プロジェクトでは、予期せぬトラブルやリソース不足により、しばしばスケジュールの遅延が発生します。しかし、あらかじめ遅延の発生要因を把握しておくことで、クラッシング法やファストトラッキング法といった適切な手法を用いてリカバリを行うことが可能です。
本記事では、プロジェクトの遅延を引き起こす4つの原因と具体的なリカバリ方法について解説します。プロジェクトマネージャーやスケジュール管理者の方々は、ぜひ参考にしてください。
プロジェクトの遅延とは
そもそもプロジェクトとは、決められた期間内に組織が持ちうるリソースを投入して、目的とする成果物を作り上げる取り組みのことです。システム開発・コンサルティング・社内改革など、プロジェクトの形態はさまざまですが、多くのケースで細かいタスクが存在し、チームごとに分担してタスクを完了させることになります。
しかし、プロジェクトには複数のステークホルダーが介在するため、当初の計画通りには進まないケースがほとんどです。急な仕様変更やリソース不足といったアクシデントが起こり、納期までに成果物が完成しないといったことも起こりかねません。
このような事態を防ぐためにも、プロジェクトマネージャーはあらかじめ遅延の可能性について把握しておき、トラブルが発生した際に早急に対処できるように用意しておく必要があります。
▼プロジェクトとは何か、成功に導くポイントは下記記事を参考にしてください
プロジェクトが遅延する5つの原因
プロジェクトの遅延を引き起こす主な原因として、以下の5つが挙げられます。
- 要件定義が曖昧になされている
- 人員が不足している
- 進捗管理が適切でない
- 情報共有がなされていない
- 外注先との連携が取れていない
要件定義が曖昧になされている
そもそも「成果物が何なのか」が明確に定義されていない場合、プロジェクト完了までのタスクが曖昧になり、遅延が発生しやすくなります。
また、成果物が完成したとしても、クライアント側が求めているものと乖離があり手戻りが生じる可能性があります。
遅延や手戻りを発生させないためにも、プロジェクトを開始する際には必ず「要件定義書」を作成します。要件定義書を作成する際に重要なのが「5W2H」で内容を整理することです。
- Why:何のためのプロジェクトなのか
- When:いつプロジェクトが開始・終了するのか
- Where:どこまでの範囲を担当するのか
- Who:投下できる人的リソースはどれくらいなのか
- What:具体的にどのような業務が発生し何を実現するのか
- How:どのようにプロジェクトを完遂するのか(社内・外注)
- How much:どのくらいの予算が必要なのか
なお「要件定義」と「要求定義」の違いを理解しておくことも大切です。
要求定義とは、プロジェクトにおいてクライアント側の希望を確認する作業のことです。一方で要件定義とは、要求定義をもとに予算やスケジュール内で実現可能な仕様を決定して、具体的なタスクにまで落とし込む作業のことを意味します。
クライアントの要求をそのまま要件定義にするのではなく、どのような課題を解決したいのか・成果物によって何を実現したいのかといった潜在的なニーズまで読み取ることが求められます。
人員が不足している
タスクを完了させるためには、必要なスキルや経験を持った人材を適切にアサインすることが求められます。メンバーを闇雲にアサインしてしまうと、かえって業務に遅延が発生する恐れがあります。
プロジェクトマネージャーは、タレントマネジメントシステムなどを活用し、メンバーが持っているスキルや過去のプロジェクト経験について把握した上で、チームを構成する必要があります。
進捗管理が適切でない
プロジェクトマネージャーは、個別のタスクの進捗状況をリアルタイムで把握し、遅延が発生している場合は迅速にサポートを実施します。ここで注意しないといけないのが、個別のメンバーが自身の遅延をプロジェクトマネージャーに報告しない、もしくは誤った進捗を共有する可能性があることです。
メンバーは、自分の評価に関わるため、遅延について上司や他のメンバーに知られたくないと考えてしまいがちです。そのため、適切な進捗共有がなされないケースが発生します。
