カスタマーサポートやヘルプデスクの現場方で「どのような目標設定をするべきか」悩まれている方はいませんか。サポート品質の向上は企業の競争力で重要な役割を果たす一方で、定量的な指標設定/振り返りが難しく、目標設定に悩む方も少なくありません。
明確な目標設定を行うことで、組織全体の生産性向上や従業員のスキルアップ、そして公正な人事評価につながります。また、業務の方向性が定まり、日々の業務が具体的な成果につながる活動になるでしょう。
本記事では、目標設定の方法やポイントについて解説いたします。具体的な目標設定例まで紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
カスタマーサポート・ヘルプデスクの目標設定を行うメリット
カスタマーサポート・ヘルプデスクの現場で目標設定を行うことで、下記のようなメリットがあります。
- 業務改善につながる
- メンバーの習熟度がわかる
- 客観的な評価ができる
業務改善につながる
目標設定は、業務における具体的な改善点を見つけるきっかけとなります。
たとえば、「顧客満足度をX%向上させる」という目標を設定した場合、現状の顧客満足度を把握し、なぜその数値に留まっているのかを分析する必要があります。この分析の過程で、応答時間の長さ、解決策の提示不足、あるいはオペレーターの知識不足といった具体的な課題が見えてくるでしょう。これらの課題が明確になることで、優先的に取り組むべき改善策が洗い出され、具体的なアクションプランに落とし込むことができます。
メンバーの習熟度がわかる
目標は、個々のカスタマーサポートメンバーのスキルレベルや習熟度を客観的に把握する指標となります。
たとえば、「問い合わせの解決率80%以上」という目標設定を行った場合、この目標を達成できているメンバーとそうでないメンバーを比較することで、それぞれの強みと弱みを把握することができます。解決率が低いメンバーに対しては、どのような点が課題となっているのか、たとえば商品知識の不足やコミュニケーションスキルの未熟さ、あるいは特定の問い合わせ内容に対する対応経験の少なさなどが明らかになります。これにより、個々のメンバーに合わせた教育が可能になります。知識不足であれば研修プログラムを組んだり、コミュニケーションスキルが課題であればロールプレイングを実施したりと、具体的な育成計画を立てることができます。目標達成度合いを定期的に確認することで、トレーニングの効果測定も行えるでしょう。
客観的な評価ができる
属人的な評価に陥りがちなカスタマーサポートにおいて、目標設定は公平で客観的な人事評価を行うために欠かせない指標となります。
明確な数値目標を設ければ、一人ひとりの貢献度が可視化され、納得度の高い評価を行えます。また、仮に目標達成ができなかった場合でも、その原因を具体的なデータに基づいて分析することで、改善策を検討することができます。単に「頑張りが足りない」という漠然とした評価ではなく、「この部分が目標に届かなかったので、次はここに注力しよう」という具体的なフィードバックが可能になり、メンバーの今後の成長を促すことができます。
カスタマーサポート・ヘルプデスクの目標設定を行う際のポイント
カスタマーサポートの目標設定を行う際には、下記のポイントに気をつける必要があります。
- できるだけ定量的に行う
- 達成可能な目標にする
- 目標至上主義になりすぎない
できるだけ定量的に行う
目標設定において最も重要なポイントの一つは、できるだけ定量的に設定することです。
具体的な数値目標を設定することで、達成度合いが明確になり、メンバー全員が同じ方向を向いて努力することができます。たとえば、「顧客満足度を向上させる」という目標よりも、「顧客満足度アンケートの平均点を4.0から4.5に上げる」という目標の方が、何をすべきかが明確になります。顧客満足度を上げるためには、応答時間を短縮するのか、問い合わせ解決率を上げるのか、あるいは個別の対応品質を向上させるのかなど、具体的な施策が見えてくるでしょう。
達成可能な目標にする
目標設定を行う際には、その目標が現実的に達成可能であるかどうかを考慮する必要があります。いくら素晴らしい目標でも、あまりにも非現実的であったり、現状の能力やリソースでは到底達成できないような目標では、かえってメンバーのモチベーションを低下させてしまう可能性があります。
