マルチタスクがおすすめできない5つの理由

時間管理をきちんとし、仕事の効率を上げようとする際に、マルチタスク(複数の仕事を同時にこなすこと)を実践する人は多いのではないでしょうか。さまざまな仕事を同時進行することは、時間の短縮や仕事自体の効率化にも繋がる印象が強く、マルチタスクができる人は有能である感じがしますよね。今回は、そんなマルチタスクの意外な側面を紹介します。

マルチタスク神話

よくIT系の専門用語としても使われるマルチタスクですが、「マルチタスクをする」というのは、「複数の仕事を同時進行する」ことを表します。歩きながらスマホをいじったり、会議中にメールを送ったり、夕食を作りながら友達に連絡したりと、マルチタスクをする日々を送っている人は多いと思います。昨今では、むしろマルチタスクをしない事の方が時間の無駄であるように感じられるのではないでしょうか。

しかしこのマルチタスクは、実際のところ、思ったほど効率が良くないのだそうです。以下でマルチタスクをやめるべき5つの理由を紹介します。

理由①実はマルチタスクをしていない

「感情の応急処置(Emotional First Aid)」という本の著者である、心理学研究者のウィンチ博士によると、マルチタスクと呼ばれる仕事の取り組み方は、実は、タスク・スイッチング(仕事の切り替え)というべきものなのだとか。

なぜなら、人の脳には許容量の限界があり、私たちが期待するほど、集中力と生産性を同時に発揮できないからだそうです。よって、人がマルチタスクをしようとしているときは、複数の仕事を同時進行しているのではなく、実際にはいろいろな仕事に取り組んではやめて、また別のものに取り組む、といった切り替えを行っているだけとのことです。

結果として、いろいろなことに手を付けたり止めたりするという、その切り換え自体に集中力を持っていかれてしまいます。更には、常に他の仕事のことが頭の片隅にあるので、かえって集中力も生産性も上がらないという非効率な状況に陥るという傾向があるそうです。

理由②ミスが増える

ある専門家の調査で、仕事を頻繁に切り替えることで、その効率は40%も下がるという結果が出ました。それに加えて、特に論理的な思考力を使う仕事をする際には、ミスも増えやすいと言われています。

2010年にフランスで行われた調査によると、人間の脳が一度に扱える仕事は2つまでなのだとか。これは、右脳と左脳が、2つの仕事を平等にうまく分担してくれるからだそうです。しかし、そこに3つ目の仕事を加えてしまうと、脳のキャパがオーバーして混乱が起き、ミスが増えるという結果になるそうです。

理由③マルチタスクはストレスの原因になる

カリフォルニア アービン大学の調査員が、常に会社のメールの確認を求められている人たちと、そうでない人たちの心拍数を比較する研究を行いました。

その結果、会社メールの確認を求められる人たちは、常に心拍数が高く、高いストレス状態に置かれているということがわかりました。反対に、常に会社メールを確認すること求められていない人たちは、マルチタスクの必要が減るおかげで、ストレスも少ない状態であるということがわかったそうです。

理由④記憶力が悪くなる可能性がある

2つのことを同時進行する、例えば、テレビをつけっぱなしにしながら本を読んだりすると、テレビにも本にも、集中力が分散するせいで内容の理解が浅くなるということは、なんとなく想像がしやすいですよね。

それだけでなく、1つのことに集中している途中で、急に別のことに集中することも、短期記憶を悪くする原因になるということが、2011年に行われた調査でわかりました。

カリフォルニアのサンフランシスコ大学の研究者が、調査対象者に、写真に写っているシーンを記憶してもらう実験を行いました。この実験では、1枚目の写真を覚えている途中で、突然別の写真も渡し、そちらも覚えるようにしてもらいました。すると、2枚目の写真の記憶力が悪くなり、特に60歳~80歳の人には顕著にこの結果が現れました。結果として、脳が年を重ねるにつれて、特に、人が集中している途中で一旦邪魔が入ってしまうと仕事の効率が下がるということがわかったそうです。

理由⑤仕事が遅くなる

実は、マルチタスクは時間を無駄にしています。2008年にアメリカのユタ大学で行われた調査で、運転手が電話をしながら運転すると、目的地に到着するまでにより長く時間が掛かるという結果が出たそうです。この結果から、運転と会話の間で意識が行き来してしまうので、電話をしながらの運転は余計に時間がかかってしまったということがわかります。

ウィンチ博士によると、それぞれの仕事には異なる心の準備が必要で、いちいち対象を変えると心の準備をし直さなければならなくなり、結果として時間の無駄になってしまうのだといいます。ウィンチ博士がすすめるのは、マルチタスクではなく一括作業と呼べるやり方だそうです。個々の仕事をひとつずつこなして終わらせていく方が、時間の節約になる傾向にあるそうです。メールを返信し始めたのならば、全部済ませてしまう。支払いを始めたのならば、溜まっていた支払いを全部済ませてしまう。一度、何かの仕事を始めたら、それを済ませてから次に移る方が、改めて心の準備をする必要が減り、効率が良くなるそうです。

こちらの記事を参考にしています。

まとめ

マルチタスクと聞くと、一気に複数の仕事を同時進行させることができるので、効率が良く、時間が節約できる仕事の取り組み方のように思えますが、実は違うということがわかりました。

現代はスマホひとつでどこにいても連絡がついてしまう世の中なので、ひとつの仕事をしているときに別の仕事が舞い込んでくることは日常茶飯事ですし、集中したいときにメールや電話が入ることも頻繁にあると思います。

大切なのは、ひとつひとつの仕事に集中して取り組む癖をつけることです。集中して仕事に取り組んでいるときは、スマホのメールのアラートを切っておくなどの工夫も効果的なのではないでしょうか。メールがきたからといって今の仕事を中断し慌てて返信するのではなく、仕事がひと段落ついてから返信する。仕事が溜まっているからといって2つの仕事に同時に取り組むのではなく、それぞれの仕事にかける時間と優先順位をきちんと決め、メリハリをつけて取り掛かる。そうしてひとつひとつの仕事それぞれに全力で集中力を注ぐことこそが、なによりの時間の節約になります。

ぜひ試してみてください。

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