プロジェクトで重要となる「コスト管理」とは?おすすめの管理方法をご紹介

プロジェクト管理のなかでも「コスト管理」は、利益に直結する重要な役割を果たします。仮に売上が順調にあがっていた場合でも、コスト管理を怠ると想定以上にコストがかかってしまい、最悪の場合は赤字となることもあるでしょう。

本記事ではプロジェクト管理における「コスト管理」の重要性を解説しつつ、具体的な手法や管理していくうえでの注意点をご紹介していきます。プロジェクトリーダーやマネージャーの方はぜひ参考にしてください。

コスト管理とは

コスト管理とは、プロジェクトを予算内で遂行するため、固定費と変動費といったコストを見積もり、管理することを意味します。

プロジェクトを行うには、仕入れ原価や人件費といったコストが発生します。コストをしっかりと管理していないと、プロジェクトを無事に終えられたとしても赤字になってしまう可能性があります。プロジェクトにかかるコストを適切に見積もり、管理することで、赤字を防いだり収益性を高めたりすることが可能です。

コスト管理はPMBOKの知識エリアの1つで「コストマネジメント」に該当します。PMBOKとは、10の知識エリアと5つのプロセス、3つのパートでプロジェクトマネジメントのノウハウをまとめた知識体系です。

PMBOKで定義されているコストマネジメントの手法を参考にしながら、コストの見積もりやコントロールを行うことも1つの方法です。

コスト管理を行うために、まずは「固定費」と「変動費」の2つの費用について理解をする必要があります。それぞれについて、下記で解説いたします。

固定費

固定費は、プロジェクトを進行していく際に毎月必ずかかる費用のことを指します。たとえば事務所を借りている場合には賃貸料や光熱費などが固定費に含まれます。また、従業員を雇っている場合には社員を雇うための人件費や交通費なども該当します。

コスト管理として固定費を減らすためには、賃貸料や光熱費を見直さなければいけません。たとえば社内でリモートワークを取り入れることで、賃貸の事務所の規模を小さくして、賃貸料・光熱費・交通費などを抑えることができます。

変動費

変動費は、プロジェクトの売上によって価格が変動する費用のことを指します。たとえばメーカーを事例に挙げると、商品を製造するための原材料費や研究開発費がこちらに該当します。また、製造した商品をユーザーに認知してもらうための広告宣伝費や、出荷する際にかかる運送費も変動費にあたります。

変動費を削減するには、原材料の仕入れ先や外注先への価格交渉が効果的です。しかし、コスト管理を優先するあまり、重要な費用をカットしてしまうことで商品の質が大きく落ちてしまうリスクもあります。そのため、変動費の削減には入念な事業計画が必要不可欠です。

コスト管理の重要性

コスト管理は利益に直結する重要な役割を果たすため、企業経営をするうえで優先して取り組みたいことの1つです。

プロジェクトを進めていくうえでは、コスト管理を軸にした計画書を作成して、予算や制約をあらかじめ明確にする必要があります。

コスト管理を怠ったままプロジェクトを進めてしまうと、責任者では手に負えない重大なトラブルを引き起こすきっかけにもなりかねません。

プロジェクトを遂行するうえでコスト管理が重要になる理由を下記より解説いたします。

プロジェクトの成功には欠かせない

プロジェクトを成功させるためには、初期段階での予算設定が必要不可欠です。

プロジェクトの予算が決まらなければ、目標設定や人員補充の目処も立ちません。仮に予算を大きく超えてしまうプロジェクトであれば進める意味もなくなってしまいます。

また、プロジェクトの途中で大きく予算をオーバーしてしまうと、中止せざるを得ない可能性もあります。プロジェクトを中断することなく、最後まで進めるためには、コストを適切に見積ったうえで大きく超過しないようにコスト管理を行うことが重要です。

プロジェクトの変更に臨機応変に対応できる

日頃からコスト管理をしていれば、スコープクリープが発生した際にも臨機応変な対応ができます。

スコープクリープとは、当初の要件範囲を超えてしまうことです。たとえば製品の機能を3つ実装する予定だったのに5つに増やしたり、途中で仕様が変更になったりすることです。スコープクリープが発生すると、時間・リソース・コストが追加でかかり、プロジェクトの遅延や赤字の原因にもなります。

ただし、プロジェクトの途中での変更がどうしても必要になるケースもあるでしょう。コスト管理を適切に行うことで、変更が発生した際にも「予算内で対応できるかどうか」「他の予算からアロケーションできるかどうか」などを、瞬時に検討できるという点がメリットだといえます。

