働き方改革の第一歩は「休み方改革」から

働き方改革が推進される現在、非正規雇用の待遇改善や長時間労働の是正など、さまざまな取り組みが行われています。
しかし、こうした柔軟で多様性のある働き方を実現する上では、まず日本人の「休み方」を見直すべきではないかという考えもあるようです。

そこで今回は、働き方改革の第一歩として考えたい「休み方改革」についてご紹介します。

日本人は休むのが下手?

2019年のゴールデンウイークは10連休ということが大きな話題となりましたが、皆さんはどのように過ごしましたか?
思い切って海外旅行を楽しんだという人もいれば、あまりにも長い連休を持て余してしまったという人もいるのではないでしょうか。

日本人は昔から「休むのが下手だ」といわれていますが、実際に世界の国々と比べてみても、日本人の有給休暇取得率は過去3年間最下位となっています。
他の人が働いているのに自分だけ休むのは気が引ける、休みたくても周りの目を気にしてしまう…など、“休むこと”に対してどこか罪悪感や抵抗感を抱いている人が多いのかもしれません。

しかし、疲れやストレスが溜まった状態でダラダラと仕事を続けていて、本当に良いパフォーマンスが発揮できるでしょうか?
むしろ積極的に休暇を取ってリフレッシュすることで、仕事への活力や新たなアイデアが生まれ、結果的には生産性の向上につながる場合もあるのではないかと思います。

「休むこと」を積極的に推進する新たな制度

休みを取ることに抵抗がある日本人の気質や日本社会の風土を見つめ直すかのように、最近では積極的な休暇取得を推進する企業や自治体の動きが活発化しています。今回は、その一部をご紹介したいと思います。

■ワーケーション

ワーケーションとは、2000年代にアメリカで生まれた「ワーク(仕事)」と「バケーション(休暇)」を組み合わせた造語です。
リモートワークを利用した旅先などでの就業を認めることで社員のリフレッシュを促し、生産性向上やワーク・ライフ・バランスの実現を目的としています。

日本では、2017年に日本航空(JAL)がワーケーションを導入したことによって一躍知名度を上げました。
JALではこれまでにもテレワークを実施していましたが、あくまでも勤務地は自宅やサテライトオフィスなど特定の場所に限られていました。ワーケーションではその制限を取り払い、帰省先や国内外のリゾート地といった旅行先で仕事することを認めています。

また、企業だけでなく地方自治体もワーケーションの推進に乗り出し、和歌山県および白浜町では2015年からワーケーションの受け入れを実施。白浜町にITビジネスオフィスを設置し、民間企業の誘致を開始しました。
さらに2018年からは三菱地所と協力し、同社のテナント企業に向けたワーケーションオフィスの運営を行っています。

■サバティカル休暇

サバティカル休暇とは、長期勤続者に一定期間の休暇を与える制度のことです。企業によって取得条件や期間はさまざまですが、一般的には数カ月から一年程度と通常の有給休暇や年次休暇よりもはるかに長い休暇を取ることができます。
サバティカル休暇には使途の制限がないことも特徴的ですが、欧米ではボランティア活動や学び直しのための私費就学など、自己啓発や研鑽のために利用する人が多いようです。

日本企業でもサバティカル休暇は徐々に取り入れられつつあります。ヤフージャパンでは自己の働き方を見つめ直すことを目的に、勤続10年以上の正社員に対して2~3カ月の休暇取得を認めています。

また、ソニーでは「フレキシブルキャリア休職制度」という名称で、勤続2年以上の社員を対象とした長期休職の制度を設けています。
専門性を高めるための私費就学を目的とした休職では最長2年、配偶者の海外赴任や留学に同行し、知見や語学・コミュニケーション能力の向上を目指す休職では最長5年と、長期休職を可能にすることで継続的なキャリア形成を図っています。

このような大手企業や官民が協力したさまざまな取り組みによって、休暇取得に対する物理的・心理的なハードルが下がり、自由で柔軟な「休み方」が可能になりつつあります。

さいごに

今回のゴールデンウイーク10連休のように多くの人が一斉に休暇を取った場合、交通機関や観光地の混雑によって休暇を十分に満喫できないという事態に陥ってしまうことがあります。
しかし、今回ご紹介したような制度が広く普及し、各自が分散して休暇を取得できるようになれば、レジャーを楽しむ人が増えて消費の活性化につながるかもしれません。

個人の柔軟な働き方を実現するだけでなく、社会全体の活性化にもつながる可能性を秘めた「休み方改革」。働き方改革の第一歩は、まずここから始まるのではないでしょうか。

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