高すぎる目標設定は、早期の諦めや、達成不可能であることへの不満につながりかねません。達成可能な目標設定を行うためには、まずは現状のパフォーマンスを正確に把握することが不可欠です。過去のデータや実績を分析し、何ができていて、何が課題なのかを客観的に認識することから始めます。そのうえで、目標達成に向けて必要となるリソースを考慮し、無理のない範囲で、多少のストレッチが効いた目標を設定しましょう。
また、目標は一度設定したら終わりではなく、定期的に見直しを行うことも重要です。市場環境の変化、顧客ニーズの変化、あるいはチームの成長などによって、適切な目標レベルも変化していきます。進捗状況を定期的に確認し、必要に応じて目標の修正を行う柔軟性を持ち合わせることで、常に最適な目標設定を維持することができます。達成可能な目標は、メンバーの努力を促し、着実な成功体験を積み重ねることで、さらなる成長へとつながっていくのです。
目標至上主義になりすぎない
目標設定は重要ですが、目標至上主義に陥りすぎないように注意することも大切です。目標達成のみに囚われてしまうと、顧客対応の質が低下したり、メンバーが疲弊してしまったりするリスクがあります。たとえば、「一件あたりの処理時間を短縮する」という目標を追求しすぎると、顧客への説明が不十分になったり、顧客の真のニーズを見逃してしまう可能性があります。結果として、顧客満足度が低下し、長期的な顧客ロイヤルティを損ねる事態にもつながりかねません。
目標はあくまで、カスタマーサポートの質を高め、顧客体験を向上させるための手段としてあるべきです。目標達成の過程で、顧客への共感や丁寧な対応といった、数値では測りづらい定性的な要素が疎かにならないように、常に意識しておく必要があります。
また、目標達成のプレッシャーが過度になると、メンバーが精神的に追い詰められ、離職率の増加やチーム全体の士気低下を招く可能性もあります。目標設定と同時に、メンバーのウェルビーイングや働きがいにも配慮することが重要です。目標達成を促すインセンティブと、精神的なサポートの両輪で、メンバーが安心して業務に取り組める環境を整備しましょう。数値目標だけでなく、顧客からの感謝の声や、メンバー間の助け合いといった定性的な評価も積極的に取り入れることが重要です。
カスタマーサポート・ヘルプデスクの具体的な目標(KPI)設定例
カスタマーサポートの目標設定は、具体的な指標である「KPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)」を用いることで、明確かつ効果的に行うことができます。
ここでは、カスタマーサポートでよく用いられる具体的なKPIの例とその意味やポイントについて解説します。
顧客満足度
顧客満足度は、カスタマーサポートの最も重要なKPIのひとつであり、顧客がサービスや対応にどれだけ満足しているかを示す指標です。一般的には、アンケート調査やフィードバックを通じて測定されます。
▼測定方法
- NPS(Net Promoter Score): 「この企業(またはサービス)を友人や同僚に勧める可能性はどのくらいですか?」という質問に対し、0~10点の11段階で回答してもらい、9~10点を「推奨者」、7~8点を「中立者」、0~6点を「批判者」として、推奨者の割合から批判者の割合を引いた数値で算出する
- CSAT(Customer Satisfaction Score): 顧客対応後に「今回の対応に満足しましたか?」といった質問に対し、「非常に満足」「満足」「普通」「不満」「非常に不満」などの段階で回答してもらい、満足以上の回答の割合を算出する
- CES(Customer Effort Score): 「今回の問題を解決するために、どれくらいの労力が必要でしたか?」といった質問に対し、1~7などの段階で回答してもらい、顧客がサービスを利用する上で感じた労力の少なさを示す指標を計測する
これらの指標を活用することで、たとえば「NPSを+5ポイント向上させる」や「CSATの満足度評価を90%以上にする」といった具体的な目標を設定することができます。
一次応答までの時間
一次応答までの時間は、顧客が問い合わせをしてから、最初にカスタマーサポートから何らかの応答があるまでの時間を示す指標です。この時間が短ければ短いほど、顧客は迅速な対応を期待することができます。
▼測定方法
- 顧客からの問い合わせ受信時刻から、最初にオペレーターや自動応答システムなどからの返信が送信された時刻までの平均時間を測定します
メール・チャット・電話など、チャネルごとに測定するのが一般的です。 「メール問い合わせに対する一次応答時間を24時間以内にする」、「チャット問い合わせに対する一次応答時間を5分以内にする」といった具体的な時間を設定しましょう。
