営業を成功へ導く!時間の質を上げる方法とは?「時間の主導権を握り続ける」株式会社営業ハック笹田 裕嗣様の時間管理術

大手人材企業にて営業成績トップを記録し、Webマーケティング会社へ転職後、フリーランスを経て法人化し、現在は営業ハックの代表取締役社長を務める笹田様。

YouTubeやSNSなど発信活動も継続する笹田様の時間管理術には、成果につながる最短距離をひた走るためのノウハウが溢れています。

営業の極意も含め、株式会社営業ハック笹田 裕嗣様へじっくりとお話を伺いました。

「広く当たって絞っていく」発想で、成果を出すための最短距離を探る

──現在取り組んでいる仕事の内容について教えてください。

笹田:営業に関わるすべての仕事をお手伝いしています。

「手足を動かす」営業代行、「頭を使う」営業戦略コンサルティング、営業担当者を育てる人材育成支援、そして人材紹介。この4つの領域です。

「営業の悩みを0にする」をミッションに掲げ、営業に関わる負を無くすために4つの事業を走らせながら、日々取り組んでいます。

 

──以前はどのような仕事をされていたのですか。

笹田:社会人になってからずっと営業しかしていません。

ダスキンでのインターンシップから私の営業人生が始まり、会社員時代は人材会社の営業。Webマーケティングの会社へ転職したのち、営業のフリーランスを法人化したのが5年前のことです。

 

──以前、生産性を上げるために「成果を出すための最短距離の行動をとる」ことをお伺いしました。より短い時間でより高い効率を出すための秘訣について教えてください。

笹田:最初から最短距離を目指さないことは大事にしています。他社の成功手法があったとしても、それをうちでそのままやっても成果になるとは限らない。

そこには「手法×ブランド」とか「手法×商材」「手法×人」など、違ったかけ算が必ず存在しているものです。アイディアをもらっても、それがうちに合っているかどうかは、やってみないとわからない。その前提を忘れていません。

成果を出すための最短距離の行動を考えた時に、まずやってみる。試してみる。試した中で最も成果が良いものに絞る。この「広く当たって、絞っていく」発想を持つと、最短距離に行きやすいと考えています。

 

イレギュラーな作業を無くしていくことで、成果への最短距離をつかむ

笹田:私はイレギュラーが好きじゃない。電話はかけるクセに、出ないんです(笑)。

Zoomでのミーティングや商談はイレギュラーではないので出席しますが、電話はイレギュラーなものです。電話がかかってきて「うわ…。」という気持ちすら作りたくないんですよ。

イレギュラーが発生するとモチベーションが落ちる。良い知らせでテンションが上がったとしても、上がったものは必ず落ちる。この上がり下がりを無くすために、私はすべてルーティンの中にぶち込みたい。

Twitterでの発信やYouTubeの撮影といったコンテンツ作成も、朝4時から6時に行っています。突発的な作業を無くしていけば、最短距離での成果につながりやすい。これは大事にしていることです。

──なるほど。それを組織として行動レベルで行う時に工夫していることはありますか。

笹田:「タスクを組むよりも、スケジュールを組め」という話をしています。「ToDoは増えました。でもそれを消化するための時間がないです」では永遠にToDoは消化されていかない。

やるべきことは明確になっているけど、1日は24時間しかないという現実を忘れてToDoを組む人がめちゃくちゃ多いと思います。

「やれないToDo」が増えるとストレスしかない。それであれば、即消化できないものはカレンダーに入れておく、もしくは消化時間をカレンダーの中にセットしておく。このことはメンバーにも言っているし、自分も意識しています。

「時間の主導権をいかに握り続けるか」が重要だと考えています。その点で、朝は私が時間の主導権を握っている。午前中は社員が私の時間を使う。午後は自由度がある時間。

時間のブロックごとにスケジュールを落とし込んでいます。

 

──なるほど。時間を区切り「何のための時間か」を決めておくのはたいへん良いと思います。

笹田:自分の人生を謳歌するには、自分で時間調整をし、やりたいことの選択肢を持っておくことは重要だと思っています。そのためには時間の幅を確保して「この範囲では何をするか」を決めておくことが大事です。

受注までのリードタイムを短くして、タイムパフォーマンスを上げる

──営業を行う場合、新規の提案の時間は会社としてはコストになると思いますが、商談の提案を短時間化し、質を上げるために取り組んでいることはありますか。

笹田:「調べる」「考える」「話す」に関わらないサイクルをいかに無くすか、ということが重要です。

ただ、そこで多くの営業が失敗するのが「1回の営業でいかに決めるか」という発想を持ってしまうこと。商談がうまく進まないケースの多くが、お客様が忙しくて情報を忘れてしまっている、というものです。それはアプローチが良くないんです。

