採用活動や人事評価においては、候補者や従業員を公正かつ客観的に評価する必要があります。
しかし、人が行う評価は主観が入ってしまいがちです。公正かつ客観的な人事評価のため、従業員のデータを分析して評価を行う「ピープルアナリティクス」という方法があります。
この記事では、ピープルアナリティクスのメリットやプロセス、注意点について解説します。
ピープルアナリティクスに用いるデータや、実際の活用事例なども解説しているので、ぜひ参考にしてください。
目次
ピープルアナリティクスとは
ピープルアナリティクスとは、従業員に関するデータを分析して企業の課題解決に役立てることです。主に採用や配属・教育・評価などの人事分野で活用され、「HRアナリティクス」や「タレントアナリティクス」とも呼ばれます。
採用・配属・教育の分野は、これまで担当者の経験や勘によって行われることが多くありました。しかしピープルアナリティクスに取り組むことで、人事評価の属人化を防ぎ、客観的かつ公正な判断を下すことに役立ちます。
実際にGoogleやMicrosoftといった有名企業でもピープルアナリティクスを人材活用に役立てており、世界的に需要が高まっています。
ピープルアナリティクスを行うメリット
ピープルアナリティクスは、企業側と従業員側の双方にメリットがあります。ピープルアナリティクスがもたらすメリットについて、以下より解説します。
企業側のメリット
企業側にとっては、ピープルアナリティクスを行うことで判断基準が明確になり、人事評価や採用活動などの意思決定が素早くなるというメリットがあります。また、組織の混乱や余計な議論を減らすことにも役立ちます。
統一された明確な判断基準によって客観的な人事評価が可能となり、従業員からの信頼を得やすくなるという点もメリットです。
従業員側のメリット
ピープルアナリティクスは、従業員にとってもメリットがあります。データに基づいて人事評価が行われるようになるので客観性と公平性があり、従業員にとっては人事評価や配属に納得ができるという点がメリットです。
適切に評価してもらえるという信頼感が持てるので、積極的なスキルアップや生産性の向上にもつながります。
ピープルアナリティクスで用いるデータ
ピープルアナリティクスで用いるデータには、大きく分けて以下の3つがあります。
- 従業員の属性についてのデータ
- 従業員の行動についてのデータ
- オフィスに関するデータ
具体的にどのようなデータを活用してピープルアナリティクスを行うのかについて、1つずつ解説します。
従業員の属性についてのデータ
ピープルアナリティクスでは、以下のような従業員の属性データが分析対象となります。
- 従業員の年齢、性別
- 所属部門
- 勤怠
- 人事評価
- 保有スキル
従業員の行動についてのデータ
ピープルアナリティクスでは、就業中の従業員の行動について、以下のようなデータを収集して分析します。
- PCの使用時間
- インターネットの閲覧履歴
- メールや電話の履歴
上記のデータを分析して、従業員本人が力を発揮しやすいプロジェクトやタスクにアサインをし、パフォーマンスの向上に役立てます。
また、以下のような行動データも分析の対象です。
- 自席にいる時間
- 会議
- 外出時間
上記のデータを分析することで、従業員の業務量や貢献度を明確にできます。
また、業務時間を明確にするためにおすすめなのが、タスクごとの所要時間を計測するという方法です。
TimeCrowdのような時間管理ツールを使うことで、タスクごとの所要時間を計測できるため「誰が・どのタスクに・どれくらい時間をかけているのか」を把握することができます。
タスクごとの所要時間がわかれば、ボトルネック(時間のかかるタスク)や、メンバーごとの業務量の偏りを把握し、改善することができます。
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オフィスの利用状況に関するデータも、ピープルアナリティクスの分析対象です。
- エレベーターの混雑状況
- 会議室の利用状況
- 複合機の利用状況
- 冷暖房の使用状況
これらのデータを収集して分析することで、増設するべき設備がわかるようになり、オフィスの利便性や快適性の向上に役立ちます。
ピープルアナリティクスの活用方法
ピープルアナリティクスは、主に以下のシーンで活用できます。
- 採用
- 配属、教育
- 離職予防
ピープルアナリティクスの分析結果を活用できる場面について、具体的に解説します。
採用
ピープルアナリティクスは、採用活動の場で活用できます。社内で活躍している人材のデータを分析することで「どのような人材を採用すれば良いのか」という計画が立てやすくなるのです。
採用におけるピープルアナリティクスで対象となるデータは、社内で活躍している人材の応募書類や面接での質疑応答・スキル・適性検査の結果などです。
また、選考過程の最適化のためにデータ分析をすることもあります。選考に用いたエントリーシートの設問と、実際に合否を決定するために判断材料とした設問を比較して精査し、合否の判断につながるような効果的な設問の設定に役立てることが可能です。
配属、教育
従業員の配属を決定する際に、従業員の来歴や保有スキル・資格・実績・適性検査の結果などが分析対象となります。
これらのデータをピープルアナリティクスで分析することで、能力を発揮しやすい部署やプロジェクトに配属することが可能です。
また、分析結果をもとに本人の適性に合わせた教育を行うことで、さらに能力を伸ばしてパフォーマンスの向上を期待できます。
離職予防
ピープルアナリティクスは、従業員の離職防止にも活用できます。
