悩めるパパたちのワーク・ライフ・バランス

ワーク・ライフ・バランスというと、女性にスポットが当たることが多いですよね。女性の社会進出が課題となっている日本では自然なことなのかもしれません。かといって、ワーク、すなわち仕事と、ライフ、すなわち家庭生活やプライベートの両方のバランスを良くしていくための努力が必要なのは、女性に限られたことではありません。

また、私も以前の職場で、子どもの運動会のために申し訳なさそうに半日のお休みを取るパパや、終業後の飲み会の場で、「今日はコレ(薬指の指輪を指す)がコレ(鬼の角のジェスチャーをする)なので、すみません…」と上司に苦笑いで伝え、飲み会から早めに抜け出す工夫をしているパパの姿を見てきました。

今回は、ワーク・ライフ・バランスが推進される中で見過ごされがちな、男性の置かれている状況と本音を探ってみたいと思います。またその指南書として参考にした、「男たちのワーク・ライフ・バランス」(ヒューマンルネッサンス研究所)という本を紹介します。

男たちのワーク・ライフ・バランス

この本では、子どもが同じ保育園に通う父親たち何人かに集まってもらい行った座談会などの記録をもとに、男性が育児に参加することについて、当事者の目線でまとめられています。

Part1~3では、さまざまな職種の方が、仕事をしながらどうやって育児に参加しているのか、育休をどうやって取得したのか、もしくは取得したいけどできずにいるのか、そして家事をどうやりくりしているのかなどの実状と本音を垣間見ることができる構成になっています。

Part4には、父親タイプ診断チャートという心理テストのようなものがあります。今回の調査に基づいて作成されたもので、診断の結果として、世のパパを➀積極的に育児に参加したいパパ、➁参加したいけど模索中なパパ、➂仕事に一直線なパパ、➃どうしていいかわからずにおろおろしているパパ、➄亭主関白なクラシックパパ、⑥そして受身なパパという6つのカテゴリーに分類しています。そしてそれぞれのタイプのパパに対して、知っておくべき制度や社会の状況などを交えた著者からのアドバイスがまとめられています。

そして最後のPart5はまとめの章であり、男性のワーク・ライフ・バランスを推進する著者からのメッセージが込められています。またコラムでは、海外の育児事情、たとえば他国の育児休暇取得率とその理由や、働き方改革の実施のされ方とその背景などが紹介されています。育児休暇制度や、育児中の時短勤務などの制度が、より多くの男性に活用されてほしい。そして、男性も女性も平等に仕事と育児の両方に打ち込める社会になってほしい。本全体を通して、そのような著者の願いが伝わってきます。

今まさに育児・家事と仕事の両立に苦しんでいる方にとっては、共感できる点が多く、読むとストレス解消になるかもしれません。また、まだまだパパ友というものが少ないであろう日本社会で孤立しがちなパパにとっても、同じ悩みを持つ人がたくさんいることがわかり、少し気が休まるのではないでしょうか。更には、女は家庭、男は仕事、という従来の考え方が強い方は、この本を読むと、変わりつつある日本社会の現状に目から鱗が落ちるかもしれません。

家庭と仕事の板挟み?男性の本音とは?


この本を読み進めるにつれて、男性の意外な本音に驚かされます。
子どもが幼く最も手がかかる時期と、男性の働き盛りの時期は重なってしまうという悩ましい状況。子どもの成長を見守りたいし、愛する妻の手助けだってしたい。でも、自分が仮に育休などを取っている間に、同僚がどんどん成果を上げ、昇進してしまったら…。自分が昇進の機会を逃してしまったら…。などと、男性も、家庭と仕事の狭間で苦しんでいることが伝わってきます。

また、男性の家事・育児への積極的な参加を後押しするような社会の制度が整っておらず、また、男性が家事・育児に積極的に参加することへの理解がまだまだない、という現状も伝わってきます。

その中でも、多くの共働き夫婦が実際に活用しているサポートや制度の紹介があったので、いくつか紹介します。

制度・サービス

➀育児休業(育休)