お客様と関わる回数は増やした方が良い。1時間の商談を1回やるよりも、10分の電話を2回、30分の商談、確認の電話を10分行う。同じ1時間でも、接触回数が1回と4回で、大きく違う。どちらが丁寧な営業と捉えられるかというと、4回話している方が選ばれる。

「いかに時間を費やし良い提案を作るか」ということと「お客様の理解を得て、この営業から買いたいと思ってもらうこと」。理屈と感情、両方の品質を上げていかないと受注にはならないんです。

商談で話すときは、議論ができる状態を作っておく。そして商談の回数を上げ、「単純接触効果」で印象を良くしていく。そのサイクルを回していくと、受注にいたるリードタイムが短くなる。

リードタイムを短くすることでタイムパフォーマンスが上がっていく。営業の品質も上がるし、お客様も喜んでくれる。そのように考えています。

──商談の回数を増やしていくという視点は非常に興味深いです。ただ、回数が多いとお客様から疎ましく思われてしまうこともありませんか?簡潔に内容をまとめてあげた方が、お客様ファーストとも思うのですが…。

笹田:ご質問ありがとうございます。それに関しては「営業が先に全部出しすぎ」ということに尽きると思うんですね。私は「いかに後出しじゃんけんできるか」という発想でお客様に関わります。

例えば結婚式や家を建てる場合、1回の相談で決まることはないですよね。はじめにコンセプトを決めて、回数を重ねてディテールを決め、最終着地のものを作る。商談も同じ感覚で進めた方が良い。

ビジョンやコンセプトをまとめる前に「商品はこちらです」という商談をすると、営業と話すことが無くなってしまう。まずはコンセプトを一緒に作ると次回の商談にもつながりやすくなる。

商品を使った後の、未来が描けていない会社さんはいっぱいあるように思います。そこを一緒に固めてから手段の相談をしていく。大きい話から小さい話をする。この順序を間違うと、上手くいかないわけです。

 

──なるほど。でも「結論から教えて」と言われることはないですか?

笹田:そこは結論をはき違えていると思います。営業は商品の「メリット」を結論と捉えがちです。商品の値段と機能を伝えて「〇か×か判断して」という感覚を持ってしまいがちですが、お客様が求めている結論は「ベネフィット」です。

その商品を購入して「結果、どうなるのか」が重要です。そこで相手に良さが伝われば「具体的な方法について相談しましょう」と2回目の商談につながる。

結論を「商品の機能」とすると、お客様は「検討します」となり、それで終わってしまう。検討させちゃダメなんです。一緒に検討するのが商談なので、それを意識することが大事です。

 

会話の「繋がり」を意識し、商談の品質向上を図る

──商談における会話のクオリティを上げる方法は何かあるのでしょうか。

笹田:会話の品質を上げるために大事なことは、前後の文脈が繋がっているか、だと考えています。

もっとも良くないのが「以前話しましたよね?」という言葉。このような言い方をするとお客様は自分が大事にされていないと感じる。これまでの話が繋がっている状態が作れているかどうかが商談の質を上げるのには重要だと思っています。

つながりという目線で考えていくと、お客様が世の中にアウトプットしている情報も注目すべきです。

Twitterや広報、プレスリリース、ブログ、社長のインタビューなど、企業がアウトプットしていることはその会社が意思表示している内容です。それを把握しておけば、商談の際、確認のためのコミュニケーションを無くせるわけです。

商談の品質を上げるには、一緒に検討する時間の比率を上げることが重要です。既出の情報に対して確認作業をしているようでは、会話の質は上がりません。

 

──なるほど。ただ、そのような営業のメソッドは属人化しやすい側面があると思います。人によって得手不得手がある中で、チームとしてクオリティを上げていくためにやっていることはありますか。

笹田:そこで大切なのは「属人化とルール化のバランス」だと思っています。

飲食店の接客と同じです。どの従業員も明るく丁寧な接客をしてくれる。ただ、それでも属人化している部分は出てくるわけです。それは一定の基準を超えた、より高度なサービスに表れる。最低限の接客マナーはルール化しておいて、加点となる部分は担当者によって差が出てくる。

営業も同様で「『さすが営業ハック』と言われる営業をしていますか?」の項目に「✓」が付かない場合は世に出せない。ただしそれがクリアできていれば、そこから先は各々好きにやって良いよ、という姿が理想だと考え、マネジメントしています。

 

──営業品質の基準についてはコンテンツなどで理解できるよう落とし込みしているのですか。それともコミュニケーションで解決しているのでしょうか。

笹田:タスクレベルで「これをやりなさい」という事柄は伝えておくことが大事だと思います。「商談後30分以内に議事録を添えてお礼のメールを送りなさい」など、「これをクリアしておけば基準点までは行く」という作業に落とし込むことが大切です。

