「僕たちは、時間を使って意味を生み出している」歩元株式会社 小林慧一さん

インタビュイー 歩元株式会社 代表取締役 小林慧一氏
インタビュアー 西小倉宏信代表

卓越した集中力とタスク処理能力を持ち、時間管理のポイントに「ライフワークバランス」を挙げられている小林さん。ロジカルで達観した独特の世界観は、さながらIT界の「哲人」と呼びたくなるほど。そんな小林さんのフィルターを通して見つめた「時間」とは?

タスク管理はザックリでもなんとかなる

――「歩元」で行っている業務について教えてもらえますか?

「歩元」で提供しているのは、お客様の業務効率の改善です。業務効率の観点で、問題点の洗い出しと改善策の提案等を行っています。僕がプログラマであるということもあり、実際には業務効率化のためのツール開発を行うことが多いです。

――リモートの有無など、業務はどんな形で行っていますか?

基本的に、僕がクライアントの会社へ行っています。実際の現場の様子、作業風景を見せてもらった上で改善策を検討しますね。ヒアリングだけだと、実際の状況と若干食い違う場合もあるので、「現場主義」で確認しています。

――個人のスケジュールを管理するのに、普段使っているツールは?

Trelloなどを使おうとしていたこともあったのですが、最近は使っていないですね。一番使っているのは、Googleカレンダー。日程に紐づくto doはGoogleカレンダーに入力しています。そして、あえてスルーしてもかまわないタスクしか書いていません。もし一回スルーしちゃって、必要であれば書き直せばいい。そんな風に、ざっくりと管理しています。

きっちりリストを作ろうとすると、未完のタスクが1000、2000とたまって優先度がぐちゃぐちゃになってしまうと思うんです。洗い直しとか絶対にしたくないですよね。一度作ったタスクは揮発しても構わないの気持ちで管理するくらいでちょうど良いんです。流れたタスクはまた作り直せば良い。重要なタスクなら作り直すし、作り直すことを忘れる程度のタスクだったなら流れたままで良い。

――クライアントとの情報やスケジュール共有に使っているツールはありますか?

Googleカレンダーで共有することが多いです。ミーティングの設定なども、お互いの時間の空きで設定できるので調整がスムーズです。

 

ライフワークバランスを大切に、仕事への集中力をキープ

――時間管理で工夫しているポイントを教えてください。

僕の場合はライフワークバランスを重視していて、大事にしているのは「ちゃんと休む」こと。仕事をし過ぎてだめにならないように、月に15日しか働かないと決めています。これ時間管理というか体調管理なんですけどね。しかし時間を使うのは体なので、体を大事にすることが結果的に時間を大事にすることに繋がります。

――と言っても、僕は知っているんですけど、小林さんはコードを打つのがすごく速いんですよね(笑)その15日間に凝縮されている。

日常的な工夫としては、iPhoneのタイマー機能を活用しています。とてもシンプルな機能ですが役に立ちます。例えば洗濯機の洗濯が終わる時間であったり、会議が始まる直前であったり、電車の乗り換え時間であったり、あらゆる予定の数分前にアラームが鳴るようにセットしています。洗濯機自体にもアラームはあるしカレンダー機能にもアラームはありますが、それに加えて意識的に「手動で」手元のアラームをセットする行為を大事にしています。その行為が予定の記憶を強化するし、何よりも実際にアラームが鳴るので安全です。

他の工夫としては、会議の議事録をGoogleドキュメントを使ってリアルタイムで作成したりとか。参加メンバーにはその場で内容確認してもらう。これだけで会議後の確認と修正の時間が節約できるし、何よりも正確さが増します。

――時間管理は得意な方?それとも苦手な方ですか?