データの蓄積につながる

コスト管理を正確に実行し続ければ、今後のプロジェクトに活用できるデータを蓄積できます。

コスト管理のデータをプロジェクト単位で蓄積し続けていけば、同じようなプロジェクトを実施する際に、より精度の高い予算を初期段階から設定できます。また、蓄積した膨大なデータを分析することで、コストカットや利益率を高めるための新たな戦略を立てられます。

プロジェクトの制約条件を把握できる

コストを把握することで、プロジェクトにどれくらいの予算や時間、リソースをかけられるのかという制約条件を把握することができます。

コストは、プロジェクトの3つの制約条件(コスト・スコープ・時間)のうちの1つと言われます。3つの制約条件はそれぞれに影響しあうため、たとえばスコープを増やせばコストと時間も比例して多くなりますし、コストが増えればスコープや時間にも影響します。

つまり、プロジェクトにおけるコストを適切に把握することは、残り2つの制約条件であるスコープと時間を適切に把握することにもつながります。

​​コスト管理の流れ

コスト管理を適切に行うためには、いくつかのプロセスがあります。

プロジェクト単位でのコスト管理を実行するためには、事前の計画書の作成や見積もりはもちろん、実行中のコストにも調整が必要です。

コスト管理のプロセスについて、下記で解説いたします。

①計画書の作成

コスト管理を実行する際はプロジェクト全体のスケジュールや必要な人員を割り出すための計画書を作りましょう。

計画書を作成する際は人員はもちろん、資材・機材の内訳や必要となるタイミングも正確に考案する必要があります。また、過去に行われた同様のプロジェクトを参考に、発生するすべてのコストを書き出し、予算の計画を立ててください。

②コストの見積もり

計画書が完成したら、人員や資材を導入する際にかかるコストを見積もります。

取引先や外注先の企業がある場合は、それぞれに連絡をとり具体的な金額を割り出し、計画との差異を確認してください。

特に過去の事例が少ないプロジェクトの場合は、計画書の段階で必要な正確な予算が割り出しにくいため、必ず見積もりを行いましょう。予定した計画より多くの予算や人員が必要になった場合は、外部に業務委託するといった対策を計画段階で検討できます。

③リソースの確保

コストを見積もったら、次に必要なのはプロジェクトに必要なリソースを確保することです。

リソースとは、人員・費用・設備・プロジェクト期間などが該当します。リソースの確保によって、具体的な人件費・経費・プロジェクト期間・工数などの把握が可能になります。

プロジェクトをスムーズに進行して予算内で遂行するするには、必要なリソースを確保することが重要です。

④全体予算の計算

計画書と見積もりをベースにプロジェクト全体の予算を計算します。

予算の計算はプロジェクトの成功にも直結する重要なプロセスで、配分を間違えれば予算不足やトラブルの原因にもつながります。

とくに複数のプロジェクトを進行している企業では、まとまった予算が一度に与えられません。段階的に支給されるケースが多いため、適切なタイミングに合わせた予算配分が重要になります。

⑤プロジェクトの経過観察

プロジェクトの予算が設定されたら、コストを調整しながらプロジェクトを進めましょう。

プロジェクトの進行中は「計画通りに進行ができているか」を経過観察しながら、状況に合わせてコストを調整します。プロジェクトでは予想外のトラブルや外的要因で大きな予算変更を余儀なくされるケースも多いため、状況に合わせたコスト管理を実行することが成功への近道です。

コストを含むさまざまな指標でプロジェクトを管理して、実績を分析するためにEVM(Earned Value Management)という手法を用いることが推奨されています。

EVMではコストや出来高について、プロジェクトの計画時の予測と実際の数値を比較分析するため、乖離が生じた際にも、迅速に察知できるため軌道修正がしやすくなる点がメリットです。

▼EVMとは何かについては下記記事を参考にしてください

プロジェクトの進行中に、コストの見直しが必要になった場合は予算の範囲内で再配分を行います。状況によっては、スコープの範囲やスケジュールを修正する場合もあるため、プロジェクト全体のコスト調整が必要になることもあります。

コストの見直しや調整が必要になった場合にも、スムーズにプロジェクトを進めるため、関係者と綿密にコミュニケーションをとることが重要です。情報共有を迅速に行うことで、変更が発生した場合にも柔軟に対応できるため、プロジェクトを円滑に進めやすくなります。

