人件費とは、従業員の労働に対して支払われる給与・各種手当のことです。
近年では市場競争の激化や、最低賃金の向上などの影響から、人件費の圧迫に悩まされている企業経営者の方が多いでしょう。しかし、安易なコストカットやリストラは従業員や関係者からの信頼の低下、及び世間一般からのイメージの低下に繋がります。
本記事では、人件費削減に取り組む際の注意点、給与カットやリストラ以外の方法についてご紹介いたしますので、ぜひ参考にしてみてください。
人件費とは
人件費とは、雇用関係のある労働者に対して支払われる給料やボーナス、各種手当のことを意味します。
■人件費に含まれる一般項目
- 給料
- ボーナス(賞与)
- 資格手当や住宅手当などの各種手当
- 退職金
- 社会保険料(企業負担部分)
- 労働保険料(企業負担部分)
- 健康診断料などの福利厚生費
- 通勤費
- 社宅費用
従業員を雇用する際には、給与以外にも社会保険料や労働保険料などの各種費用が発生します。たとえば給与が30万円の従業員を雇用した場合でも、企業側は給与以上の費用を負担する必要があるのです。
人件費削減の効果
人件費の削減によって期待できる効果は下記の通りです。
- コストを削減できる
- 企業の成長につながる
後述しますが、人件費の削減にはさまざまなリスクを伴います。実施する際には慎重に取り組まれてください。
コストを削減できる
人件費は多くの企業で支出の大部分を占めるため、削減することで収支上はプラスに働くでしょう。また、給料やボーナスなどの人件費に該当する経費の削減以外にも、事務所家賃や水道光熱費などの削減にも繋がります。
費用が圧迫した結果、会社が倒産してしまえば元も子もありません。生き延びていくためには、ときには人件費削減が必要になる場面もあるでしょう。
企業の成長につながる
人件費を削減すれば固定費が減少して、利益率が向上します。増加した分の利益を新たな設備や事業への投資に回すことで、さらなる企業成長に繋げられるでしょう。
また、継続して利益を生み出せる基盤ができれば、外部から融資や調達を受けやすくなるというメリットも挙げられます。
人件費削減の注意点
人件費を削減する際には、下記のような注意点があることを必ず把握しておきましょう。
- 従業員のモチベーションが低下する
- 企業のイメージが低下する
- 売上が下がる
- 法的リスクが懸念される
後述しますが、人件費削減を行う以外の方法で収支を改善できる場合には、まずはそちらを試されてみることをおすすめします。
従業員のモチベーションが低下する
給与額やボーナス額が下がれば、多くの従業員はモチベーションを落としてしまうでしょう。仮に自分の給与額が下がらなくても、同僚や上司・部下が人件費削減の対象になり、リストラになってしまえば、不安やストレスから離職をしてしまう可能性が考えられます。
また、削減のやり方や伝え方によっては、社内で経営陣に対する不信感が生まれてしまい、かえって生産性が低下する場合もあります。実施する際には、従業員への配慮が必要です。
企業のイメージが低下する
日本社会では、大幅な給与カットやリストラはあまり良い印象を持たれません。「人件費を下げる=業績が悪化した企業の最終手段」という考えが根強くあり、経営状況が危ない、もしくは従業員のことを考えていないといったさまざまなイメージを持たれてしまいます。
とくに求職者に対してネガティブな印象を与えてしまうため、今後の採用活動が難航する恐れが考えられます。
売上が下がる
人件費を削減することで、一時的に売上が減少してしまう可能性があります。利益率を改善するために費用を削減したはずなのに、売上がそれ以上に低下してしまえば、かえって利益率が悪化してしまうでしょう。
たとえば営業職の社員を減らしたことで受注量が減ってしまったり、従業員一人ひとりの業務負担が増加してエース級の社員が離職してしまったりなど、懸念はさまざま考えられます。先述した通り、人件費を削減した後の人材採用は容易ではないため、とくにリストラを実施する際には残ってもらう従業員が離職しないようなケアが必要になるでしょう。
法的リスクが懸念される
労働契約法第9条には下記のように記載されています。
第9条 使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。
引用:厚生労働省
減給やリストラを実施する場合には、従業員に対して十分な説明をしたうえで、合意を得てから取り組むべきだと言えます。最悪の場合は、トラブルや裁判にまで発展するケースが考えられるため注意が必要です。
給与カットやリストラ以外の方法
人件費を削減する際には、さまざまなデメリットや懸念点が挙げられます。給与カットやリストラをできるだけ避けるためには、まずは下記3つの方法から検討してみてください。
業務効率化を行う
業務効率化により、無駄な残業や長時間労働で発生する人件費を削減できます。