得意です。現状、時間管理にはあまり困ってない。

秘訣は休むことと、タイマーのようなシンプルなツールを自分に合わせて使うことでしょうか。Linuxの思想に通じるんですけど、シンプルなツールの良さってありますよね。イメージとしてはレゴブロックのように、小さな多数のコマンドをみんなが好きなように組み合わせて使える自由さが良い。使い方にバリエーションを出しやすく、勝手がいい。各パーツが小さいと、それぞれの品質が安定していることのチェックも楽ですね。

――時間管理のために今後取り入れてみたい工夫やツールはありますか?

自分のタイピングを自動的に記録してくれるツールを試してみたいです。一日のどの時間帯にどのくらい打鍵しているのか視覚的に確認してみたいですね。時間管理というよりは単なる興味なんですけど。

――それなら、WakaTimeという、自分のプログラミングを自動で記録してくれるツールがありますよ。

時間と情報の関係性 情報化社会における仕事の本質とは?

――時間管理と聞いて、思いつくキーワードやエピソードがあれば教えてください。昔から時間管理は得意でした?

昔はあらゆる予定において遅刻が多かったです。何故遅刻が多かったのかというと明白な理由があって、無駄な隙間時間ができることをとても恐れていたんですね。持てる時間を活用しきりたかった。だから常にピッタリした時間で行動しようとする。そうするとちょっとしたトラブルによる時間のズレで遅刻しちゃうんです。当たり前の話ですが。

今の時代ですとインターネットによって隙間時間をいくらでも有効に活用できるので、隙間時間を作ることに躊躇がなくなりました。そうすると余裕をもったスケジュールで行動できるんですよね。ここ最近の時代の変化の恩恵に与れた結果だと思います。時間管理の苦手意識はまったくなくなりました。

あと、持てる時間をさらに濃く活用するメソッドとして「ポモドーロテクニック」というものを好んで実践しています。これは作業の集中を切らさないためのひとつの工夫で、「25分作業」と「5分休憩」を繰り返すというだけのシンプルなものです。これをサポートするためのツールもいくつかあるのですが、僕はよく245cloud(ニシコクラウド)というサービスを使っています。このサービスではポモドーロテクニックの5分休憩の間にだけチャットができるという仕組みになっていて、これがなかなか面白い。

――「こんなものがあったらいいな」という妄想時間管理ツールを教えてください。

ソフトウェアという感じではないんだけど、自分の好きなタイミング、時間で睡眠がとれたらいいと思う。フィジカル的に、ピッと押した瞬間眠りに入れて、決めた時間になったら起きられるような。

――いっそ睡眠をとらなくても働けるように、ではなく?

睡眠は必要だと思うんですよね。人間の脳の、情報整理のための機能なんじゃないかと。コンピュータのデフラグのように、休憩を取ることは効率化に必要かも。

――確かにずっと仕事していてもあまり進まないのに、睡眠を取って起きたらすぐできた、みたいなことってありますよね。

1時間で8回眠るみたいに、睡眠を分散できればいいなとも思いますね。

――最後に、小林さんにとって「時間」とは何ですか?

僕は時間があったらひたすら情報整理をしているのですが、仕事としての情報整理ってとても不条理に見える行為なんですよね。昔からある一般的な仕事って、魚をとってきたりだとか鉄器を作ったりだとか、何かしら「手に取ることができる」価値を作ることだったと思うのですが、僕らの仕事の成果にはそういう「手に取ることができる」物が無い。これはサービス業全般に言えることなのですが。

それこそPCをカタカタ叩いて8時間過ごしたとしても、その前後でPCの形も重さも変わっているわけではなく、もう少し踏み込んだ言い方をすると、そのPCが持つエネルギー量が変わっているわけでもない。ファイルを何GB作ったところで何かを増やしたわけでもなく、元から存在するセクタ上のビットをいっぱい反転させただけでまったく質量は変わってないんです。動物的には石を8時間叩いてるのとなんら大差がない。

でもそのビット配列の変化がコンピュータ世界の「サービス」を作り出しています。ビットの入れ替えが価値を作り出している。一見不条理に見える無尽蔵なビット入れ替えを僕らは仕事にしているわけです。僕にとって時間とは、情報を並び替えるために必要な「資源」だと捉えています。

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