男性が育児休業を取るというイメージはあるでしょうか?
育休とは、1歳に満たない子どもを養育する労働者が、その子が1歳になるまでの間、休業できる制度のことです。しかし子どもが1歳を超えていても、保育所に入所できないなどの事情があれば、2歳になるまで休業を延長することもできます。

実際に日本で育児休暇を取得している人は、2017年度に5.14%となっており、特に金融・保険業や情報通信業で取得している人の割合が高かったそうです。

実際のところ、育休を取得したい時期の3ヶ月から半年前に申し出る人がほとんどで、育休取得中は無給となり、育児休業基本給付金の給付を受けることになります(雇用保険への加入が必須)。詳しくはこちらで確認できます。

実際のところ、育休取得中にキャリアが中断されることへの不安や、人事評価への影響が気になる方が多く、男性の育休取得率がなかなか高まらない原因ともなっているようです。しかし、男性社員が育休を取得することで、他の若手社員の育休に対する意識の向上に貢献したとして評価が上がったという事例も紹介されています。

➁ベビーシッターサービス

利用者の自宅で子どもの面倒を見てくれるサービスです。共働きだけど、子どものお迎えや世話を気にせずに仕事に打ち込みたい!という夫婦に人気のサービス。子どもの寝かしつけまでまで頼める手厚いサポートなだけに、利用料もそこそこかかりますが、会社によっては割引制度などを受けることができることもあるようです。

➂ファミリーサポートセンター・地域自治体のファミリーサポートサービス

地域で育児や介護の援助を助けたい、という人が会員となり、援助してくれる制度です。例えば保育園までの送迎や、学校の夏休みなどに子どもを預かったりもしてくれます。お近くのファミリーサポートセンターをこちらから探すことができます。

➃病児保育

保育園に毎朝子どもを送っていくパパ・ママにとって一番の恐怖が、子どもの突然の体調不良。熱があったり具合が悪かったりすれば、保育園では預かってもらえなくなり、夫婦どちらかが仕事を休んで看病をしなければならなくなります。とはいっても、大切な業務が入っていて休めないことだってありますよね。そんなときに役に立つのが病児保育です。

受け入れ人数に限りがあるためインフルエンザが流行する時期などには利用が難しい場合もあるようですが、こういったサポートもありがたいものですね。

終わりに


働き方の見直し方が推進される日本で、ワンオペ育児に苦しむママたちや、仕事にばかり熱中してしまっているパパたちの数は、まだまだ多いのではないかと思います。

また、共働きで仕事と家庭を両立させよう!と意気込んだものの、あまりの現実の厳しさに、夫婦のどちらかがキャリアをあきらめざるを得ない、という状況に直面した方も少なくないのではないでしょうか。

他国の育児休業の取得率の高さや社会制度改革の話も気になりますが、国によって国が発展してきた経緯も社会制度も文化も異なります。他国で成功している例が、必ずしも参考になるとは限りません。

今回ご紹介した「男たちのワーク・ライフ・バランス」の中で紹介された男性たちの本音の中で、「どちらかというと、突発的な出来事に対応できるようになった方がありがたい」という声がありました。

現在の日本の状況では、日本の働き盛りの男性にとっては、長期間会社の戦力から外れるリスクと不安を伴うような制度より、子どもの急な発熱などといった非常事態に対応できるよう、平日に定時で帰れる月に一回ファミリーサービスのためという理由で休める、などといった制度が整った方が、精神的な負担も少なく活用されやすいのかもしれません。

今回ご紹介した「男たちのワーク・ライフ・バランス」は10年前に出版された本ですが、今の日本の状況はどうでしょうか。また、次の10年で、日本人の働き方はどう変わっていくのでしょうか。

また、一言にワーク・ライフ・バランスと言っても、ちょうど良いバランスがどこにあるのかは、個人によって異なります。一人ひとりが模索し、著者が言うように、国も会社も、そして日本社会に生きる人たちも、みんながwin-win-winになれるといいですね。

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