まずは、業務フローや従業員一人ひとりの業務内容を見直して、改善余地のあるボトルネック(原因)を特定することから始めましょう。
業務内容を可視化するには「TimeCrowd」の導入がおすすめです。
従業員に、タスクの開始時・終了時にワンクリックで打刻することを依頼するだけで、組織内で「どの業務に・どれくらい時間をかけたのか」を可視化できます。常日頃から業務可視化を行えば、無駄な業務の発生を防ぐことも可能です。
また、TimeCrowdでは従業員ごとの時間単価を設定するだけで、プロジェクトごと・タスクごとの人件費を自動で算出できます。とくに外注している業務では、人件費がかかりすぎている場合に内製化を検討したり、より安い外注先に依頼をしたりなど、改善策を検討できるでしょう。
少しでもご興味のある方は下記資料より詳細な機能や企業事例をご確認ください。
時間管理ツール「TimeCrowd」の資料をダウンロード▼業務効率化に役立つツールは下記記事でご紹介していますので、あわせて参考にして取り組まれてみてください
労働生産性を高める
労働生産性とは、生産要素(インプット)に対して、どれくらいの生産物(アウトプット)が得られたのかを示す割合のこと。つまり、従業員一人ひとりがどれくらいの成果を上げているのかを確認する指標のことを意味します。
■計算式
- 労働生産性=生産物(アウトプット)/生産要素(インプット)×100
労働生産性を高める方法としては、アウトプットである生産物を大きくするために「従業員のスキルアップを促す」「利益に直結する業務はプロ(支援企業)のアドバイスを受ける」ことなどが挙げられます。
また、インプットである生産要素をできるだけ小さくするために「ムダな業務フローを削減する」「テクノロジー(RPAツールなど)を活用して無駄な業務をなくす」などの方法が有効になるでしょう。いずれにせよ重要になるのは、従業員が“本質的な業務(利益に直結する業務)”に専念して、最大限の生産物(アウトプット)を出せるような環境を作ることです。
▼労働生産性を向上させる方法については下記記事を参考にしてください
外注を上手く活用する
単純作業は外注をうまく活用するのがおすすめです。外注には社会保険料や福利厚生費などが発生せず、タイムチャージ制(時間単価制)を採用すれば作業が発生しない限りは費用が発生しない仕組みになります。
新規採用を抑制しつつ人手不足を解消できるほか、従業員をより“本質的な業務(利益に直結する業務)”に専念させることができるため、先述した労働生産性を高めることにも繋がります。また、最近では優秀な人材が独立してフリーランスとして活躍しているケースが増えており、そのような人物を登用すれば高い成果も期待できるでしょう。
人件費削減に取り組む際のポイント
さまざまな対応策を検討しても、実際には人件費を削減せざるを得ない場合があるでしょう。その際には、下記のポイントに注意をして対応してください。
関係者の納得を得ること
人件費を削減する際には、関係者(従業員・外注先)の納得を得られるように、丁寧な説明を心がけましょう。たとえば、文章だけではなく口頭で伝えたり、これまでの経緯や今後の改善策についての補足をしたりなどが挙げられます。
自社の利益を優先するあまり、おざなりな対応をしてしまうと、悪評が広がったり、業績が回復したタイミングで協力をお願いできなかったりなど、回り回って影響が出てくるため注意が必要です。
中長期的な視点を忘れないこと
短期的なコストカットは、あくまで一時的な対応策に過ぎません。
無駄な業務が発生しないように業務効率化のITツールを導入したり、常日頃からプロジェクトごと(タスクごと)の収支状況を可視化して、悪化したときにいち早く対応できるような環境を整えたりなど、根本的な見直しを図るタイミングだと言えるでしょう。
TimeCrowdを導入すれば、従業員の時間単価に基づいてプロジェクトごと(タスクごと)の人件費を自動で可視化できます。時間をかけ過ぎている業務を特定して、業務効率化を図ることも可能です。また、従業員にタスクごとの時間計測を依頼することで、そもそも無駄な業務が発生しづらい環境を作れます。
このように中長期的な視点を持って収支改善に取り組むことで、人件費削減の再発を防げるほか、関係者が納得をして協力してくれるようになるでしょう。
まとめ
人件費削減は、収支改善の一時対応策として有効ではあるものの、さまざまなデメリットや懸念点が挙げられます。
本記事でご紹介したように、まずは「業務効率化を行う」「労働生産性を高める」「外注を上手く活用する」などに取り組み、無駄が発生している業務時間を削減して、より“本質的な業務(利益に直結する業務)”に専念できるような環境を作ることから始めてみてはいかがでしょうか。
また、これを機会に中朝的な視点から「誰が・いつ・何をしているのか」「どの業務に・どれくらい時間をかけているのか」を可視化する環境をつくり、無駄な業務が発生しないような状況にしておくことをおすすめします。