ディレクターのMotohiroです。
2017年10月2日、TimeCrowdはタイムクラウド株式会社を運営会社とすることを、みなさまにお知らせ致しました。
その舞台裏のひとつを紹介したいと思います。
タイムクラウド株式会社を設立するにあたって、利用規約の修正やコーポレートサイトの作成などの作業に追われつつ、
企業理念を作るという、Googleに聞いても悩んでしまうような難しいミッションを与えられました。
実際、どうやって作ったらいいかという情報は非常に少なく、自分なりに試行錯誤するしかなと腹をくくり、
約3ヶ月ほどかけて、やっと生み落とすことが出来ました。
その企業理念がこちらです。
「生きた時間」を増やす
「生きた時間」とは何かを、私たちは定義していません。
チームによって、どんな時間に価値があるかはそれぞれだからです。
私たちは、人々の時間を見える化することで、
チームごとに定義された「生きた時間」を増やします。
この、たった5行を生み出すためにやってきたことを、赤裸々に書きたいと思います。
目次
まずはブレストと社長の頭の中を知る作業。
当時、まだチームに入ったばかりで、TimeCrowdのことを深くは知れていませんでした。
なので、まずは自分なりにキーワードを出す作業を行いました。そのときのリストはこちら。
- 時間共有(大事)
- 社員は全員リモート(大事)
- 長時間労働は趣味じゃない(大事)
- 仕事<家族、大きな声でそれを言っていい会社
- 疎結合だけど密結合
- 肉食系営業より外に出ない営業
- 新規ガツガツより半径うんメートルの近い人達と幸せになりたい
- フリーランスも救うし、サラリーマンも救うツールである
- TimeCrowdでみんなが継続的に食べられて、他に面白いことができたら幸せではないか(三宅さんより)
- 時間共有するといいことがある
- 現在、未来、過去の時間を見つめ直すことができる
- 時間を共有することは人とのつながり
- 時間を共有すると、生きた時間が増える
- そういう人をふやしたい
- 最終的には人間がTimeCrowd使わなくていい世界観
よくわからない言葉もありますが、これがありのままのものです。
ここから、キーワードは「時間」と「人」だということがわかりました。
人が生き生きするためには、時間を仲間と共有したり有効活用することが必要だということにたどり着きました。
また、最後の「最終的には人間がTimeCrowd使わなくていい世界観」という言葉。
これは弊社代表の西小倉さんと話したときにでた内容です。
TimeCrowdとは、人のオペレーションを可視化して効率を上げていくためのツールであり、
機械が代替できない人間にしか出来ないこと=イノベーションについては、TimeCrowdで図る必要がないというのが私たちの考えです。
なので、オペレーションがこの世からなくなったら、TimeCrowdは必要がないのです。
人が人しか出来ないイノベーションだけを行う世界、これがTimeCrowdの最終形態ともいえます。
更に、会社としてのやること・やらないことをリスト化してみました。
やること
- 時間を見つめなす行為
- 人が主役になること
- 人間にしか出来ないこと
- 人と会わない営業
- 好きな服をきて仕事をする
- 満員電車に好きで乗らない
- 自分のペースで仕事をする
- ユーザーファーストの開発
- 少数精鋭
やらないこと
- 時間の無駄遣い
- 幸せにすべき範囲外のものに労力を割く
- 人じゃなくても出来ること
- ガツガツした営業
- スーツを着る
- 満員電車にいやいや乗る
- 同じ時間に通勤する
- 権力や企業贔屓優先の開発
- 会社の3割の社員によって成り立つ操業
かなりチームの色が出たなと思う内容です。先程のリスト同様、時間と人がキーワードだとハッキリわかりました。
ここから読み取れることは、「ありのままの自分で生きること」が大事なんだなということです。
頑張って居続けなくちゃ出来そうにないこと、窮屈そうなことにはNOと言い、
自分の居場所を確保しながら生きていけることを選択することを正としたいチームのようです。
第一案:生きた時間を共有しよう
これらを踏まえて、一度作ってみました。
生きた時間を共有しよう
人は誰でも限られた時間の中に存在しています。
AIが人間の仕事を奪うなんて言われる時代に、人はどんな時間を過ごすべきなんだろう。
限りある時間の中で、
「生きた時間」を見つめるきっかけ作りを。
それがわたしたちのミッションです。
AIに仕事を奪われるという話をする機会もあったので、その話を混ぜながらです。
今思えば、方向性としてはとてもいい線言っていますが、AIの話がこの先何十年も通用するのかよくわからないし、
きっかけを作ることが最終ゴールかと言われれれば、言葉が弱いと思ったので次の日にはボツ案となりました。
一発目からさくっと出来るとは思ってはいませんでしたが、
ここからFIXさせるまでに数ヶ月かかるとは、想像もしていませんでした…!
