樹木の枝葉の間から差し込む光、ほおをなでるそよ風、遠くから聞こえてくる川のせせらぎ……。森林の中にいると癒されますよね。また、仕事で行き詰まったときに、公園のベンチに座り青空を見上げてボーッとしていたら、リフレッシュできたという経験はないでしょうか。
こうした感覚には、自然とつながっていたいという人間の本能的な欲求「バイオフィリア」が関係しています。
そして近年、バイオフィリアを意識した「バイオフィリックデザイン」を、オフィス環境に取り入れる企業が増えているそうです。
そこで、バイオフィリックデザインが、働く人に与える影響について調べてみました。
人間と自然をつなげるバイオフィリックデザイン
バイオフィリアとは、「バイオ=生命・生き物・自然」と「フィリア=愛好・趣味」の造語で、人間は自然とのつながりを求める本能的な欲求があるという概念。つまり、人間は自然と触れ合うことで幸せを感じるのです。
ポジティブな人たちが集まる場では、コミュニケーションが活性化され、人間関係も良好。発言しやすい雰囲気によって、新しいアイデアが生まれやすくなります。もしかしたら、生産性向上のカギは業務の効率化よりも、フラットな人間関係を築くことにあるのかもしれません。
こうした好循環に着目した企業が、自然とのつながりをもたらす要素を取り入れたバイオフィリックデザインをオフィス環境に取り入れているのです。
幸福度、生産性、創造性がアップする
自然を感じるオフィス環境が、働く人に良い影響を与えることを示す調査結果があります。
タイルカーペットを販売しているインターフェイスが運営するThe Human Spaceが、16カ国のオフィスワーカー7,600人を対象に調査したところ、植物や日光といった自然の要素のある環境で働く人のほうが、そうでない人に比べて幸福度(Well-being)が15%、生産性が6%、創造性が15%高いという結果となりました。
窓からの眺望がないことはストレスレベルを上昇させ、窓から見える緑や水辺の眺めはストレスレベルを減少させることも分かりました。また、幸福度を高める色は緑、青、茶色といった自然を感じやすい色で、グレーはストレスレベルを悪化させます。
The Human Spaceによると、オフィスにバイオフィリックデザインを取り入れる際に欠かせない要素は自然光、植物、そして水。室内にいながら自然とのつながりを感じるためには、陽の光が差し込む窓の設置、観葉植物や石などの活用、流れる水などの水景設備の導入が効果的だそう。
オフィス×アウトドア。解放感は働く人をどう変える?
最近では、自然を直に感じることができる進化型オフィスが話題となっています。緑がいっぱいのフィールドに、同僚と一緒にテントを張ってつくる「キャンピングオフィス」です。
このオフィスを推進しているのは、アウトドアブランドとコンサルティング会社が共同で設立した、スノーピークビジネスソリューションズ。
実際にキャンピングオフィスを体験した人たちの感想はというと、
- 自然の中で行う会議は行き交う人々や風や音、匂いを五感で感じながら、それがヒントになって自然と会話が弾み、どんどん意見が出てくる。
- オフィスにいると完璧であろうとして緊張するけど、自然の中にいると、みんなでいい議論ができればいいという感覚になる。
- ちょっと考え事で目線を別のところへやったとき、そこにあるものが少し変化していることで、意外なインスピレーションを得ることができる。
キャンピングオフィスを利用すると、いつもの仕事や毎日顔を合わせている同僚と新鮮な感覚で向き合え、ワクワクしながら仕事ができそうです。
自然を感じるオフィス環境によって、働く人の心身が健康になる効果も期待できるので、バイオフィリックデザインの導入は「働き方改革」で目指す課題の解決にもつながるのではないでしょうか。
参考
The Global Impact of Biophilic Design in the Workplace-世界の職場におけるバイオフィリックデザインの効果-.HUMAN SPACE,2015.
『CAMPING OFFICE Catalog』、株式会社スノーピークビジネスソリューションズ.