普通の人が普通に頑張ることで成果を生み出す事業へ|渡 雄太様の合理的時間管理術

株式会社ユニラボで手掛けたBtoBのマッチングサービス「アイミツ」が流通総額1000億円を突破。自身が創業した株式会社wibからM&A事業譲渡した株式会社キャスターで執行役員を務め、現在は新たな事業へ踏み出すなど、常に歩みを進める渡雄太様。(https://twitter.com/watari922

顧問やアドバイザーとしても活躍し数多くのサービス立ち上げに関わっている渡様の時間管理術やタスク運用には、ユニークでありながら合理的な、興味深いノウハウが溢れています。

思わず「なるほど」と言葉が漏れてしまう時間の有効活用法を、渡雄太様にお伺いしました。

タスク管理の基本は、思考をしたものすべてに「結論」を出すこと。

──これまでの経歴や、現在取り組んでいる事業について教えてください。

渡:これまで複数のスタートアップでの取締役や執行役員を務め、自分で作った会社の事業譲渡を行うなど、ずっとスタートアップの世界で生きてきました。基本的にBtoB、それに関連するインターネット・人材に関わる領域で、さまざまなサービスの立ち上げを行っています。

現在は、自身で設立した会社の顧問業や若い起業家への投資活動、それから出身大学である東北大学の特任准教授としてVC(ベンチャーキャピタル)の出資先のサポートや、「Deep Tech」と呼ばれる事業化できていない先端技術をビジネスとつなぐための仕事、「3足のわらじ」で取り組んでいます。

渡様の自己紹介ページ:https://yutawatari.me/

 

──タスク管理についてはどのようにお考えですか。

渡:Notionの利用ルールなどは2016年ごろ作成した「タスク管理虎の巻」にまとめています。

これは以前取締役を務めていた会社の新入社員や大学生インターン向けに作成したのですが「思考をしたものはすべて『結論』を出す」などを基本的な考え方として、タスク管理のカルチャーを会社に浸透させることを目的としていました。

結論を出すのにエネルギーを使うことが 「考える」ことであり、「ぼんやり思い浮かべる」ことは考えることではない。そういった内容を強調しています。

 

目の前のディスカッションに全力で集中し、「明日やろうは馬鹿野郎」を強烈に意識

──複数の事業に携わるなど「いくつかの顔」を使い分けていると思いますが、時間管理はどのようにされていますか?

渡:顧問業・受託業にフォーカスして言うと、仕事の時間の9割はミーティングです。自分でPCに向かって作業することはほとんどありません。

ミーティングの内容は2種類あって、1つはクライアントに対してアドバイザリーを行ったり期待値調整やスコープの定義を行ったりする「対クライアント」のもの。もう一つはそれをきちんとアウトプットするための「対従業員」のものです。

その際は、脳をめっちゃ切り替えるんですよ。ミーティングに入った瞬間、他のことを考えないようにしています。チャットの通知すら気が散るので、チャットは切っている。

 

複数のわらじを履いている以上、限られた時間で向き合う時は、なるべくノイズが入らず、相手とのディスカッションに集中できるように自分の環境をまず整えます。

そしてそこで出てきた具体的なTo Doに関しては「明日やろうは馬鹿野郎」を地で行っています。後回しにすると違う仕事で脳のメモリがいっぱいになってしまう。向き合っているその時間の中で全て完結させることを強烈に意識しています。

──ツールは利用していますか。

渡:個人としてはツールは全然使っていません。ツールは他人とシェアするためのものだと思っています。

自分以外の従業員の抜け漏れを失くしたり、フォローしたりするために可視化はすごく重要だけれども、個人事業で関わってくれている人たちがそれぞれの責任範囲でやっていることは、細かく管理する必要はないと思っています。

ただ僕自身が「これは手が回らん」というものは、奥さんにLINEでぶん投げてますね。(笑)これには明確な理由があって、奥さんとのLINEを開く頻度がきわめて高いので、開くたびに思い出せる。

Slackの自分宛てのDMで送ったりとか、自分用のタスク管理ボードを作る方法もあるけれど、それだとわざわざ自分からその情報を取りに行くというアクションが発生することで、忘れるリスクが高まると思います。

それをなるべく日常のアクションに溶け込ませることが大切なんです。奥さんからしたら、いい迷惑なんですけどね(笑)。

 

