プロジェクトを成功に導くためには、ステークホルダーマネジメントが欠かせません。ステークホルダーの対象になるのは、メンバーや取引先などの利害関係者です。
プロジェクトは、プロジェクトリーダー1人だけの力では乗り越えることはできません。メンバーや取引先などと良好な関係を築き、プロジェクトの目的に向けてお互いに協力をしあう必要があります。
この記事では、ステークホルダーマネジメントの目的や、重要視されている理由、取り組む際のプロセスやポイントなどについて解説いたします。
目次
ステークホルダーマネジメントとは
ステークホルダーマネジメントとは「プロジェクトの利害関係者を管理すること」を意味します。
ステークホルダーとは、たとえば株主・取引先・顧客・メンバー(従業員)・地域住民などが挙げられます。
プロジェクトを成功に導くためには、ステークホルダーとの関係性を良好に保つことが重要です。プロジェクトの責任者は目標の達成に向けて、うまく利害関係者の力を借りながらプロジェクトを進行することが求められます。
ステークホルダーマネジメントがうまくできなければ、円滑なコミュニケーションが取れなくなったり、エンゲージメントが下がってタスクの品質が低くなったりなど、プロジェクトが失敗する原因にもつながりかねません。
そのため、ステークホルダーマネジメントはプロジェクト管理で非常に重要な役割を果たします。
実際に、プロジェクトマネジメントの世界的ガイドであるPMBOKでも「10の知識エリア」のひとつとして取り上げられています。
▼PMBOKの概要については下記の記事からご確認ください
ステークホルダーマネジメントが重要な理由
ステークホルダーマネジメントが重要な理由としては、下記のようなものが挙げられます。
- 組織規模が大きくなるほど利害関係が複雑になる
- PMBOKの知識エリアに新設される
組織規模が大きくなるほど利害関係が複雑になる
ビジネスや組織が拡大するに比例して、利害関係者の数は増えてきます。
それぞれにとって“利害”は異なるため、たとえば「◯◯をすれば□□さんは得をするけど、△△さんは損をしてしまう」など、徐々に利害関係は複雑になってくるものです。
また、時間が経つにつれて利害が変化する可能性もあります。「以前までは◯◯にメリットを感じていたけど、今は状況が変わってしまって…」などのように、時間の経過とともに状況も変わってくるでしょう。
プロジェクトを進める際には、従来の取り組みでは管理が行き届かなくなる恐れもあるため、利害関係が複雑になる前に一度管理を見直す必要があります。
PMBOKの知識エリアに新設される
プロジェクトマネジメントの世界的な知識ガイド「PMBOK」では、2012年から新たに「ステークホルダーマネジメント」が10の知識エリアとして新設されました。
知識エリアとは、プロジェクトマネジメントを進める際に必要になる知識のことです。
▼10の知識エリア
- 統合管理
- スコープ管理
- スケジュール管理
- コスト管理
- 品質管理
- 資源管理
- コミュニケーション管理
- リスク管理
- 調達管理
- ステークホルダー管理
近年では、働き方の多様化やビジネスのグローバル化が進んだ影響から、同じプロジェクトのなかでもさまざまな価値観を持つステークホルダーが存在するようになりました。
このような背景を受けて、PMBOKではプロジェクトマネジメントを重要な役割であると位置づけており、日本国内だけではなく国際的にも重要性が再確認されています。
ステークホルダーマネジメントを実施するプロセス
ステークホルダーマネジメントは、下記のプロセスに沿って取り組む必要があります。
- ステークホルダーを特定する
- ステークホルダーマネジメントの計画を立てる
- ステークホルダー・エンゲージメントを管理する
- ステークホルダー・エンゲージメントをコントロールする
ステークホルダーを特定する
まずは利害関係を持つステークホルダーを特定することから始めましょう。
ステークホルダーの種類には、大きく分けて下記の2つがあります。
- 直接的ステークホルダー:プロジェクトや自社の活動に対して意思決定権をもち、直接的な影響をもたらす存在のこと。株主・従業員・顧客など。
- 間接的ステークホルダー:自社の活動に間接的な影響を与える存在のこと。たとえば地域住民・行政・従業員の家族・労働組合など。
それぞれを洗い出して「影響力はどれくらいあるのか」「現在はどのような関係性にあるのか」を改めて整理します。
ステークホルダーマネジメントの計画を立てる
ステークホルダーを洗い出せたら、ステークホルダーマネジメントにおける具体的な計画を立てます。
ステークホルダーごとに関係性や影響度を考慮しつつ、それぞれ「どのようにコミュニケーションを取るのか」という方針や計画を立てましょう。
あわせて下記のようなポイントを整理しておくと、担当者が変わっても均一なコミュニケーションを取ることができます。