プロジェクトマネージャーは、進捗管理のルールをチームで共有するとともに、仮に遅延が発生した際でも他のメンバーがサポートに入ることを伝え、正しく進捗共有が行われるように努めましょう。
▼進捗管理を適切に行う方法については下記記事でご紹介しています
外注先との連携が取れていない
システム開発などのプロジェクトでありがちなのが、外注先に丸投げをしてしまい、プロジェクトの進行中に連携が取れていないことです。
双方の認識に齟齬があるのにもかかわらず、外注先が開発を進めてしまったが故に納品時に初めてトラブルが発生したことを認識するといったケースも少なくありません。
とくにプロジェクトの進行に外部企業が関わる場合には、進捗状況や現在の開発状況などに関して、こまめにコミュニケーションを取ることが必要です。
▼外注先企業との連携方法については下記記事を参考にしてください
プロジェクトの遅延をリカバリする方法
遅延の発生を確認した際には、それを素直に認めた上で、素早くリカバリの方法を見つける必要があります。ここからは、代表的なリカバリ方法である「クラッシング」「ファストトラッキング」「要件の変更」の3つの方法について解説します。
クラッシング
クラッシングとは、プロジェクトに新たな資源(リソース)を追加することで予定していたスケジュールを短縮する方法です。クラッシングを実施するためには、リアルタイムで進捗状況を把握し、人員が不足している工程をいち早く発見することが大切です。
新たな資源を追加するクラッシング法はリカバリとして有効だと一見思われますが、実際にはクリティカルパス上で実施しなければ大きな効果は見込めません。クリティカルパスとは、プロジェクトの進行で最も影響力のある連続したタスクのことを指します。
そのため「ただ人員を増加する」「機能を追加する」といった小手先のテクニックではなく、該当するタスクがプロジェクトの進捗にどれくらい影響があるのかを正しく判断した上で実施することが求められます。
また、人員を追加する際には経験の浅いメンバーであれば、かえって教育や研修に時間がかかってしまうことも考慮しなければなりません。
ファスト・トラッキング
ファストトラッキングとは、本来順番通りに行う予定だったタスクを、同時並行で実施することでスケジュールを短縮する方法です。ファスト・トラッキングは序盤の工程で遅延が発生した際に、後工程のスケジュールにも遅れが生じないように応急処置として実施します。
序盤の遅延を巻き戻すには効果的ですが、ファストトラッキングの実施にはいくつか注意しなければいけない点があります。一つ目は、前工程の業務にミスが見つかれば、同時に進行していた後工程にも影響がおよび、前工程と後工程の両者に作業のやり直しが発生する可能性が生じる点です。
両者に遅延が発生した場合は全体のスケジュールに大きな影響を及ぼすため、ファストトラッキングは慎重に行う必要があります。また、複数のタスクが同時並行で進むためにプロジェクトの管理者は進捗管理やコミュニケーションの負荷が非常に大きくなります。
要件の変更
プロジェクトの遅延が深刻な場合、実現が可能な範囲で要件を変更する手段もあります。例えば、クライアントの希望ではあるが、必ずしもシステムに実装が必要ではない機能やデザインなどの工程を変更するといった方法が挙げられます。
ただし、プロジェクトのクオリティ自体に影響を及ぼすものは変更できません。スケジュールと照らし合わせて、どのような工程を省くことができるのか、クライアント側とすり合わせを行いましょう。
プロジェクトの遅延は時間管理ツール「TimeCrowd」で原因を可視化しよう
TimeCrowd(タイムクラウド)は、国内3,500社以上に導入実績のある時間管理ツールです。タイマー形式で、タスク名を入力してスタート・ストップボタンを押すだけで「何の業務に」「どれぐらいの時間をかけたのか」を確認できます。
「チームメンバーがいま・何の業務に取り組んでいるのか」「何の業務で人手が不足していそうなのか」をリアルタイムで確認できるので、タスクの遅延にいち早く対処することができます。
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