その際に参考にしたいのが無印良品のマニュアルです。無印良品のマニュアルには作業の手順の前に、その作業を行う「目的」が書いてある。

営業で言うなら、先ほどの「商談後30分以内の議事録とお礼メール送付」はお客様に好印象を抱いていただくという目的がある。

例えば、議事録が30分で纏めきれない場合、目的が把握できている担当者は「マニュアルは後ほど整理いたしますが、まずお礼を申し上げたくメールいたしました」と送るでしょう。「何のためにやっているか」の認識合わせをして、意識づけすることが大事です。

マニュアルはNotionに記したものがあり、作業項目として「〇」か「×」かがはっきりわかるものを用意しています。

そこではセルフチェックができる状態にしてあります。すべてを上司がフィードバックすることはできませんが、自分の課題が見つかり、改善できる環境を設定してあげることが大事だと思います。

 

経験を情報に付与し、「コンテンツ化」することでフィードバックが得られる

 

──1つの情報に対して多くの成果を生み出す「レバレッジ」としてYouTubeやブログなどでの発信を行っていますが、工夫していることはありますか?

笹田:レバレッジに関しては「一石」に「何鳥」かけられるか、という話だと思うんですよね。一個の石を投げて二羽鳥が取れるより、十羽取れる方が幸せだよね、ということです。

発信に関してできるのは具体と抽象のバランスをとることだけです。具体的な内容であればあるほど、本人にしか使えないコンテンツになってしまう。その抽象度を少し上げれば、誰かにとって必要な情報が作れる。

コンテンツという言葉がハードルを上げていますが、それぞれの経験を情報に付与すれば十分なコンテンツになるんです。

コンテンツ化のメリットは、それを「作ること」と「発信すること」でフィードバックがもらえる点です。定量的なデータではなく、感想までもらえる。ほとんどの営業は自分の経験を自分の中だけにため込んでしまっていますが、それはもったいないことだと思います。

自分の分身を作ることがまさにコンテンツで、YouTubeに2,000本動画を上げていれば、2,000人の分身が24時間私のかわりに話をしてくれる状況が作れる。このような発想がレバレッジにつながることだと思います。

 

──コンテンツの発信が苦手な人もいると思いますが、笹田さんは何か訓練してきたことなどありますか。

笹田:「ネタができたらコンテンツを作ろう」という発想ではなく「コンテンツを作るためにネタを探そう」というマインドに変えられるかどうかが、コンテンツが作れるか作れないかの差になると思います。

お笑い芸人が舞台の日程が決まったら、その日までにネタを用意するようなものです。

はじめは週に2投稿、Twitterに人に役立つ自分の経験を書いていけば良い。それをカメラに向かって話せば動画になる。そのようにしてコンテンツがたまっていけば、ブログやNoteも書ける。

小さいものでも積み上げていくとボリュームのある発信になる。小さい所からスモールステップで訓練して行くと良いと思いますよ。

 

営業成功の秘訣は、成果への最短距離の行動を起こすこと

──最後に、営業で悩む企業へ時間の使い方の切り口からアドバイスをいただけますか。

笹田:はい。お伝えしたいことは3つです。

1つ目は、スタートラインでは効率化を求めないこと。

正しい効率化は、出すべき成果が出せていて、その上で工数やリソースが削れている状態を指します。それにもかかわらず、工数やリソースを削る方を優先してしまうことが効率化として起こりやすいように思います。

営業の場合、売上を上げること、利益を上げることが何より正義と考えます。まずはその成果を上げましょう。それが最低限できたうえで、少ない労力で行うことを考えます。

「インプットを少なくしてアウトプットを上げたい」のような、同時達成をしようとしないでね、ということです。

 

2つ目は成果に直結しない仕事を無くしましょう、ということ。

みんな仕事は頑張っているし「暇です」なんて言いません。でも頑張っているけど売上が出ていない現実にちゃんと向き合いましょう。

売上を与えてくれるお客様と話をしていますか?上司や部下との議論に時間を費やしても、売上は生まれません。

自分の時間の使い方がちゃんと売上に紐づく人とつながったかどうか。アクションを起こしたかどうか。それを意識してほしいです。

 

3つ目は後手に回るな、ということです。

マイナスを「0」に戻す作業は売上を伸ばす時間の使い方じゃないんです。トラブル…クレーム…。緊急度の高い仕事ではありますが、受注を増やすという点では重要度は高くないんです。

マイナスを補っていく仕事をいかに無くせるかが大事です。全員に情報共有しておく。先手先手で予防線を張っておく。それでしか解消できません。

その場しのぎで対応を放棄して、後で火が大きくなる。生産性が上がらない仕事にしてしまっている。そのようなことが往々にしてあります。だから後手に回ってはいけません。

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