1年を振り返るのに欠かせないコルブの経験学習モデル

私たちは、言語やスポーツ、お箸の持ち方まで、繰り返し練習することで、やり方を覚えていきます。仕事も同じように、繰り返し作業することや経験することで、徐々にスキルアップしていくことができますね。

社会人のスキルの約70%が、経験を積み重ねることによって身についたものだというデータもあるそうです。しかし、いくら経験を積み重ねていても、乗り越えられない壁や、毎回同じところで立ち止まってしまうこともあるでしょう。

そんなときに役立つのが「経験学習」です。同じことを繰り返さないように、同じような局面を迎えた際適切に対応できるよう、「経験」を生かしてレビューを行います。それによってより多くの、あるいはより高いスキルが身につき、同じ失敗を繰り返さなくなるのです。

経験学習に役立つのがデービッド・コルブの「経験学習モデル」です。「ただ経験を振り返って反省する」のではなく、4つのステップに添ってロジカルに考えていきます。ぜひ、今年1年の仕事のレビューに取り入れてみてください。

コルブの経験学習法とは

よくレビューや生産管理に使われるのが、PDCAサイクルではないでしょうか?

計画(Plan)をたてて、行動(Do)し、行動の確認(Check)を行い、改善点を洗い出してまた行動(Action)するのが、PDCAサイクルですね。コルブの経験学習は、もっとさまざまな視点を加えていきます。そのため、より的確な振り返りと、実践的なPlan(計画)が完成するのです。

コルブの経験学習法は、具体的な経験→省察→概念化→試行の順に進んでいきます。まずは具体的な経験から始まります。1年の仕事を思い返してみましょう。

「あの時は、アポイントの時間を間違えて失敗したな」や「あの商談はとってもうまくいった」など、思い出す出来事があるでしょう。その中から、もっとも印象が深いものを3つ取り上げていきましょう。

そして、それが詳しくはどんな内容だったか思い出します。この時、思い出さなければいけないのは、感情を排除した物事だけです。例えば、あなたが「大きな契約を結んだ」ことが、一番印象に残っているとしましょう。その内容をより詳細に思い出しましょう。

「月の売上が1000万あるA社に3ヶ月かけて営業をかけたところ、最も利益の高いSプランの契約がとれた。」これが具体的な経験です。その後、この経験を省察していきます。つまり、振り返って、考察するということです。

「何が成功の秘訣なのか」「どうしてうまくいったのか」「決め手は何だったのか」と具体的な経験をさまざまな角度から自分で考え、自問自答を繰り返しながら振り返っていきます。

この時、あくまでも感情やスピリチュアルなことを含めないのがポイントです。「この日は占いで1位だったから」「なんとなく、いい感じに営業トークができたから」などを省察に加えてしまうと、経験が何も生かせなくなってしまいます。

そして省察した内容を次に概念化していきます。

概念化とは、その省察した内容をどんな場面でも役立つよう、明解な表現に落とし込んでいく作業です。…といっても、なかなか急に概念に落とし込むのは、最初は難しいですね。

そんなときは、省察で挙げたさまざまな物事を、自分の中でひとつの成功のルールに組み立てていくといいでしょう。そして、その概念化した内容をもとに試行するのが最終工程です。概念化されたものはあくまでも仮説なので、仮説をもとに経験を繰り返していくのです。

この方法を取り入れるだけで、失敗の回数がより少なく、ひとつの経験から得られるものがより大きくなるのです。

コルブの経験学習モデル~例~

先ほどの説明だけでは、きっとまだイメージがわかないですよね。身近な経験をコルブの経験学習モデルに落とし込んでいきましょう。

例えば、豚の角煮を作ったとしましょう。具体化すると、「みんながおいしい!と口をそろえていってくれる、今までで一番おいしい豚の角煮を作れた」という経験です。この経験を省察していきます。

「いつもの角煮と違う作り方をしたのか?」「それはどんな作り方だったか」「豚肉はいつもと同じ豚肉なのか?」「どうして、今までで一番おいしいと感じてもらえたのか」と自分に質問を繰り返します。

その後、質問の回答とともに概念化していきます。

「いつもの角煮と違う作り方をしたのか?」→いつもの倍の時間、2時間下茹でした。酒は調理酒ではなく、泡盛を使用した。「豚肉はいつもと同じ豚肉なのか?」→いつもは、スーパーで一番安いバラ肉を買っていたけれども、今回は脂の乗った国産のバラ肉を購入した。

「どうして、今までで一番おいしいと感じるのか」→食べた瞬間にとろけるような食感で、味もたっぷり染み込んでいる。

この概念化から、次も今までで一番おいしい角煮を作るための仮説をたてます。

今までで一番おいしい豚の角煮を作るためには、豚肉は脂がたっぷりのった国産の豚肉を使用し、2時間下ゆで。そして、酒は泡盛を使用。いつもの味付けで煮込むとおいしい豚肉に仕上がる。

となります。そして、これを実際に試行してみます。上手くいけば、今後は常においしい豚の角煮がつくれますね。

そろそろ仕事納めの時期です。ぜひ、来年のスタートに向けて、コルブの経験学習モデルで1年のレビューをしてみましょう。

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