基礎からわかる「ERP」とは?導入のメリット・デメリットや運用の流れを徹底解説

市場競争が高まる昨今では、企業内部に蓄積されたデータを活用して、迅速な経営判断に活かすことが求められています。

ERPシステムを導入することで、さまざまなデータを一元管理して、業務フローの効率化や経営判断のデータ収集などに役立てることができます。

本記事では、とくにERPシステムの導入を検討している企業の担当者に向けて、ERPの基礎知識からシステムを導入するメリットやデメリット、運用に至るまでの手順について解説いたします。

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ERPとは

ERPとは、企業経営で必要になる「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」といったリソースを一元管理して効率的に活用するという考え方や、そのシステムのことを意味します。英語の「Enterprise Resource Planning」の頭文字を取った言葉で、日本語では「企業資源計画」と訳されます。

国内ではERPシステムの導入が進んでおり、ERPといえば「統合基幹業務システム」のことを意味するのが一般的です。

ERPと基幹システムの違い

ERPと似た言葉に「基幹システム」がありますが、システムの目的や対象範囲が異なります。

基幹システムとは、人事部や総務部などの特定部門の業務を効率化することを目的としており、独立したシステムとして存在するのが一般的です。そのため、部門をまたいだデータのやり取りをする場合には、システム間での連携が必要になります。

一方でERPは、組織全体のデータを一元管理して企業経営に役立てることを目的としています。いわゆる「統合型」のシステムであるため、部門をまたいだデータ連携が可能であり、スピード感を持った意思決定を実現できます。

ERPが企業に必要な理由

急速なグローバル化に伴い市場競争が激しくなるなかで、企業にはスピード感のある経営判断が求められるようになりました。

かつては経営者の経験や勘などで経営判断が行われる時代もありましたが、競合性が高まった現代の市場においては、データドリブンな経営判断が重要だと感じている企業様も多いのではないでしょうか。

ERPのような組織全体のデータを一元管理できるシステムは、昨今の企業経営には欠かせないものであり、データの収集や連携作業の手間を省けることから、多くの企業様で導入されています。


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ERPを導入するメリット

企業がERPを導入するメリットとしては、大きく下記の4つが挙げられます。

  1. データを一元管理できる
  2. 業務効率を高めることができる
  3. タイムリーで正確な経営判断が下せる
  4. 内部統制を強化できる

データを一元管理できる

ERPを導入する最大のメリットは、社内に点在するデータを一元管理できることです。

  • 財務情報
  • 会計情報
  • 人事情報
  • 販売情報
  • 在庫情報

たとえば上記のような、ありとあらゆるデータをひとつのシステムで管理できるため、別のシステムで確認をしたり、データを連携加工させたりする手間がなく、経営状況を簡単に正しく可視化することができます。

業務効率を高めることができる

部門をまたいだデータを個別で管理する必要がなく、煩雑な業務が不要になるため、各部門での業務効率化も期待できます。

たとえば、販売データや在庫データを会計データと紐付けることで、売上や仕入が発生した際に、即座に会社の帳票に反映されます。部署間で情報のやり取りをする必要がないため、データの入力ミスや二重入力といった人為的ミスを大幅に減らすことができるでしょう。

また、RPA(Robotic Process Automation)などの自動化技術と組み合わせることで、事務作業を省き、従業員がコア業務に集中できる環境を作ることができます。

タイムリーで正確な経営判断が下せる

必要なタイミングで、部門を超えたデータをすぐに確認できるようになります。

データをリアルタイムで確認することで、経営陣がいつでも・すぐに意思決定を行うことができるでしょう。また、人為的ミスの少ないデータを収集できるため、問題を正しく把握して、適切な経営判断を下せるようになります。

内部統制を強化できる

ERPを導入することで、内部統制を強化できることもメリットのひとつです。

内部統制とは、不正行為や法律違反といった不祥事を防ぐためにルールや仕組みを構築することを意味します。

たとえば「従業員が売上を過小に報告することで不正に利益を得る」といった事態が発覚すると、会計上のダメージだけでなく、社会的な信頼の失墜や顧客からの信用を失ってしまいますよね。内部統制では、このような事態を「未然に防ぐ」「発生したらすぐに検知する」ことができるように、組織全体の情報をモニタリングできるシステムが求められます。

ERPを導入することで、組織全体のデータを一元管理して「経営資源が適切に利用されているのか」を可視化できるため、ガバナンスの強化につながります。

また、アクセス権限を管理することで機密情報の流出を防いだり、操作ログを確認して不正行為を監視したりできます。

ERPを導入するデメリット

一方でERPを導入することで、懸念されるデメリットとしては下記の3点が挙げられます。

  1. システムの導入や運用にコストがかかる
  2. データの整理が必要になる
  3. ノウハウや知見を持った人材が必要

システムの導入や運用にコストがかかる

ERPの導入にはサーバーの構築やソフトウェアのライセンス取得、データの移行などの費用が発生します。

企業の規模感によっては導入費用が数百万円〜数千万円単位に及ぶこともあり、費用対効果を見極めながら導入可否を決定することが求められます。

また、導入後にもサーバーやネットワークのメンテナンスなどのランニングコストが発生します。社内に人材がいない場合には外部から獲得することや、運用を外部に依頼することも検討しなければなりません。