コスト管理を行う方法

コスト管理をうまく進めるためには専用のITツールの導入がおすすめです。ITツールを使うと下記のようなメリットを期待できます。

  • コスト計算を自動化できる

ITツールを活用することで、コストの計算を自動化して素早く行うことができます。また、計算の精度も高くなるため、より正確なデータを蓄積できるというメリットもあります。

  • 臨機応変に対応できる

コスト管理では予想外のトラブルが原因になり、コストの調整や見直し、損益計算を行うことも多いです。ITツールを活用することで、このような見直しにも臨機応変な対応ができます。

  • コストの無駄をなくす

ITツールを導入することで労務や経理の負担を軽減できます。また、これらに伴う人件費をカットできるため、企業全体の固定費を減らす役割もあります。

  • 予算が組みやすくなる

ITツールを活用することで、状況に応じて複数の予算をシュミレーションできます。そのため、トラブルなどを想定した複数の予算を予め作成しておくことで、予期せぬ事態にも対応できるようになります。

とくにコンサルティング業務やシステム開発などのプロジェク型ビジネスの場合には、コストのなかで大きな割合を占める「人件費」を適切に管理するためにTimeCrowdの導入がおすすめです。

timecrowd

メンバーがタスクごとに所要時間を計測することで、プロジェクトごとにかかった稼働時間(=人件費)をリアルタイムで算出することができます。

時間の計測方法は簡単で、タスクの内容を選択してワンクリックで打刻をするだけで完了です。ブラウザ・Chrome拡張機能・モバイルアプリなど、さまざまな環境から打刻ができるため、運用が形骸化する心配もありません。

また、計測した工数データの集計は不要です。「どのプロジェクトに・どれくらい時間(=人件費)がかかっているのか」を管理画面から、グラフ形式で確認できます。

新たにプロジェクトを始める際には、過去に取り組んだ類似プロジェクトの工数データを確認して、工数見積の参考にすることもできます。

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コスト管理で注意するべきポイント

コスト管理を進める際には、注意するべきポイントがいくつかあります。

ITツールを導入して、コスト管理の自動化や効率化を進めた場合でも、責任者がプロジェクト全体の業務フローを理解していなければ、初期段階で正確な見積もりを作成することは難しいです。

また、プロジェクトが始まってからも常に正確な進捗状況を理解する必要があります。

全体の業務フローの把握

効率の良いコスト管理を実行するためには、プロジェクト全体の業務フローを把握しましょう。

プロジェクトの責任者はもちろん、携わる全ての人員が正しい業務フローを理解していなければ、初期段階で立てた見積もりが正確なものではなくなります。

全体の業務フローを把握して正しい見積もりを出すためには、担当外の部署の業務やコストを全体で共有して、それぞれで確認作業を行うことが重要です。また、コスト管理ツールを導入する際には会計ツールや労務ツールなどのシステムと統合することで、共有しやすい環境を作ることができます。

プロジェクトごとの進捗状況の把握

プロジェクトの進行時には、急なコスト調整に対応するために進捗状況を必ず把握しておきましょう。

プロジェクトの進捗状況を責任者が理解していなければ、突然のコスト調整にも対応できなくなります。一方で、仮に製造している商品の進捗が遅れてしまった場合でも、事前に進捗状況が把握できていれば、適切なスキルを持った人員を予算内で補充するなどの対応が可能になります。しかし、進捗状況が把握できていなければ、社内での人員調整が難しく、外注先から補充することになるため余計なコストがかかってしまいます。

責任者が進捗状況を適切に把握することは、コスト管理において非常に重要なポイントです。

コストの分類

プロジェクトはそれぞれでかかるコストが異なるため、あらかじめカテゴリごとに分類をして、適切に管理するようにしましょう。コストの分類をする時には「固定費」と「変動費」に分けて、それぞれを賃貸料・光熱費・人件費・交通費・研究開発費などに細分化します。

それぞれのコストを細分化していくと、かかったコストの割合を可視化できるため、次回以降のプロジェクトに向けて分析を進めることができます。また、無駄なコストがかかりすぎているカテゴリについては、プロジェクトの進行中にも調整ができます。


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まとめ

コスト管理はプロジェクトを進めていくうえで重要な要素のひとつです。適切な管理ができれば、利益率の向上にも繋がります。

また、蓄積されたデータを次回以降のプロジェクトにも活用できるため、事業戦略を考える際にも活用できます。

とくにコンサルティング・システム開発・デザイン制作などの、プロジェクト型ビジネスに属する企業様は、プロジェクトごとの稼働時間(=人件費)を把握することが重要です。発生する費用のうち、人件費の占める割合が高いため、プロジェクトごとの利益率を左右する重要な要素になります。

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