スーパーマンでない普通の人が、普通に頑張ることで成果を生み出せる事業を作る

渡:メンバーがいるときはNotionでタスクボードを作ってタスク管理をしていましたが、いつも自分の根幹にあるのは「スーパーマンでない普通の人が、過重労働ではなく普通に頑張ることで大きな成果を生み出せる事業を作る」ということです。

世の中の企業は、スーパーマンを前提に業務設計したり、夜まで働かないと終わらない業務配分をしていることがすごく多いと思う。僕は「普通の人が普通に頑張る」ということにめちゃくちゃこだわってます。

タスク管理にしても、プロセスは本人に任せつつ、優先度はリーダーがコントロールする。毎朝朝礼をやって「今日は結局何をやるんだっけ?」をみんなで強制的に見るようにしていました。

ツールだけ渡して「あとはよしなにやっといて」って言うのは僕の中の定義で言うとスーパーマンなんですよ。普通の人はサボるし、タスク管理ツールをアップデートしてくれない。だから強制的に振り返ったり、棚卸する機会を短い時間でいいから高頻度で回すことをやっていましたね。

──仕事の9割がミーティングで終わってしまうという話でしたが、タスク自体は発生しますよね?それはどのように対処しているのですか。

渡:「口頭で絶対に終わらせない」「テキストコミュニケーション」をチームの強いカルチャーにしてきました。クライアントとの齟齬を無くし、議事録をそのまま従業員にシェアしています。

社内でも従業員ごとに抱えているクライアントが分かれているので、それぞれ週に1回、15分だけミーティングをするようにしています。

そこで先ほどの議事録と照らし合わせながら「いつまでにこういうアクションをしよう」ということを書き留めていく。それを徹底しています。

 

──ドキュメントも含めてその場で終わらせるということですね。

渡:そうです。クライアントにも「こちらで丁寧に議事録を作ることはできないので、前日までにそちらで僕と話すアジェンダを埋めておいてください」とお願いしています。

そこで埋めてもらうからこそ、僕も全力フルスイングでフィードバックできる。そして決まったことはその場で一緒に書いて結論を出す。

すべてその場で終わらせることを、徹底しています。

 

「何か困ったらいつでも声かけてね」で、声をかけられることはない。

──運用の仕方で、課題や反省はありましたか。

渡:組織が大きくなっていく中で「今、誰が、何に困っているんだろう?」が見えにくくなるんですよね。1人が直接管理できる部下の人数は7〜8人と言われますが、自分の目が届く範囲であればメンバーのつまづきが肌感覚でわかってサポートもできる。

でも人数が増えたり、自分の下に階層を一つ作ると、一人ひとりに割ける自分のマインドシェアが減っていくので、見えにくくなることがある。

そうなると、つまづく前に解決できていたことが、つまづいた後での後手の処理になってしまい、火消しがしんどい。本来やりたかったことへのエネルギーが減ってしまうんですよね。

 

──状況が把握しづらくなったら、権限移譲をすれば良いのでしょうか。

渡:権限移譲も必要ですけど、大切なのは困りごとの相談をするかどうかが、本人の自発性に委ねられている状態を解消することです。

どの組織でも聞く「何か困ったらいつでも声かけてね」という言葉。でもそれで声をかけられたためしがない。自分と近い人や、長年一緒に働いている人には「生煮え」のこともぶつけられますが、フォローしなければいけない人ほど、声を上げてくれないものです。

なにかタスクがあったとしても、そのマイルストーンを本人に作らせてはいけないと思います。プロジェクトとか仕事の内容に応じて「問題解決のために、どのタイミングで相談するか」をガチっと固めればよかった、という反省はありました。

 

──仕事とそれ以外の時間を上手く使い分けられているように感じます。何か工夫していることはありますか。

渡:人間は不真面目だと思っているんです。もちろん瞬間風速的に熱い思いが高まることはありますが、それを維持することは不可能です。僕もキャンプや家族とのおでかけをずっとしていたい側の人間だし。

だから「プライベートと仕事をどう切り分けるか」ということよりも、限られた時間の中で仕事のパフォーマンスを上げるために、自分以外のリソースを積極的に頼ることと、自分自身に対する強制力を「仕組化」するようにしています。

例えば毎日10投稿継続しているツイッターも、ネタ集めは在宅ワーカーさんに依頼して自分の考える時間を減らしつつ、毎朝30分部屋でバイクを漕ぎながらネタをもとに10ツイート推敲することを自分の日課にして取り組んでいます。

 

──タスク管理の考え方やマネジメントまで、大変勉強になりました。ありがとうございました!

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