ピープルアナリティクスを活用して本人の適性に合う部署に配置をしたり、適切な教育を行ったりすることでパフォーマンスを発揮しやすくなり、職場への定着率の向上につながります。
人事評価もピープルアナリティクスを活用して公正に行うことで、従業員の不満を低減し離職の防止にもつながります。
ピープルアナリティクスのプロセス
ピープルアナリティクスは、以下のプロセスで行います。
- データ収集
- 目的の設定
- データ分析
- 施策の立案、実施
データ収集の段階では、データ収集の期間やフォーマットを定めておくことが重要です。データを収集できたら課題を洗い出し、解決の目標を設定します。
このプロセスは、データから課題を洗い出す手法です。課題がすでに洗い出されている場合は、以下のプロセスでピープルアナリティクスを行います。
- 課題を明確にする
- 仮説を立てる
- データ収集・分析
- 解決策の立案・実行
ただ闇雲にデータを眺めているだけでは、時間がかかってしまいます。データをもとに仮説を立てるのではなく、先に課題を明確にして仮説を立ててからデータ収集を行いましょう。
ピープルアナリティクスを行う際の注意点
ピープルアナリティクスを行う際には、以下の点に注意が必要です。
- 個人情報の取り扱い
- データの客観性
- 担当者の分析スキル
ピープルアナリティクスは従業員の属性データや人事評価データといった個人情報を取り扱うので、慎重さやセキュリティが重要となります。
ピープルアナリティクスを行う際の注意点について、詳細に解説します。
個人情報の取り扱い
ピープルアナリティクスでは、従業員の属性や行動、人事評価といった機密性の高い個人情報を取り扱うことになります。人事データをはじめとする繊細なデータなので、データ収集の目的をきちんと説明して、従業員の同意を得ることが重要です。
データの漏洩や紛失などを避けるため、事前にデータの取り扱い方法や保管方法を決めておき、セキュリティを確保する必要があります。
また、闇雲にデータを収集したのでは効果的な分析がしにくくなります。取り扱うデータが膨大になりますし、データ収集の意義を従業員にも理解されにくくなってしまいます。ピープルアナリティクスでは、課題解決に必要なデータのみを収集するのがポイントです。
データの客観性
ピープルアナリティクスはデータによって客観的な分析・評価をするためのものですが、収集したデータが常に客観的で公正だとは限りません。
PCの使用履歴やインターネットの閲覧履歴などは客観的なデータですが、人事評価は人が行うものなので主観が入っていることを念頭に置いておく必要があります。
担当者の分析スキル
データを集めても、分析スキルが追いついていないと、正しく分析を行うことは難しくなります。
ピープルアナリティクスでは膨大なデータを扱ううえ、分析のための専門知識も必要です。担当者にデータサイエンスや統計分析のスキルを身につけさせるため、研修や勉強会を開催してスキル取得の支援を行いましょう。
ピープルアナリティクスの事例
ピープルアナリティクスを課題解決や採用活動に導入している事例を、2つ紹介します。
Google社ではピープルアナリティクスチームが設立されており、人事における意思決定のためにデータを提供しています。また「Googlegeist」というアンケートを毎年実施しており、従業員の意識調査を行っています。
同社では2004年から、当時すでに数千人を超えていた従業員に対してアンケートを実施して評価制度の改善に役立ててきました。
質の高いアンケートを作成するためには従業員アンケートの目的を明確にしたうえで、以下のポイントを重視するように推奨されています。
- 簡潔でわかりやすい表現
- くだけすぎた表現にしない
- できるだけ短くする
- 不要な不安や期待を抱かせない
- 回答者が答えられるような質問にする
また、アンケートの実施後は昨対や他部署の数値と比較して違いや共通点を見つけて、改善点を洗い出すことが重要なようです。
参照:Google(従業員アンケートを実施する、分析的アプローチを採用する)
ソフトバンク
ソフトバンク社では、採用活動でピープルアナリティクスの活用を推進しています。
同社では新卒社員の採用活動において、IBMのAI製品であるIBM Watsonを2017年より導入しています。候補者のエントリーシートをIBM Watsonで分析することで各項目がスコアリングされ、客観的かつ公平に候補者を評価することが可能です。
また、人事担当者がエントリーシートを確認するための時間を75%程度削減できると見込まれており、人事担当者の負荷軽減も期待されています。
参照:SoftBank(新卒採用選考におけるIBM Watsonの活用について)
まとめ
ピープルアナリティクスとは、従業員の属性や行動などに関するデータを集計して分析し、人事評価や企業の課題解決に役立てる手法です。
データを基にすることで客観的かつ公正な判断を下しやすくなり、採用活動や働き方改革の改善にも役立てられます。
また、人事評価や業務上の課題解決のために、タスクごとの所要時間を計測して分析するのもおすすめです。タスクの所要時間計測には、TimeCrowdのような時間管理ツールを導入しましょう。TimeCrowdはタスクの開始時と終了時にワンクリックで打刻するだけというシンプルな操作性で「誰が・どのタスクに・どれくらい時間をかけたのか」を計測できます。
タスクごとの所要時間を見える化することで、時間がかかりすぎているタスクを特定して、業務プロセスや業務効率の改善に役立てることが可能です。
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