見直す
業務担当・業務時間を見直す
業務属人化を解消するには、まずは業務の担当者とその業務時間を見直すことが重要です。
チーム内の全ての業務を洗い出して「どの業務を・誰が担当しているのか」「どれくらい時間をかけているのか」「代わりにできそうな人はいないのか」を確認しましょう。
一度整理をすることで、属人化している業務を特定して「誰に負担が偏っているのか」「誰が業務に余裕があるのか」などが明らかになります。
業務量の調査には、TimeCrowdのような業務可視化ツールの活用がおすすめです。タスクの開始時と終了時にワンクリックで打刻をするだけで「誰が・どの業務に・どれくらい時間をかけているのか」を計測できます。計測したデータの集計は不要で、リアルタイムで可視化されます。
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マニュアル・品質規格書を作成する
業務属人化は、マニュアルや品質規格書を作成することである程度防ぐことができます。
この際のポイントは、誰でも理解ができる言葉で記載することです。ドキュメントやチェックリスト、動画などのメンバーが確認しやすいフォーマットで作成しましょう。
これらがあれば、担当メンバーが不在の場合でも業務を進めることができるため、品質にバラつきが出ることも少なくなるでしょう。
情報共有の仕組みを作る
業務の属人化は、個人が気をつけるだけで解決できる問題ではありません。
先述したTimeCrowdのような業務可視化ツールを導入したり、Stockのような情報管理ツールを導入したりなど、属人化を防ぐ仕組み作りが重要になります。
その他にも「初めて取り組む業務で、今後再び誰かが行う可能性のある業務はすべてマニュアルに残す」「定期的に業務配置を転換する」ことなども有効です。
▼情報共有におすすめのツールについては下記の記事を参考にしてください
定期的にチェックを行う
業務時間を見直したり、マニュアルがあった場合でも、それらを定着させて属人化を完全に防ぐことは容易なことではありません。さまざまな対策を試みたうえで、定期的にチェックを行う必要があります。
「業務の偏りが生まれていないか」「マニュアル通りの手順で業務が行われているか」「担当のメンバーが不在でも業務が遂行されているか」など、事前に確認項目を決めておくのがおすすめです。
コミュニケーションの頻度を見直す
業務の属人化は、日頃のコミュニケーション不足の現れでもあります。
普段からコミュニケーションをとり「何か負担のある業務はないか」「新しいメンバーに引き継げる業務はないか」などを確認することで、早い段階で問題に気づくことができます。
コミュニケーションツールを変えてみたり、1on1を定期的に行ってみたりなど、メンバーとの会話の頻度を増やしてみるとよいでしょう。
業務属人化の対策におすすめのツール
業務属人化を対策するには「業務可視化ツール」「タスク管理ツール」「プロジェクト管理ツール」などのITツールの活用がおすすめです。
TimeCrowd
TimeCrowdは、チームのメンバーが「どの業務に・どれくらい時間を使っているか」を集計し、リアルタイムで業務量を把握できるツールです。
先述した通り、業務属人化を防ぐうえで業務担当者と業務時間の見直し、定期的なチェックは必須となります。TimeCrowdを活用することで、各メンバーの業務内容が一目でわかるため、業務のブラックボックス化を解消することができます。
▼(例)TimeCrowdのレポート画面
累計4,000社以上の企業にご利用いただいた実績から、各社の業務環境にあわせたカスタマイズが可能です。少しでもご興味のある方は、下記のサービス資料から詳細な機能や料金プランをご確認ください。
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出典:MITERAS
MITERASは「タイムレポート」機能と「ジョブレポート」機能を使って、業務の可視化を進められるツールです。
タイムレポート機能で社員の労働時間を把握し、ジョブレポート機能を使って、各社員が「どの業務に・どれくらいの時間を使っているか」を把握できます。
また、従業員が各アプリケーションで1分間に何回打鍵したのかを確認することも可能です。業務属人化が発生することで、逆に手が空く従業員がいる可能性もあります。この機能を活用することで、このような待機時間を削減することができます。
Asana
出典:Asana
Asanaは、デザインがシンプルで使いやすいプロジェクト管理ツールです。
Google WorkspaceやSlackなど、200種類の外部サービスと連携可能なため、すでに業務環境が整ったチームにおすすめのツールです。業務を細かく分類して「誰が・どのタスクを・どこまで進めているか」などを把握できます。
Trello
出典:Trello
Trelloは、付箋のような形のタスクシートを動かすことで簡単に業務管理が実現できるツールです。各タスクの担当者やステータスがすぐにわかるため、属人化が発生したら一目でわかるような仕組みとなっています。
特定のメンバーに業務負荷が偏っている場合は、チーム全員で把握できるため、お互いに助け合いながら業務を進めることができるでしょう。
まとめ
最初のうちは、業務が属人化していたほうが成果につながるケースも多々ありますが、ある程度の組織規模になると属人化がリスクとなることがあります。
組織のフェーズに応じて正解は異なりますが、多くの現場では業務属人化により「業務効率や業務品質の悪化」「長時間労働の誘発」といった問題が発生しているのではないでしょうか。
業務属人化は一朝一夕に解決できるものではありませんが、マニュアルや品質規格書を作成したり、情報共有の仕組みを作ったり、定期的にチェックを行ったりして、中長期的に解決する(もしくは防ぐ)試みが重要です。
「いつでも・誰でも」代わりに業務ができるように、可能な限り業務を標準化していくことを目指しましょう。