- ステークホルダーとの関係性における課題
- ステークホルダーとコミュニケーションを取るタイミング
- ステークホルダーと共有するべき情報や確認するべき項目
また、ステークホルダーマネジメントでは「ステークホルダーがプロジェクトに良好な影響を及ぼすように促すこと」が重要になります。
コミュニケーションを失敗しないようにという観点はもちろんのこと、いかにエンゲージメントを高められるかという観点でも計画を立てる必要があります。
ステークホルダーのエンゲージメントを管理する
プロジェクトを進行する際には、ステークホルダーごとのコミュニケーション計画に基づいて、実際にコミュニケーションを取っていきます。
ステークホルダーとの関係性を構築するための取り組みのことを「ステークホルダー・エンゲージメント」といいます。ステークホルダーごとの特性を理解して、関係性や影響度を考慮しながら、適切にコミュニケーションを取ることが重要です。
コミュニケーションの方法としては、主に下記のようなものが挙げられます。
- 定期的な情報共有、進捗報告の会議
- 課題の特定や解決に向けたディスカッション
- カジュアルなコミュニケーションを含む交流の機会
適切なコミュニケーションの頻度はステークホルダーごとに異なるため、それぞれ最適な頻度を模索していきましょう。
ステークホルダー・エンゲージメントをコントロールする
ステークホルダーとのコミュニケーションは定期的に見直して、調整を図ることが重要です。
時間の経過とともに利害関係は変わるものです。「当初の計画通りにコミュニケーションが取れているか」はもちろんですが、現在の関係性も定期的に確認する必要があるでしょう。
また、ステークホルダー・エンゲージメントで大切なことは「自分たちも相手にとって重要な存在になること」であるといえます。相手にとっても自分たちはステークホルダーの1人です。短期的な利害関係に左右されすぎず、常日頃から信頼関係を築き、それぞれが困っているときに助け合える・協力しあえるような良好な関係を築くことが大切です。
ステークホルダーマネジメントを実施するポイント
ステークホルダーマネジメントを実施する際に重視したい、下記のポイントについて解説いたします。
- 円滑なコミュニケーションを心がける
- ITツールを導入する
円滑なコミュニケーションを心がける
ステークホルダーマネジメントで重要になるのは、ステークホルダーとのコミュニケーションを円滑に取ることです。
コミュニケーションの計画だけではなく、各担当者のコミュニケーションスキルも重要になります。担当者だけではコミュニケーションを取ることが難しくなった場合には、チームや上長と一緒に対応することも必要です。
また、コミュニケーションツールの選定も重要なポイントになります。メールやチャット、タスク管理ツールやガントチャートなど、コミュニケーションを取りやすい方法を検討しましょう。
エンゲージメントを可視化する
ステークホルダーには、従業員や協業先(外注、業務委託)といった実際に作業を行うメンバーも含まれます。
メンバーの作業時間を管理することは、プロジェクトに対するエンゲージメントを確認する際のひとつの指標になるでしょう。また、タスクの着手状況を確認したり、業務改善に向けたボトルネックの特定にもつながります。
一方で、実際には「誰が・何に・どれくらい時間をかけているのかを把握することは困難だ」と感じる管理者の方も多いのではないでしょうか。
作業時間の管理には、工数管理ツール「TimeCrowd」の導入がおすすめです。
TimeCrowdは、タスクの開始時と終了時にワンクリックで打刻をするだけで「どの業務(プロジェクト)に・どれくらい時間をかけたのか」を計測することができます。
▼TImeCrowdのレポート画面
メンバーごとに時間単価を設定すれば、プロジェクトごとの人件費や利益率を自動で算出することも可能です。プロジェクトごとの収支管理や、協業先の請求金額の見直しにも活用することができます。
累計4,000社以上の企業で導入いただいており、業種業界を問わず中小企業から大手企業まで幅広い企業様でご活用いただいています。
少しでもご興味のある方は、下記のサービス資料から詳細な機能や料金プランをご確認ください。
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近年では、ビジネスや人材のグローバル化が進み、各企業の利害関係者(ステークホルダー)はますます多様化しています。
ステークホルダーとの関係はプロジェクトの成否を左右するものであり、日々の信頼構築や適切なコミュニケーションが重要になります。
本記事を参考にして、ステークホルダーとの関係性やコミュニケーション方法をいま一度見直すことから始めてみてください。
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