リモートワークという“防災”

2018年は記録的な猛暑にはじまり、豪雨、台風、地震…と例年に比べても非常に自然災害が多い印象を受けます。

台風や豪雨などの予報が出たとき、多くの人が気になるのは交通事情。
公共交通機関が混乱する中、何時間もかけて出社した経験があるという人も多いのではないでしょうか。

筆者も会社勤めをしていた時に何度かそういった経験をしましたが、そんな時は決まって「家で仕事ができたらいいのに…」と思っていました。
そこで今回は、災害時におけるリモートワークの存在について考えたいと思います。

リモートワークとBCP

はじめに、皆さんは「BCP(Business continuity planning:事業継続計画)」という言葉をご存知でしょうか。

BCP(事業継続計画)とは、企業が自然災害、大火災、テロ攻撃などの緊急事態に遭遇した場合において、事業資産の損害を最小限にとどめつつ、中核となる事業の継続あるいは早期復旧を可能とするために、平常時に行うべき活動や緊急時における事業継続のための方法、手段などを取り決めておく計画のことです。
(引用:1.1 BCP(事業継続計画)とは – 中小企業庁

2011年に起きた東日本大震災の際、東北のみならず首都圏でも交通機能が麻痺し、多くの帰宅困難者が発生したことは記憶に新しいかと思います。
震災後も地震による直接的な被害だけでなく、大規模な計画停電などの影響によってやむを得ず業務を中止・縮小した企業も多かったのではないでしょうか。

これを機にBCPへの関心は一気に高まり、場所や時間に依存しないリモートワークという働き方にも注目が集まるようになりました。
通勤の必要がないことに加え、大規模なリモートワークの導入によって節電効果も見込めることから、災害時にも円滑に業務を継続できる働き方として期待されています。

2018年6月に総務省が発表した「働き方改革のためのテレワーク導入モデル」の中でもテレワーク(リモートワーク)導入のメリットとして「BCP(業務継続)対応」が挙げられ、自然災害以外にパンデミック(大規模な感染症の流行)対策としてもリモートワークが有効であると説かれています。

災害時に実感したリモートワークのメリット

では、筆者が実際に感じた災害時におけるリモートワークのメリットについて見ていきましょう。

1:通勤の必要がない

やはり、一番のメリットは「オフィスに通勤する必要がない」という点です。
台風や豪雨で交通機能が麻痺していても、外出をためらう猛暑の折にも、(自宅が停電さえしなければ)平常時と変わりなく業務を進めることができました。

台風や豪雨が発生するたびにニュースでは「不要不急の外出は控えるように」と警告が出されていますが、同時に通勤客でごった返す交通機関の混乱ぶりが報道されているのをよく目にします。
リモートワーク体制が整っていない場合、こうした状況が社員の精神的・肉体的な負担になるだけでなく、社員が無事に出社するまで業務自体も滞ってしまいます。

あらかじめ予測できる台風や豪雨であれば、必要に応じてリモートワークに切り替えることで、社員の負担を減らしながら業務をスムーズに継続できるのではないでしょうか。
また、リモートワーク導入によって交通機関の混雑が緩和されることで、災害時の復旧が早まることも予想されます。

2:場所や時間に依存しない

もう一つのメリットとして、「働く場所や時間に依存しない」という点が挙げられます。これはリモートワーカーだけでなく、会社にとっても大きなメリットとなるでしょう。

もしオフィスや社員が住んでいる地域が被災したとしても、リモートワーク体制が整っていれば非被災地域の社員が業務を継続することができます。
実際に、9月に起きた北海道胆振東部地震の時も一緒に働く仲間が被災しましたが、代わりに他地域のメンバーがフォローすることで滞りなく業務を進めることができました。

また、リモートワークを行う場合はあらかじめオンラインでデータを共有していることが多いため、オフィスや自分が住む地域が被災してデータが損なわれた場合のリスクヘッジにもなります。

さいごに

いかがでしたでしょうか。
場所や時間にとらわれないリモートワークは、自然災害大国と呼ばれる日本において非常に有意義な働き方の一つではないかと筆者は考えます。

しかし、こうした緊急時に素早く対応するためには、日頃からリモートワーク体制を整えて順応しておくことが大切です。

働き方改革が進む中、リモートワークの導入は生産性やワークライフバランスの向上、人材確保といった面にばかり注目されがちですが、“リモートワーク=防災”という観点から考えてみることも必要ではないでしょうか。

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