第二案:感情が伴う社会を作る
感情が伴う社会を作る
人にとって「活きた時間」とはなんでしょうか。
それは、感情が伴い、人として当たり前の営みが出来る時間のことだとわたしたちは考えています。
人は有限の時間から解放されることはありません。
しかし、その時間をどのように過ごすのか、答えは無限です。
タイムクラウドは、時間の見える化を通して、お客様自身が気づきを発見し、より未来の時間を有意義に過ごせるよう問題提起を行う存在でありたいと考えています。
この言葉が出てきた経緯は、西小倉さんが突然Skypeでこんなことを言い出したところから始まります。
「僕が作りたいのは…嘘をつかなくてもいい社会なんです!」、と。
それでは、この線で作ってみましょう、ということでヒアリングをしましたが、その話は経営者としての素晴らしい姿そのものでした。
家庭や社会、学校で自分を偽って生きていると思っている人はたくさんいると思います。
もしくは、やりたくないことをやる毎日に窮屈な思いをしている人も、同じくらいたくさんいると思います。
そんな「死んだ時間」を過ごさず、自分の居場所だと思える場所で「生きた時間」を過ごせる社会を作りたい。
それが西小倉さんの思いでした。
その思いを踏まえて出てきた言葉は「感情が伴う社会を作る」です。
嘘をついて生きているという状態は、自分の感情が死んでいるということとイコール。
自分を押さえ込んだり無理をせずに、自分らしくいられる社会=感情が伴う社会としました。
しかし、ボツになった理由は、感情という言葉にはマイナスなものも含まれているということと、
なんか生っぽい言葉だからという理由で、しっくりこなかったからです。
そのままの言葉で、「嘘をつかなくてもいい社会を作る」でいいじゃないかとも思いましたが、
否定語が企業理念に含まれているのは、ネガティブな感じがしてイヤだなと思って辞めました。
へこんでる暇はありません。次!
第三案:今日生きた時間は、明日の居場所になる。
今日生きた時間は、明日の居場所になる。
時間とは、豊かさを生み人に居場所を与えるものです。
タイムクラウド株式会社は、時間を振り返り・仲間と共有し・未来を考えるきっかけを提供し、
時間を通して、人々の「居場所」作りを応援します。
次のキーワードは「居場所」です。戻ってきました。
これも西小倉さんからの突然のSkypeがきっかけです。
「キーワードは、居場所だと思うんですよ…!」と。じゃあその線で考えてみましょう。(淡々と)
このとき共有された記事のことや話したことは、西小倉さんが記事にしています。
人は豊かさを求めてせっせと働いているけれど、日々忙しさに追われて豊かさを失っている。
このような状態を改めるのがTimeCrowdの使命だということを伝えられたらという思いを込めました。
豊かさを手に入れるために、人生の時間を見つめ直す存在でありたいという思いが詰まった言葉です。
「今日生きた時間は、明日の居場所になる。」この言葉は、正直、降りてきた!という感じがしました。笑
西小倉さんからも、一番しっくりくると言われて、これで決まりか?!と内心思いました。
が、しかし。
「生きた時間」と「居場所」のイコール感がなかなか伝わらないね、という話に。
確かにその通りで、生きた時間がなぜ居場所になるのか、うまく伝えられなかったと感じました。
今日と明日を掛けてあるあたり、我ながらまとまったなとは思ったものの、
結局何が言いたいのか、TimeCrowdを知らない人がわからないなら何の意味もないので、ボツ!
ここで気づいたことは、「コンテキストがないと伝わらない」ということ。
TimeCrowdの中の人としては意味が通じる話でも、TimeCrowdのことを知らない人が見てもわからない…ということです。
その壁を越えられなければ、納得のいく企業理念は出来ない、ということを突きつけられました。
これに気づいてからは、いろいろ案を出しても「よくわからない!!」とボツになっていきました…
でもくよくよしている時間はありません。次!
第四案:生きた時間を増やす
生きた時間を増やす
時間とは、人を変え、生活を変え、世界を変えることが出来る概念です。
有限の時を生きる私たちには、たくさんの「生きた時間」が必要です。
タイムクラウドは、人々の生きた時間を増やし続けていきます。
正直、「今日生きた時間は、明日の居場所になる。」から大スランプを迎えていました。
時間に関する名言集を読んだり、とにかくGoogle先生に単語をかけ合わせて聞いてみたり、
好きな企業の企業理念を読み漁ったり。とにかく言葉が出てこない…
あまりに何も出てこないので、改めて西小倉さんの話を聞こうと思いました。
今頭のなかにあること、ひたすら喋ってみてくださいと。
そこで出てきたのが、「時間の格差をなくす」ということ。
例えば、上流階級の人は豊かな生活をしてて下流の人は時間に追われている状態で、
でも本来は、時間に追われている人こそTimeCrowdを使って豊かな時間を手に入れるべきなんです。
「死んだ時間」をなくし、「生きた時間」を手に入れる。
そこで、いくつも案をボツにしてきた「生きた時間」「死んだ時間」がこの話にひも付きます。
これですよこれ。これにしましょう!