データの整理が必要になる

ERPは即座に導入ができるわけではありません。システム間のデータ連携を行うためには、データ入力のルールを決めて連携が可能なフォーマットに書き換えなければいけません。

また、データは部署や部門を超えて社内に点在しています。そのため、どこに何のデータが収集・保管されているのかをまずは確認する必要があります。

ノウハウや知見を持った人材が必要

ERPの導入には、必要な機能の見極めやシステムの連携などに際して、知見やノウハウを持った人材が必要になります。もし社内に必要なスキルを持った人材がいない場合には、研修や外部へのコンサルなどを依頼します。

ERPの主な機能

ベンダーごとに搭載している機能は異なりますが、一般的には下記のような機能を持っています。

  • 在庫購買管理
  • 販売管理
  • 会計管理
  • 生産管理
  • 人事給与管理
  • 営業管理

近年では多くのERPで機能ごとに導入有無を決めて、自社に必要な機能のみを利用することができます。

また、これらの基本機能に加えて、データを守るためのセキュリティ機能やバックアップ機能が備わっています。

ERPの種類

ERPの種類は、主に下記種類で分類ができます。

  • オンプレミス型 or クラウド型
  • パッケージ型 or フルスクラッチ型

オンプレミス型とクラウド型

ERPを自社のサーバーに構築するか否かで「オンプレミス型」と「クラウド型」に分類することができます。

オンプレミス型では、サーバーや必要な環境を自社で管理します。カスタマイズ性に優れているため、既存システムとの連携がしやすい点がメリットです。しかし、0から構築する必要があるため、初期の開発費用や導入ハードルが高くなるというデメリットがあります。

クラウド型では、クラウド上にシステムを構築するためサーバーの構築や管理が不要になります。そのため、初期費用やランニングコストを抑えることができます。一方で情報漏洩やサイバー攻撃などのリスクは引き続き存在するため、できるだけセキュリティの高いシステムを導入する必要があります。

パッケージ型とフルスクラッチ型

必要な機能をあらかじめ搭載している「パッケージ型」と、ゼロから全てを開発する「フルスクラッチ型」の2種類でも分類することができます。

パッケージ型のERPは導入までの期間とコストを抑えられますが、企業独自の業務フローとマッチしない可能性があります。

一方のフルスクラッチ型では、企業独自のルールや慣習に合わせてゼロから開発を行います。開発の時間やコストはかかりますが、自社の業務プロセスやフローに合わせたシステムを利用できます。

また、パッケージ型のERPは下記のように細かく分類することができます。

  • 統合型
  • コンポーネント型
  • 業務ソフト型

統合型

統合型のERPパッケージは、人事・会計・販売管理・給与管理など、経営に必要な機能をすべてカバーしているものです。海外ベンダーの製品が多く、大企業での導入事例が目立ちます。

コンポーネント型

コンポーネント型のERPパッケージは、必要な機能を組み合わせて導入できるものです。拡張性が高く、必要に応じて機能を追加できるため、導入時には予算を抑えつつスモールスタートが可能になります。

業務ソフト型

業務ソフト型のERPパッケージは、特定の業務に特化した製品です。中堅中小〜ベンチャー企業での導入実績が多く、部署や部門単位で導入を進めることができます。導入範囲や機能が限られているため、導入費用はパッケージ型の中でも最も安く、導入までに必要な期間も短くなっています。

ERPの導入手順

ERPの導入から運用に至るまでの手順について解説いたします。

  1. 責任者や推進チームを選定する
  2. 業務プロセスや課題を洗い出す
  3. 導入の目的を明確にする
  4. ERPベンダーを選定する
  5. 業務フローの構築、社内共有の手配
  6. テスト運用と本番リリース

STEP1:責任者や推進チームを選定する

まずはERP導入の責任者及び、推進チームのメンバーを決めます。

システムを社内に浸透させるためには、マニュアルを整備したり、適切に運用されているかを定期的に確認したりする必要があります。責任者及び、推進チームを決めることでシステムの運用が形骸化するリスクを減らせるでしょう。

また、ERPはその特質上、部署や部門を跨いだシステムの連携が欠かせません。部署や部門ごとの業務効率化につなげるためにも、複数の部署からメンバーを選出することがおすすめです。

STEP2:業務プロセスや課題を洗い出す

ERPはパッケージ型であっても、決して安価なシステムではありません。また、導入にあたって多くの人員や期間を要します。そのため、導入しても活用できなければ企業にとってはただの負担になってしまいます。

導入を検討する際には「社内でどのような課題があるのか」を整理して、「ERPの活用を通してどのように課題解決に導くのか」を明確にすることが重要です。

まずは社内の現状を把握することから始めましょう。「各部署でどのような業務が行われているのか」「業務に際して何のシステムを利用しているのか」「どこにデータが蓄積されているのか」「現状のフローではどのような問題があるのか」など、社内にある課題を洗い出します。

