働き方改革スタートの令和元年、昭和・平成的働き方は変わるのか

2019年、元号が改正され新しい時代「令和」がやってきます。時を同じくして、政府の働き方改革関連法が順次施行されています。長時間労働の是正や、有給休暇の取得など、ワークライフバランスを整えようという働き方改革ですが、実際に、日本人の働き方はどの程度変わっているのでしょうか。

働き方改革への評価は50点以下

2018年6月の法案成立以前から、ほとんどの企業において何かしらの形で進められているといわれる働き方改革。しかし、実際の評価としては厳しいものとなっているようです。

株式会社日経HRが2018年7~8月におこなった働き方改革に関する意識調査によると、自社の働き方改革の評価平均は「48.5点」と50点を下回っており、法案施行後も自分の働き方は変わらないと予想している人が大半を占めています

法案の項目の中でも、注目されているのは「有給休暇の取得義務化」です。こちらについては約4割の人が期待できると回答しており、法によって義務化されることで取得推進が期待されます。

対して、比較的関心度の高い「同一労働同一賃金」については、8割以上の人が「変わらない」もしくは「やや悪くなる」「もっと悪くなる」と回答しています。

働き方改革では、有給休暇や残業規制などワークライフバランスの適正化といった項目が重視されがちですが、実際に日本の労働者の約4割はパートやアルバイトなどの非正規雇用者だということはご存知でしょうか。

総務省労働力調査によると非正規雇用者の割合は、2019年2月時点で38.2%となっています。同時に、その4割近くの人の中には有給休暇などない人が多いというのが現状です。休んでもその間賃金が支払われないため、収入を得るには休まず働くしかないのです。

さらに、かつての「パート」とは違い、現代の日本では非正規労働者でも家計の柱となっている人、パートやアルバイトのみで家計を支えている人も多くいます。

同一労働同一賃金を阻む壁

私自身、正社員と時給制の派遣社員、どちらの経験もあります。正社員で働いているときは気づきませんでしたが、月給制で年2回の賞与もあるということは、ものすごく恵まれた環境だったのです。

派遣社員として働いていた会社では、人件費削減のため今後事務職を新たに正規雇用することはやめてすべて派遣社員にしていくという方針のようでした。派遣社員といってもフルタイム勤務で、業務内容は正社員と同じです。しかも、私が引き継ぐ前は社員1名とパート1名でしていた業務だったので、2名分の業務を社員1名以下の賃金で請け負っていたことになります。

時給制で賞与はなし。時間外勤務手当は付きますが、正社員の月収とはかけ離れていたと思います。

働き方改革関連法案での「同一労働同一賃金」。これが実現しにくい理由は、日本特有の雇用にあるといわれます。諸外国に多い、個人のスキルに合った職務を前提とした明確な採用でなく、新卒を一括で採用した後、その企業内での知識と経験を積ませて配属や職務を決めるというものです。就職というより、就社です。これにより多くの企業では未だ年功序列が当然となっています。たとえ能力があっても、その企業での経験値が浅い労働者と勤続年数の長い正社員とでは、同じ仕事をしていても収入格差が生じて当然ということになります。

バブルの時代、深夜まで働き、休みもなく走り続けてきた人は多いですが、それは働きに見合った収入が得られたことも大きいのではないでしょうか。

平成以降の景気低迷で終身雇用制度も危うくなってきている時代に、未だ定着している新卒採用で企業戦士を育てるという雇用法。これが根付いていては、どれほど知識や技術が活かせる分野に転職しても、また一からのスタートになってしまうのです。正規雇用でなければなおさらです。

収入の底上げがなければ、消費の底上げも期待できません。いくら働いても将来への不安は解消されず、しかし日々の生活のために働くしかない。余暇を楽しむ余裕などなく、節約に励むしかない。正規、非正規にかかわらず、そんな人は多いのではないでしょうか。
うつ病などの精神疾患患者数が増加しているのも、将来への不安や、過酷な労働環境の中で「努力に見合った収入が得られない」ということも大きく関係していると思います。

令和時代は「昭和・平成の働き方」からの脱却が課題

日本で働き方改革を進めるには、これまでの働き方を根本的に見直す必要があるといえるでしょう。欧米では終身雇用制度はなく、キャリアアップのための転職が一般的だといわれます。日本ほど転職に躊躇せず、自由に自分のスキルを活かせるよりよい仕事を探す場が開かれているのです。

すべての人が、能力さえあればより良い環境やキャリアアップを求めて転職できる、そこで働きに応じた収入も得られる。こうした状況になって初めて、余暇を楽しむことができ、消費への意識も変わるのではないでしょうか。

日本人はただでさえ休み方が下手だといわれます。総合旅行サイト・エクスペディアジャパンの調べでは、有給休暇取得率も3年連続で世界最下位となっており、6割近くの日本人が休むことへの罪悪感があると回答しているそうです。

非正規雇用が増えたり、終身雇用が保証されなくなったりと、そういった面では諸外国を追っているのに、自由な働き方や休み方といった面では遅れすぎている日本。将来への不安や焦りを感じる人が多い中で、ただ休む権利だけ与えられても満たされることは少ないと思います。ワークライフバランスの実現も、消費の底上げも、まずは収入から底上げし、将来への不安を軽減することからではないでしょうか。

日本という国が、もっと自由に働けて、仕事も仕事以外の時間も楽しみながら過ごせる国になるために、本当の働き方改革が促進されるよう願います。

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