と、咄嗟にまとめたのがこの言葉たちです。
ここで、「生きた時間を増やす」は確定しました。
ただ、ここでもコンテキスト問題が勃発。
時間がなぜ世界を変えるのかや、生きた時間って何?の大事な部分が伝わってないので…ボツ。
第五案(FIX):生きた時間を増やす
「生きた時間」を増やす
「生きた時間」とは何かを、私たちは定義していません。
チームによって、どんな時間に価値があるかはそれぞれだからです。
私たちは、人々の時間を見える化することで、
チームごとに定義された「生きた時間」を増やします。
第三案を出すあたりから、正直、わたしの中で相当メンタルが参っていました。笑
西小倉さんに共有しては、「何か違くない?」と言われることを何度も繰り返していたからです。
そう言われるのは当たり前で、コンテキスト問題を解決出来たわけでもなく、
自分で納得した文章でもなければ、腑に落ちる感覚もない文章ばかりが溢れるようになっていました。
でも、妥協して、「これでいいや」という言葉がずっと会社の掲げる理念になるのは、もっと嫌です。
TimeCrowdの原点である童話「モモ」を読み返したり、働き方改革の切り口で時間というものを考えてみたり、
今までの文章を取っ払って考え直すことにりました。
いくつか案を出して西小倉さんに共有して、更に言いたいことを箇条書きでまとめ直しました。
- 「生きた時間」とは何かをわかってもらうこと
- 「生きた時間」が増えると何故嬉しいのかをわかってもらうこと
- タイムクラウド株式会社は「生きた時間を増やす」ことがミッション
これらを文章をもとに組み立ててみようというスタートラインに立ち、西小倉さんとディスカッションしました。
そして、「そもそも生きた時間って何?」を西小倉さんと考え直しました。
いろいろな言葉が出て、「好きな人と一緒に過ごす時間」「人のために何かをしている時間」などがあがりました。
ふと違和感を感じたのが、私自身があまり西小倉さんの思う「生きた時間」に共感出来なかったことでした。
西小倉さんの「生きた時間」は、自分のためだけでなくて周りの人や会社のための時間ともいえて、
その一方、わたしは自分と親しい人のために使う時間のことを思い浮かべていて、それ以外の人に使う時間のことは考えていませんでした。
どっちがいいとか悪いとかはなくて、ここから読み取れることは、
人やチームによって、何が価値のある時間かなんて様々だということ。
例えるなら、
「無駄な会議を減らして、その時間を有意義に使うこと」
「会議の時間は減らさず、内容の濃い話に時間を使うこと」
同じ「会議の時間」をとっても、何がその人やチームにとっての「生きた時間」かはそれぞれなのです。
つまり、生きた時間とは、TimeCrowdが定義するべきものではなくて、
お客様自身の価値観を通してでないと明確な答えはでないもの、という定義をしました。
そして、最後に「生きた時間を増やしたい」という思いを言葉にして、
タイムクラウド株式会社の企業理念はFIXしました。
TimeCrowdはチームで時間を共有することに特化しています。
チームで共有した人々の時間は可視化でき、可視化出来れば議論が出来ます。
そして、その議論はチームや人の「生きた時間」として使われる。
私たちはその循環が当たり前に社会に根づいていくことを目指しています。
1秒たりとも無駄のなかった企業理念の作成時間
この5行を生み出すために、約3ヶ月かかりました。
案としては、ざっと50案くらいは軽く出していると思います。(資料を見返すのも億劫になるくらい文字でびっしりでした)
いろいろな方向性を定めては、生み出し、破壊して…遠回りもたくさんしました。
TimeCrowdは、ただの「時間管理ツール」でもなく、「業務の効率化!」「パフォーマンスを最大に!」のようなことを謳うサービスではありません。
私たちの思いはまさに企業理念の、「生きた時間を増やすこと」。
時間を見直し、議論し、改善をしたら、チームやお客様自身がその時間に価値を見出し、有意義に使ってほしいと思っています。
そして、私自身、この企業理念作成に使った時間はまさに「生きた時間」そのものです。
TimeCrowdの思い、目指すもの、西小倉さんの考えていること…様々な角度で知ることが出来ました。
今後に仕事に活きることはもちろん、人生においての学びも多い時間だったと感じています。