一件あたりの処理時間
一件あたりの処理時間(Average Handling Time: AHT)は、顧客の問い合わせ一件を完全に解決するまでに要した平均時間を示す指標です。これは、オペレーターの効率性や、問題解決能力を測る上で重要なKPIとなります。
▼測定方法
- 顧客からの問い合わせ受付開始から、問題解決、対応終了までの平均時間を測定。「電話問い合わせの一件あたりの処理時間を5分以内にする」といった具体的な時間を設定する
ただし、AHTを短縮することは効率化につながりますが、短縮を追求しすぎるあまり、顧客対応の質が低下しないように注意が必要です。顧客満足度とのバランスを考慮したうえで目標設定を行うことが重要です。
また、オペレーターが迅速にアクセスできるような情報システムの整備や、頻繁に寄せられる質問に対するテンプレートの準備なども効果的です。
問い合わせの解決率
問い合わせの解決率(Resolution RateまたはFirst Contact Resolution Rate: FCR)は、顧客からの問い合わせに対して、一回の対応で問題を解決できた割合を示す指標です。
とくにFCRは、最初に問い合わせがあったその場で問題が解決できた割合を示すため、顧客にとっての利便性に直結します。
▼測定方法
- 解決率: 期間内に受け付けた問い合わせのうち、解決済みと判断された件数の割合を計測する
- FCR: 最初に顧客から問い合わせがあったコンタクト(電話、チャット、メールなど)で、それ以上別のコンタクトを必要とせずに問題が解決した件数の割合を計測する
たとえば 「初回コンタクトでの解決率を80%以上にする」といった具体的な割合を設定します。このKPIは、オペレーターの知識レベル、問題解決能力、そして対応に必要な情報の提供状況を図る指標となります。
解決率を高めるためには、オペレーターに対する継続的なトレーニング、ナレッジベースの充実、FAQの整備、そして顧客への適切なヒアリングスキルが必要です。また、顧客が何度も問い合わせをする手間を省くことで、顧客満足度の向上に大きく貢献するでしょう。
エスカレーション回数
エスカレーション回数は、オペレーターが対応中に顧客の問題を解決できず、上位の担当者や別の部署に引き継いだ(エスカレーションした)回数を示す指標です。エスカレーションが多いということは、オペレーターの知識不足や権限不足、あるいは対応フローの不備を示唆している可能性があります。
▼測定方法
- 一定期間における総問い合わせ件数に対するエスカレーション件数の割合、またはオペレーター一人あたりのエスカレーション回数を計測する
たとえば 「エスカレーション回数を月間X件以下にする」や「エスカレーション率をY%以下にする」といった具体的な数値を設定します。このKPIの削減は、オペレーターのスキルアップや権限付与の範囲拡大、明確な対応フローの構築、そして問題解決に必要な情報へのアクセス改善によって達成されます。
エスカレーションが減ることは、顧客を待たせる時間の短縮、対応の迅速化につながり、結果として顧客満足度の向上に貢献するでしょう。
まとめ
カスタマーサポートにおける目標設定は、単なる形式的なものではなく、部門全体のパフォーマンス向上、個々のメンバーの成長、そして最終的な顧客満足度の向上に不可欠な取り組みです。目標設定を行うことで、現状の課題を特定し、具体的な改善策を実行するきっかけとなります。これにより、効率的な業務フローの確立や、新たなツールの導入などが促進され、生産性の向上につながります。さらに、目標に基づく評価は客観的かつ公平な人事評価を可能にし、メンバーのモチベーション向上と納得感のあるフィードバックにつながるでしょう。
効果的な目標設定を行ううえでは、いくつかの重要なポイントがあります。とくに「できるだけ定量的な目標を設定する」ことは、適切な振り返りや改善を行ううえで欠かせません。
工数管理ツールTimeCrowdなどを活用し、「誰が・どの業務に・どれぐらい時間をかけているか」を可視化するのがおすすめです。一部のCTIツールとの連携が可能なため、たとえば通話の開始時と終了時には、システムと連携して自動で打刻が行われます。また、通話の終了時には、次に着手するタスク(例:通話内容の記入作業)を自動で打刻することも可能ですので、メンバーの負担を最小限に抑えたうえで導入〜運用まで進めることができます。
累計5,500社以上の企業で導入いただいた実績から、各社の業務環境に合わせたご提案が可能です。少しでもご興味のある方は、下記のサービス資料から詳細をご確認ください。