STEP3:導入の目的を明確にする

業務プロセスや課題を洗い出したら、解決するべき優先順位を明確にしましょう。

優先順位を決める際には、緊急度と重要度(業績へのインパクト)の2軸から検討します。とくに「どの部署の課題が深刻なのか」「具体的にどのような機能があれば解決できそうか」など、ERPの対象範囲と機能要件をある程度明確にしておきましょう。

STEP4:ERPベンダーを選定する

ERPの選定時には、複数のベンダーにお問い合わせをしましょう。ベンダーごとに得意不得意な領域や、サポート体制などは異なるため、自社の求める要望にあわせて選定をするのがおすすめです。

また、実際に製品案内を受けた際には「コスト(初期費用とランニング費用)が予算内か」「現場社員でも利用できそうな操作性か」「課題を解決できそうな機能が搭載されているか」を確認してください。

トライアル期間を用意しているベンダーも多いため、導入前には一度試してみておくことをおすすめします。

STEP5:業務フローの構築、社内共有の手配

社内にうまく浸透できるように業務フローの構築と社内共有の手配を進めます。

とくに初めてのツールでは操作方法に慣れないことから、現場では混乱が発生してしまうものです。「いつ・誰が・どのような操作を行うのか」を明確にしたり、不明点が発生したときの窓口を用意したり、よくある質問をシートにまとめたりなど、事前の手配が重要になります。

STEP6:テスト運用と本番リリース

ERPの導入前にはテストサーバーを利用して、テスト環境にて一度リリースをするのが一般的です。デモ環境を提供してもらい、実際に操作をしてみて問題がないかを確認してみてください。

また、テスト環境で問題がなければ、そのまま本番環境にてリリースが行われます。STEP5の「業務フローの構築や社内共有の手配」も済んでいる状態であれば、実際に業務での運用を始めましょう。

導入直後はトラブルが発生する可能性もあるため、責任者や推進チームの稼働リソースを空けておき、すぐにERPベンダーにお問い合わせができる体制にしておきましょう。

おすすめのERPシステム

最後に、代表的なERPシステムを4つ紹介します。

  • マネーフォワード クラウドERP
  • クラウドERP freee
  • ZAC
  • HUEシリーズ

マネーフォワード クラウドERP

出典:クラウドERP「マネーフォワード クラウドERP」- バックオフィス業務を効率化

会計から人事労務など、バックオフィス業務のシステムを組み合わせて導入できるコンポーネント型のERPです。

必要なシステムを1つから導入することができるため、会社の成長に合わせてシステムを追加することが可能です。中小企業やベンチャー企業など、シリーズ累計で10万社以上の企業で導入されています。

請求書や経費のやり取りなどをクラウド上で行えるため、テレワークの推進やペーパーレス化に貢献します。また、電子帳簿保存法・インボイス制度などの法改正にもいち早く対応しているため、導入後にシステムを見直す必要がありません。

クラウドERP freee

出典:クラウドERP freee 

会計・経理にまつわる業務の効率化を実現するクラウド型のERPシステムです。

会社の規模感や必要機能に応じて「プロフェッショナル」「エンタープライズ」の2種類の料金プランが用意されており、業種業界や会社の規模感を問わず多くの企業に導入されています。

クラウドERP freeeでは、ただ業務を効率化するだけでなく「ペーパーレスでデータを一元管理し、チームで協業しやすい」ことをテーマにシステムが設計されています。

そのため、バックオフィス側と事業部側の双方の負担を軽減して、スピード感を持って業務を進めることができます。

ZAC

出典:クラウドERP ZAC 

ZACは、案件・契約・プロジェクト単位で業務進行する業種に適したクラウドERPシステムです。

「システム・IT業」「広告・イベント・クリエイティブ業」「士業・コンサルティング業」など、それぞれの業種ごとに発生する課題に対応した機能を提供しています。

また、案件管理に必要な機能も備わっており、リアルタイムでの損益管理や赤字案件の早期発見にも役立ちます。プロジェクトや案件が同時並行で複数進行しており、それぞれを正確かつ素早く可視化したいと考えている企業様におすすめです。

HUEシリーズ

出典:大手企業向けERP「HUE」|株式会社ワークスアプリケーションズ

HUEシリーズは、株式会社ワークスアプリケーションズが提供する大手企業向けのERPシステムです。

大手企業2,000社以上の導入実績に基づき、数多くの標準機能を搭載しています。機能は必要に応じて組み合わせることが可能です。

SaaS型のサービス・ECサイト・BIツールなど、他のツールとも連携をすることで、より幅広いデータを用いて迅速な経営判断を下すことができます。

ERPを導入して組織の業務改革を促進しよう

本記事では、ERPとは何かといった基礎知識から、導入のメリット・デメリット、導入の流れについて解説しました。

ERPは自社の課題やニーズに合わせたシステムを導入して、目的を明確にしたうえで正しく運用することで、企業の競争力を高めることに寄与します。

メリットだけでなく、コストや労力といったデメリットもしっかりと理解したうえで最適なシステムを導入しましょう。

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